高断熱住宅の断熱性能や省エネ性能を考えた時、いろいろな指標がどう性能に影響するのか分かりづらいと思います。
その断熱性能の指標となるのがQ値(熱損失係数)で、数値が小さいほど断熱性能が高くなります。
しかし、大事なのは暖かさの指標である『暖房負荷』で、その内容は日射取得、Q値(断熱)、C値(気密)です。
この3つを理解することで、コストを抑えた冬に暖かい住宅をつくることができます。また、この3つの順番は取り組むべき優先順位を表しています。
それでは、そこそこの精度で断熱性能や省エネ性能を把握する方法についてご紹介します。
暖かさは暖房負荷で考えよう!
最低基準である次世代省エネ基準での『暖房負荷』は107と80kWh/㎡年になっています(Q値2.7、U値0.87)。しかし、省エネ基準の暖房負荷は小さいことが分かって庵、実際と計算の値は1.25倍程度になっているので注意が必要です。
5地域 | 6地域 | |
次世代省エネ基準の暖房負荷(kWh/㎡年) | 107 | 80 |
燃費ナビの暖房負荷(kWh/㎡年) | 131 | 102 |
実際に計算してみると80 kWh/㎡年の暖房負荷を達成する断熱性能Q値は2.12 W/㎡Kになります。
ちなみにHEAT-G1(冬の最低の体感温度は 10 度を下回らない程度)のQ値は1.9 W/㎡Kになるので、実際の暖房負荷を達成しようとするとHEAT-G1レベルもしくはZEH程度の断熱性能が求められることが分かります。
5地域 | 6地域 | |
暖房負荷80 kWh/㎡年(東京・大阪の次世代省エネ基準)を達成するQ値 | 1.65 | 2.12 |
暖房負荷60 kWh/㎡年(約8割が満足)を達成するQ値 | 1.24 | 1.59 |
HEAT-G1(冬の最低の体感温度は 10 度を下回らない程度) | 1.9 | 1.9 |
それではこのQ値2.0 W/㎡K前後の断熱性能はどのぐらいなのか見てみましょう。
Q値2.0 W/㎡K前後の断熱性能
U値算出で使用したソフトは、開口部WindEye(アルミ樹脂Low-Eペアアルゴン)、外皮U値計算(部位の熱貫流率(U値)計算シート:木造軸組構法用 Ver2.20)です。
室温を20℃に維持する場合の熱損失量の計算表
Q値2.0W/㎡では総熱損失は4800Wで、室温20℃を24時間家全体で維持した場合の熱損失は、電気ストーブ8台分(600W)です。言い換えれば1時間に4800Wの熱量を投入し続けないと20℃に保つことはできません。
電気ストーブでこの熱量を得るのに掛かる電気代は、電気料金を28円/kWh×4.8kW=135円が必要となります。
このようにそれぞれの部位のU値と面積、外気との温度差が分かれば熱損失が分かり、およそ電気ストーブ何台分と考えることで感覚的に捉えることができるのではないでしょうか。
冬場の日射の影響について、別の機会で書きたいと思います。
冷暖房機器の技術革新が先か、住宅性能UPが先か?
高断熱高気密化して住宅の消費エネルギーを少なくしつつ、快適な住宅で生活するというのが近年の省エネ住宅の流れです。そして、ライフサイクルコストを考えた場合には、住宅に暮らす期間を想定して、断熱UPの工事費+冷暖房費等のトータルコストを比べてコストメリットがあるかどうかを考えることになっています。
簡単なモデルでは、10年以上住むのであればG1(Q値1.9)、約30年以上であればG2(Q値1.6)が最安値になるとの検証結果があります。
さらに、将来の電気料金の値上げも免れないことから、省エネ住宅の普及が推進されています。
一方で、上記で示したように最低基準の省エネ性能でも4800Wの熱量を投入し続けることで快適な住宅を維持していくことも可能という見方もできます。
もちろん二酸化炭素の削減など地球温暖化対策が喫緊の課題であることは承知です。しかし、冷暖房の効率化や消費エネルギー化、さらには蓄電池の高性能化など、将来技術革新が起こることは人類の発展の歴史を考えれば確実に生じます。
ここで言いたいことは、住宅断熱性能アップのスピードと機器の技術革新は全く異なり、後者の方が圧倒的なスピードで進化していくことです。
その場合、上記のような前提条件が大きく崩れる可能性があることに注意して、トータルコストとのバランスを考えるべきではないでしょうか。
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