2020年10月東京都調布市で道路陥没が発生しました。原因については調査中と現時点ではなっていますが、この事故の原因とされているのが、高速道路「東京外かく環状道路を造るための地下工区(東京都世田谷区から練馬区までの16㎞)の掘削工事です。
事故前、陥没現場の地下を巨大トンネル掘削機「シールドマシン」が掘り進めていました。この上の住宅地では、振動や騒音、外壁の亀裂、玄関ドアの不具合などの被害が続出していました。
このような都市部で頻発している道路陥没は、老朽化した埋設管が原因になっていることが多くあります。
特に下水道管の老朽化に起因する道路陥没事故は年間3000件超発生しています。
東京では、1980年代に道路陥没が相次いで起こり、それが路面下空洞調査の実施のきっかけとなりました。
東京都の2001~09年度の空洞調査(内山・大石〈2012〉:「4.路面下空洞の開削状況調査結果、東京都土木技術支援・人材育成センター平成24年度年報」による)で確認された1018件の空洞の発生要因の多くは、下水道および雨水取り付け管などの破損が要因となった空洞でした。
このような埋設管が原因であった過去事例を確認してみましょう。
足元に突然穴が開く。道路陥没はどうして起こるのか。
埋設管が原因の道路没落
まず、埋設管が原因の道路没落はどうして起こるか確認してみましょう。
まず管の継ぎ手や取り付け管の老朽化や接合不良により、浸入水が発生すると同時に、周辺地盤材料が管内に吸い込まれます。
それが大きくなると周辺地盤が支持力を失い、管断面が変形し、破損発生して空洞が拡大していくという陥没発生メカニズムがあります。
日本には合計46万キロ、地球11周以上の長さの下水道管が埋まっています。
老朽化などによって、穴が開き周囲の土砂が吸い込まれて空洞ができ、そこに車両などの重みなど、何らかの衝撃が加わると管が破損し陥没事故につながります。
このような老朽化した下水道管は全国に約10万カ所以上あると言われています。さらに下水管は敷設から50年程度で更新する必要があり今後もこのような下水管が増加する傾向にあります。
一方で、道路の地下工事との関係も多く指摘されています。
工事による道路陥没
記憶に新しいのが2016年11月JR博多駅前で大規模な道路陥没事故の発生です。
現場は新設予定の駅の近くで、地下トンネルの口径を広げる作業中でした。地下にはガス管、上下水道管などが埋まっており、穴の大きさは、長さ約30メートル、幅約27メートル、深さ約15メートルの巨大なものでした。
このような道路の陥没が起きると、地下に埋設されている水道やガスなどのライフラインが寸断され、日常生活に甚大な影響を与えます。
陥没事故の原因究明については,国立研究開発法人土木研究所に「福岡市地下鉄七隈線延伸工事現場における道路陥没に関する検討委員会」が設置され,本委員会において検討が行われ結果の報告がされています。
事故の要因としては、自然的要因もしくは人為的要因があり、そのいずれかであるという曖昧な結論となっています。
ちなみに現場周辺の民間事業者などに対する施工者の損害賠償額が10億円を超えており、大成建設が代表の共同企業体(JV)が全額負担することになりました。
仮に道路に空いていた穴で怪我をした場合は、道路のある市区町村の、土木事務所へご連絡して下さい。