夏の異常気象に備える

水害ハザードマップ

短時間で局地的に雨が降る回数が年々増加しています。

局地的に雨が降る回数
https://www.data.jma.go.jp/cpdinfo/extreme/extreme_p.html

青色の線(過去5年平均の推移)では右肩上がりで増加していることが分かります。さらに1日に200mm以上の災害級の大雨も増えています。結果として災害が激甚化、多発化する傾向にあります。

また台風も過去は、北に上ると海面水温の影響で勢力が弱まるケースが多かったですが、海面水温が高くなっているため強い状態で上陸する傾向が多く見られるようになっています。台風の数よりもより強いものが集中的に起こる可能性が高くなってきています。

過去の主な災害例

こうした背景もあり毎年のように大きな水害に見舞われています。

2021年7月 熱海土石流28人死亡・行方不明
2020年7月 熊本豪雨79人死亡(関連死含む)
2019年10月 台風19号豪雨121人死亡・3人行方不明
2018年7月 西日本豪雨260人以上死亡 住宅被害5万棟超
2017年7月 九州北部豪雨40人死亡(関連死含む)
2016年8月 台風10号岩手豪雨27人死亡・1人行方不明
2015年9月 関東・東北豪雨8人死亡・鬼怒川・渋井川決壊
2014年8月 広島市土砂災害77人死亡

日本全体で見れば、治水対策が進み浸水エリアは減ってきているものの、被害は減っていません。もともと氾濫低地と呼ばれるエリアに人口の51%が住み、社会資本の75%が集積しています。より集中的に住んでいる場所で災害が起きやすく、さらに想定外の災害になる傾向があります。例えば熊本豪雨では地上7mの高さまで浸水し、場所によってはそれ以上の想定外の浸水高さになっています。他にも2021年8月の長野県岡谷市土石流では、2階へ垂直避難した結果、2階が土石流に流されて親子3人が亡くなる結果となっています。従来の防災対策や行動が必ずしも安全であるとは限りません。実際の被害想定は場所や地形によって異なるはずです。

線状降水帯のメカニズム

2018年7月西日本豪雨では、広島県では151人が亡くなり、行方不明5人、岡山県では95人が亡くなり、行方不明3人となる大災害となりました。

大災害となった局地的な豪雨をもたらす「線状降水帯」のメカニズムは、暖かく湿った空気が継続的に流れ込むことで、積乱雲が次々と発生し、数時間に渡って大雨をもたらすことが分かっていますが、その詳しいメカニズムは現在でも解明されていません。

出典:国立研究開発法人 海洋研究開発機構 線状降水帯の停滞が豪雨災害を引き起こす

名古屋大学坪木教授らは、線状降水帯の要因ともされる水蒸気のかたまりの「大気の川」を空から観測(ドロップゾンテ)し、大気の川では、大量の水蒸気が毎秒20mもの風で運ばれ非常に速い速度で変化していることが判明しました。このように予測することができるようになれば避難を適切にすることができると考えられています。

ダムの緊急放流で浸水

ダムの重要な役割は、洪水から住民を守る「治水」です。ダムは豪雨に備えて事前に備えて水位を下げるために雨水を貯められる状態になっています。しかし2018年7月西日本豪雨では、降り始めから2日あまりで降水量は400ミリ超え、野村ダムでは7月7日午前6時20分にほぼ満水となってしまいました。そしてダムの損壊を防ぐために緊急放流(異常洪水時防災操作)が行われました。その結果、ダムからの放流量が6倍になり、急激な水位上昇で肱川が氾濫しました。

緊急放流(異常洪水時防災操作)
朝日新聞デジタル: ダム緊急放流、決断の背景に迫る 河川氾濫で犠牲者多数

ダムの管理事務所は、当時緊急放流を実施するサイレンを数回鳴らしていましたが、川の水位がどれだけ上がるのか、そもそも緊急放流が何なのかが住民には伝わっていませんでした。多くの住民が川の水位を見て、避難するには十分な余裕があると考えていました。

京都大学今本名誉教授は、野村ダムの操作規則が1982年当初は流入量に応じて放出量を毎秒500t〜1000tまで増加させることで、中小洪水での被害軽減を図ったものの、1996年には毎秒300tずつを一定量に放流することに変更したことが大洪水に繋がっていると指摘しています。

一方で兵庫県川西市の一庫ダムでも緊急放流しており、雨がさらに降り続けば被害が拡大していた恐れがありました。多くの人がダムがあれば浸水しないと考えているかもしれませんが、日頃から避難する備えが必要になっています。

急激に悪化する都市水害

2019年10月川崎市武蔵小杉のタワーマンションの地下にある電気設備が水没し停電、断水が起こりました。このタワーマンションは多摩川から1km離れた場所にあり、堤防が決壊したのではなく、「内水氾濫」と呼ばれる現象で浸水しました。これは激しい雨で下水道などの排水機能が追いつかなくなり川に流れず、行き場をなくした水が逆流して地上に溢れ出る現象です。

さらに「内水氾濫」は、雨があまり降っていない地域でも見られる現象です。例えば東京都多摩川と丸子川に挟まれた地域では、雨もそれほど降っていなかったにも関わらず、水が引かずに増える「湛水型内水氾濫」が起きました。

内水氾濫
google map

これは広域に雨が降ったことによって、本流の水位が上がり、支流の川や下水の水が溢れる現象です。この内水氾濫で、1999年9月福岡県博多駅で地下街にいた従業員が亡くなっています。

そして車の運転で危険なのがアンダーパスです。短時間の大雨で冠水しやすく、深さに気付かずに突っ込んでしまうと身動きがとれなくなります。

アンダーパス
くるまのニュースより

さらに、水位10cm程度でも水圧でドアを開けるのが難しくなり、車から脱出できなくなります。冠水にきづかずに入り、乗っていた人が死亡する事故が多発しています。

長雨蓄積型に注意

1時間80ミリ以上の「猛烈な雨」により、わずかな時間で被害に繋がります。2014年8月広島市土砂災害では、1時間に100ミリ前後の猛烈な雨が、2時間あまりの短時間に集中して降り、土石流が発生しました。

一方で、2018年7月西日本豪雨では、1時間に10ミリ前後、多くても1時間に50ミリ前後の雨量でした。このように自治体や住民も危機感を感じにくい「長期蓄積型」の雨も災害に繋がります。同じく2021年7熱海土石流も、「長期蓄積型」でした。1時間に30ミリ以上の雨が観測されておらず、しかし総雨量389ミリで通常7月分の1.5倍以上に達していました。長雨蓄積型の雨により土壌に水分が溜まったところに、発達した雨雲が次々に流れ込むと大規模な災害に繋がることもあるのです。

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