なぜ、鬼怒川は氾濫したのか。住まい選びに考えるべきこと。

浸水被害

2015年台風第18号と台風から変わった低気圧に向かって南から湿った空気が流れ込んだ影響で、記録的な大雨となりました。

そして、茨城県常総市で鬼怒川の堤防が決壊し、常総市街地を含め約40キロ平方メートルの地域が浸水の被害を受け、少なくとも7名の死者を出す結果となりました。

平成27年9月鬼怒川決壊の概要
図:国土交通省「平成27年9月鬼怒川決壊の概要」より

なぜ、鬼怒川は氾濫したのかを考え、そこから住まいの選び方を知りましょう。

なぜ、鬼怒川は氾濫したのか。住まい選びに考えるべきこと。

明治維新以降、河川をなるべく直線化し、流域の水を海まで短時間で排水するといった方針が推進されました。

鬼怒川も、本来は曲流していた河川を、人工堤防で閉め切ることで直線化しました。

鬼怒川
図:GoogleMap「鬼怒川」

しかし、このことよって、一気に下流に水が集中するという欠点が生まれます。

また、かつての河川(旧河川)を横切って人工堤防が築造されましたが、新しい河川からかつての河川に地下水が流れることで、人工堤防は基部から崩れやすいという弱点も生じます。

地理院地図
図:地理院地図

黄色は自然堤防、薄緑は氾濫平野、その間にあるの青い部分が鬼怒川の旧河道です。+が破堤地点です。過去には旧河道は繋がっていたと考えられます。

地図上で見る限り、旧河道への地下水の流れがあり、旧河道上で破堤しています。

氾濫平野に流れ込んでいるのを、実際の写真で比較しました。

今昔マップon the web
写真:今昔マップon the web

破堤近くの三坂町の集落をみると、周辺より50㎝~1mほど高く水はけのよい自然堤防と呼ばれるところに大半の住宅が位置しています。

この自然堤防は、土砂などが厚く堆積した場所で、さらに水田(氾濫平野)も広がるため、多少の雨量であれば、この地でそれを食い止めることができます。上の写真でも、それが確認できます。

これに対して、破堤地点の南に位置する常総市の市街地は、旧河道や後背湿地にも位置しており、潜在的に洪水で水害となる地域です。

地理院地図2
図:地理院地図
今昔マップon the web2
写真:今昔マップon the web

また、このような地点は、地震の際にも揺れが大きくなり、被害が出やすい特徴があります。

なお、人工堤防によって、河川の水をなるべく早く海に排出しようとする考え方は、今では変更され、「治水緑地」という名の遊水池を設けて、人口密集地域を洪水から守るために、意図的に破堤する場所を決めるようになっています。

今回は、洪水水量がさほど多くなければ、三坂町の水田に水を一時的に冠水したことで、市街地を守れたかもしれません。

しかし、今回は流量があまりに多く、三坂町の水田だけでは対応できませんでした。

このような考え方は、元大阪府知事橋下氏がテレビ番組の中で、「都市化されている下流地域に被害が出ないように、上流部であえて氾濫させる」と言ったことで明かになり、一般の人にも知れ渡りました。

これは「逆に言うと『ここ氾濫させてもいい』という場所に住んでいる人にとってはとんでもないこと」であり、橋本氏は「治水行政の情報開示が必要。緊急放流っていうのがそう」とも続けています。

次回は、これらから住まいを選ぶときに考えなければいけないことを見ていきましょう。

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