滝つぼに飛び込むのは危険。滝つぼの危険な構造を知ろう。

事故など

昨日、栃木県矢板市の観光スポットとして有名な「おしらじの滝」で滝つぼに飛び込んだ男性2人が溺れ、死亡しました。

この滝つぼの深さは約2メートルで、立ち入りが禁止されていました。

一緒に来ていた知人の話によると「2人は水面から30センチほどの高さから飛び込み、滝つぼから上がってこなかった」とのこと。

また、5日前にも大分県玖珠町山浦を流れる玖珠川の「三日月の滝」の滝つぼで泳いでいた男性の、行方が分からなくなり、その後死亡が確認されました。

この滝つぼは最も深いところで10メートル以上の水深があり、一緒にいた知人が気付くと、浮いたり沈んだりしながら姿が見えなくなったということです。

このような事故が起こるのは、滝つぼが危険な場所であることを知らいない原因もあります。滝つぼの危険な構造を確認しましょう。

滝つぼに飛び込むのは危険。滝つぼの危険な構造を知ろう。

滝つぼの危険な構造
図:ふわく山の会「滝つぼの構造」より

滝つぼには、水面から川底に垂直に流れと、川底から水面に向かう流れがあり、この2つの流れが対流します。

そのため、対流に巻き込まれると水面に浮上して、また川底に引っ張られるというこの繰り返しになり脱出が困難になります。

水難事故現場で「浮いたり沈んだりしながら姿が見えなくなった」というのは、この対流に巻き込まれているからです。

特に川底の対流は危険で、水難者が川底で発見されるのは大抵この対流に巻き込まれて水面には上がってこないためです。

この動画でも、対流につかまり抜け出せない状況が確認できます。

人工物(えん提)でも同じ現象が起きる

リサーキュレーション
図:河川財団「NO MORE水難事故2020」より

滝つぼのような対流(リサーキュレーション)が起こる「えん堤」は、死亡事故に繋がる可能性が高い場所です。統計上も事故のうち3割が河川工作物付近で起こっています。

えん堤には、水深が浅くても強烈な逆流(バックウォッシュ)があります。このバックウォッシュに捕捉されると、下流に流れることなく、延々とその場で水にまかれ続ける上、救助も困難となります。

ホワイトウォーター(白泡帯)では浮くことはできない

ホワイトウォーター
写真:日本リバーサップ協会「ホワイトウォーター」より

滝つぼや人工物(えん提)では、空気を多く含んで泡立った「ホワイトウォーター」が発生します。

ホワイトウォーターには空気が40~60%含まれており、高浮力のライフジャケットを着用していなければ、流れの力で水中深くに引き込まれ、浮上することはできません。

川の遊泳中の溺死はこのようにして起こっています。

下向きの力は川の流れでも生じる

左図のような場所では、エディ(反転流)が生じ、本流の流れの境界線(エディーライン)では、下向きに引っ張られる流れが発生します。

エディ(反転流)
図:河川財団「NO MORE水難事故2020」より

もともと海と違って浮力が足りない川の中で、流された場合、自分の思い通りに体を動かせません。泳ぎの得意不得意は関係ないです。

やはり事前にライフジャケットなどにより浮力を補助しておくことで脱出や救出を助けることができます。

川の流れだけでなく、急な深みが最も危険

このように川には流れが危険と考えられるかもしれませんが、実は急な深みにハマって呼吸できなくなるケースが意外と多いことが知られています。

川は海に比べて、浅いところと急に深くなっているところが極端に分かれます。特に大きな河川では、大雨によって、上流から一段下がった下流に水が流れ落ちると、流れ落ちたところで水底が深く掘られる「洗掘」という現象があります。それによって、予想できない急な深さになっている所があります。

例えば、2014年6月木曽川で小学生中学生3人が溺死したケースでは、3人の子供が川にウエイディング(水底歩き)をしていて次々に深みハマりました。これは後追い沈水と言われて、見た目には危険性がないように見えるので、目の前で深みにはまって一瞬で姿を消した友達を見て、続いてその場に行ってしまうことで起こります。「溺れた人を助けに行くと一緒に溺れる」という原理原則を必ず理解してください。

このような場合は、国の小中学校で「ういてまて」教室を実施しているので、「ういてまて」と声がけし、119番通報をしつつ、浮くものを渡すことが必要です。

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