平成28年省エネ基準が最低基準

住まいの環境

前回ブログで説明した長期優良住宅の認定基準には、劣化対策、耐震性、維持管理・更新の容易性、可変性、バリアフリー性、省エネルギー性、居住環境、住戸面積、維持保全計画の9項目があります。

このうち省エネルギー性は、平成11年省エネ基準相当(断熱等性能等級4)の性能が求められています。つまり外皮性能のみの評価基準で良いことになっています。

しかし、現行基準の住宅の省エネルギー性の評価(平成28年省エネ基準)については、下記の基準が用いられています(よって一次エネルギー消費量等級は長期優良住宅の認定申請には使えません)。

1.住宅の窓や外壁などの外皮性能を評価する基準

 

外皮平均熱貫流率(UA値)の基準値[W/m2K]

冷房期の平均日射熱取得率(ηAC値)

2. 設備機器等の一次エネルギー消費量を評価する基準

一次エネルギー消費量(①外皮性能、②設備性能、③創エネ性能

ここでは、 将来の厳しい基準の導入が考えられるので、その「最低基準」となるであろう平成28年省エネ基準で考えてみたいと思います。

平成28年省エネ基準が最低基準

外皮性能とは

建築物エネルギー消費性能基準(省エネ基準)で住宅の指標のひとつが「外皮性能」です。

この「外皮性能」は、UA値(外皮平均熱貫流率)とηA値(平均日射熱取得率)で評価します。

断熱性能を示すUA値は数値が小さいほど断熱性が高く、日射熱の取得するかを表すηA値は、値が大きいほど日射熱を取り込みます。

これらの基準値が「省エネルギー基準地域区分」に応じて定められており、1~4地域は寒冷地、8地域は蒸暑地、5~7地域はその他の地域となっています。

省エネルギー基準地域区分
図:IBEC住宅省エネ機構「住宅の省エネルギー基準」より

どのような要素で変化するのか

UA値は「外皮熱損失量(建物が失う熱の総量)」を、ηA値は「日射熱取得率」をそれぞれ建物の「外皮の部位の面積」で除して算出します。

「外皮の部位の面積」とは、外壁や開口部、床、天井、屋根で、これらの部位の表面積を合算して求めます。

UA値、ηA値
図:IBEC住宅省エネ機構「住宅の省エネルギー基準」より

ポイントは、屋根断熱の建物なら屋根の表面積を、天井断熱なら小屋裏に接する天井の面積を計算するので、つまり断熱層との「境界をどこに設けるか」で、UA値やηA値は変化します。

「外皮熱損失量」は外皮面積と熱貫流率(高ければ熱を失いやすい)、温度差係数から求めます。

この「温度差係数」は、外皮面が接する空間の状態に応じて定まっている係数で、外気に直に接している場合を1.0として、外気温の影響を受けにくいほど値が小さくなります。

ηA値は外皮の部位ごとに面積と「日射熱取得率」、「方位係数」などから、暖房期と冷房期で個別に値を算出します。

「日射熱取得率」は、窓以外は熱貫流率に一律で0.034を乗じます。窓の計算はガラスの種類と枚数、障子や外付けブラインドの有無、庇の有無、日除けの位置や出寸法といった要素それぞれを求めます。

「方位係数」は、壁面の東西南北方向に8分割して省エネルギー基準地域区分ごとに値が決まっています。冷房期は南側より西側の数値が大きく、窓の西日対策の重要性がここから分かります。

長期優良住宅のU値0.87をクリアする仕様は天井・外壁・床の断熱材がグラスウール10K100㎜厚、窓がペアガラス+断熱アルミサッシです(換気第3種)。

もっと性能を上げるには、断熱材を高性能グラスウール16K厚さが天井200㎜・外壁100㎜・床100㎜とし、窓をペアガラス+断熱アルミサッシUA値0.64になります。

ちなみに開口部の占める割合は、UA値0.87(Q値2.7)で屋根・壁・床は0.79、開口部1.49、換気0.4で、建物の断熱性能は窓の性能で決まると言えます。

設備の選び方が一次エネルギー消費量にどう影響するか

一次エネルギー消費量は、住宅で採用する設備の想定エネルギー消費量を表しています。

床面積や省エネルギー基準地域区分などに応じて基準値を設けており、設計値が基準値以下になれば省エネ基準を達成したことになります。

基準値と設計値は、「暖房」「冷房」「換気」「給湯」「照明」のそれぞれの一次エネルギー消費量を足し合わせた数値に、家電や調理などに供する「その他」の設備の一次エネルギー消費量を加えて求めます。

基準値と設計値
図:住宅省エネルギー技術講習テキストより

この省エネ基準では、住宅の評価方法に3つのルートがあります。

1.詳細計算ルート

建物の部位ごとに面積を算出して外皮性能を求める。

外皮性能を求めたうえで、一次エネルギー消費量を計算

2.簡易計算ルート

部位ごとの面積を算出せずに外皮性能を求める。

3.仕様ルート

外皮性能も一次エネルギー消費量も、仕様基準との合致を確認すればよい。

実際の計算は、専用の算定プログラム(国立研究開発法人建築研究所)を用います。

平成28年省エネ基準は、全室・全日暖房を前提に考えられていません。このレベルで全室・全日暖房を行うとあたり前ですが暖房エネルギー消費量はかなり多くなります。全室暖房のエネルギー消費量は間欠暖房のほぼ倍になっているので、より断熱性能を高める必要があります。

平成28年省エネ基準での断熱材の組み合わせは、天井・外壁・床の断熱材がグラスウール10K100㎜厚、窓がペアガラス+断熱アルミサッシで、UA値で0.77前後となります(換気第3種)。暖房エネルギー消費量は、20%から30%減ぐらいになります。

断熱性能を向上させ、暖房エネルギー消費量を削減するためには、「熱交換機の使用」「開口部の強化」「断熱部の強化」を組み合わせることです。

まずは第3種換気システムから第1種換気の熱交換換気システムに変更することで、大幅に熱損失を少なくすることができます。また、断熱性能を強化することでも暖房消費エネルギーを減らせます。

開口部は、南面窓を大きくし、日射透過率がよいガラスで日射取得量を大きくし、室内側に断熱スクリーンを設けて、夜や曇りの時に使用して熱損失を少なくします。夏はすだれや外付けブラインドなどで日射遮蔽を工夫します。

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