溺れる子供を助けようとして親が溺れるのはなぜか。

事故など

先日にも、溺れる子供を助けようと飛び込んだ親や大人が亡くなり、子供だけが助かるという水難事故が発生しています。

子供は学校で浮いて救助を待つ方法を習っていますが、親や大人はそのことを知りません。

ここでは、親子ともに生還するためにどうすればいいのか、考えましょう。

溺れる子供を助けようとして親が溺れるのはなぜか。

水難事故でよくあるのが、川で遊んでいた子供が下流に流され、それを助けようとして溺れる、海岸近くで遊んでいた子供が波に流され、それを助けようとして溺れる、岸から少し離れた所の海で泳いでいて、離岸流に流され、助けようとして溺れるケースなどがあります。

被災者状況
図:(公財)河川財団「NO MORE水難事故2018」

上記グラフから、2次災害発生時の川の水難事故の死者数は、1次災害が36.2%に対し、2次災害は73%です。助けに行った人の死亡率は10人中7人が亡くなっているという悲惨な結果が分かります。

さらに、子供が助かって親が溺れる事故が年間5件から10件報告されています。なぜ、子供は助かり、親は溺れるのか、その原因について、確認しましょう。

浮いて救助を待つことを知らない

流れの穏やかな川、波の小さい砂浜海岸などで発生した水難事故では、最初に子供が水に落ちたり、流されたりして、それを発見した親が飛び込んで溺れるケースが多くあります。

子供が溺れれば、親は焦ります。とにかく「助けなくては」と思ってしまいます。

ちなみに、海水の比重は約1.02に対し真水の比重は1のため、海水よりも真水の方が浮きにくいのです。そして、人の比重は0.98なので、肺に空気をためた状態で川では2%の浮力しかありません。

つまり、体の全体の2%だけ水面に出て、98%の体は水中になります。

両手を水面に出した場合

例えば、両手を水面に出した場合、手が水面に出ますが、顔は水中に完全に沈みます。そして、声を出したりして肺の空気を出してしまうと、比重は1.03程度となり、身体が水中にて沈んでいきます。

溺れたら、呼吸を確保することに全力を尽くします。水面に出すのは鼻と口です。空気は呼吸時以外は肺にためておくことが大切です。その方法として背浮きが最も効果的です。

子供が安定した背浮きができているなら、「浮いて待て」と声を掛けつつ、119番通報するなど、救助隊を現場に呼ぶことが必要です。

万が一、飛び込んでしまったら「助けないといけない」とは考えず、「子供のそばに寄り添う」と考えて浮いて救助を待つようにしてください。

助ける途中で力尽きる

海や川での水難事故では、浮き輪やゴムボートに乗った子供が沖に流され、それを助けようとして力尽きるケースが挙げられます。

海上では先ほどまで穏やかだった風向きが急変して流されたり、離岸流によってあっという間に沖まで流されてしまします。

離岸流であれば子供と一緒に流されれば、少し頑張って泳げば、子供のそばに寄ることができます。しかし、風に流されている場合は、子供や浮き具が帆の役割となるため、その分だけ流される速さが増します。このような場合は、泳いで近づこうとしても、追いつくことができません。

また、川で危険なのは、足首くらいの水位でも流れがあれば体ごともっていかれてしまう事もあります。川の流れは早さが2倍になれば、その速度に対し2乗の力が掛ります(動水圧)。

動水圧
図:(公財)河川財団「NO MORE水難事故2020」

また、大人が歩く程度の流速であっても、流れの中の障害物にひっかかると、強い動水圧をうけ、1人の力では対応できなくなります。このような事故は浅瀬でも起こります。

このように子供が流されたら、秒速2 mでみるみる遠ざかります。ためらわず118番海上保安庁、119番消防に通報して、早く救助隊を呼ぶことが重要です。

子供を陸へ持ち上げることも引っ張り上げることもできない

水面と陸上との高低さがある場所では、子供も親も自力で上がることができません。ロープがあっても這い上がれません。

また、陸上にいる人たちは、何とか子供を救助しようと手を差し伸べてくれます。親が潜水して、子供を持ち上げ、陸にいる人にわが子を託して、親が亡くなるケースがあります。

水面と陸上の高低差で這い上がれるのは、せいぜい10 cmです。それ以上の高さがあったら、親子して浮いて救助を待っていてください。

陸の上の人は早く緊急通報して、救助隊を呼んでください。「すぐ目の前で浮いているだけで、119番通報はちょっと」とためらってはいけません。

溺れている人を見たら飛び込むのはNG

助けに行った人の7割が亡くなっている現実を考えれば、ライフジャケットを装着した川遊びと救助法を知っておくべきです。

救助法としてもまず飛び込んだりしません。下図のようにまず水上からのアプローチを実施し、自分の命を守りつつ救助する方法をとります。

自分の命を守りつつ救助する方法
図:(公財)河川財団「NO MORE水難事故2020」

川遊びに行かれる前に、(公財)河川財団の水辺の安全ハンドブックをご確認のうえお出かけください。川遊びの基本となることがわかりやすく記載されています。

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