私たちが住む平野の大部分は、洪水時の水と土砂の氾濫の繰り返しによって形成されてきました。
その地形は今後起こる洪水・氾濫の姿を決めています。その平野は扇状地、氾濫平野、三角州、谷底平野、海岸平野などに分類されます。
これら各平野の地形が浸水被害にどのように関わっているかを考えます。
見えない旧河道を調べよう。浸水リスクを避けるために。
河川は山地から多量の土砂を運ぶため、平野内では河川の底は高くなります。
このような河川の平野では堤防が築かれていますが、堤防が決壊や氾濫した場合は、平野内に広く流入して凹状地があればそこに滞留します。
一方で、上流山地内の盆地に土砂が堆積して、河床が低い位置にある河川平野では、堤防が造られていないこともあって、河道周辺に浸水被害が広がります。
大きく別けてこのような2つのケースによって浸水被害が生じます。
平野部で氾濫する可能性のある場所
平野は、自然堤防・旧河道・後背低地から構成されており、相対的に高い自然堤防は浸水を免れたり、あるいは床下浸水で済んだりするので、昔からの集落は主としてここに立地しています。
しかし、この平野部では、良好な宅地に既存の住人が多くを占め,後からの人達は旧河道や後背湿地のようなやや不利な土地に住むようになっています。
このような宅地開発や工場・道路などの開発によって、旧河道や後背湿地の場所が非常に分かり難くなっています。
以前のブログでは、鬼怒川の氾濫で、この旧河道や後背湿地に被害が広がったことを書きました。
このように旧河道や後背湿地には低地が多く、豪雨時の浸水被害を受けやすい特徴があります。
特に、地球温暖化により海面の上昇が生じてきた場合,沖積平野の中でも低地である旧河道はより危険です。この旧河道について詳しく見て行きましょう。
旧河道を調べる。
旧河道とは、昔河川だった場所で、そのため泥土が堆積しており、周囲の土地よりも低い帯状の地形で湿地になっていることが多く、排水も悪いので洪水や地震に対しては弱いので住宅地には適していません。
特に自然の地形に逆らったようにして河道が付替えられている河川では、氾濫が生ずると自然状態での昔の流れを再現して、平野面に浸水域が広がります。
この旧河道を調べるために、国土地理院の「治水地形分類図」を見てみましょう。
この「治水地形分類図」の上図の青い部分を拡大し、東京多摩川沿いを見てみると。
このように色分けされており、旧河道の凡例は青横棒です。
一般に旧河道は砂の層でできている場合が多く、地震時に液状化が起こりやすいと言われています。
また、河川と接している部分では、洪水時に堤防にまで水がしみ出して堤防が切れる可能性が高くなると言われているため注意が必要です。
氾濫平野と後背湿地
凡例の中にある「氾濫平野と後背湿地」についても確認しましょう。
平野の多くは、何度も洪水が繰り返され、そのたびに土砂が運ばれて、堆積して、現在の平らな土地ができています。このように、洪水時に川の水があふれてできた平坦な土地を「氾濫平野」といいます。
かつて「氾濫平野」は、主に農地として利用されてきましたが、今では市街地となっているところも少なくありません。このような場所では、豪雨時の洪水による住宅の冠水が心配されます。
一方、氾濫した河川の周りには土砂がたまり自然堤防をつくりますが、その先には細かな粒の泥水が広がります。これが洪水のたびに繰り返されると、水がたまりやすく乾きにくい土地が「後背湿地」と言います。
「後背湿地」に住宅や工場が建てられていることが多く、このような土地が地盤が悪く、大雨による浸水や地震による建物の倒壊などの大きな被害を受ける可能性があります。
以上から、自分たちの住む場所が浸水被害にどのように関わっているのかが分かります。特に「旧河道」「氾濫平野」「後背湿地」を国土地理院の「治水地形分類図」から判断しましょう。