2020年4月21日に、内閣府防災担当の「日本海溝・千島海溝沿いの巨大地震モデル検討会」は、北海道から東北地方北部の太平洋側を震源とするマグニチュード9.3の巨大地震の新たな想定を公表しました。
ちなみに、根室沖でM7.8~8.5のプレート間地震の発生確率を70%程度と評価しており、南海トラフ沿いの地震の70~80%と同程度の高い確率になっています。
南海トラフ沿いでは、有史以降にM9クラスの超巨大地震は起きていませんから、千島海溝沿いの方が超巨大地震はより切迫していると考えられます。
北海道では国内最大の巨大地震と津波が発生する
地震の規模は北海道沖の千島海溝で国内最大のマグニチュード9.3、東北沖の日本海溝でM9.1を想定し、それぞれ最大で高さ約30メートルの大津波が東日本の広範囲を襲うと推計しました。
千島海溝沿いの地震については、過去6500年間に超巨大地震が最多で18回発生しており、最新の活動時期は17世紀前半だったことが分かっています。
平均すると発生間隔は約340~380年で、すでに前回から400年程度経過していることから、M8.8程度以上の地震が30年以内に発生する確率を7~40%とする高い発生確率になりました。
地震が起きる仕組みは同じ
千島海溝と日本海溝は、いずれも海側のプレート(岩板)が陸側の下に沈み込む場所です。
この千島海溝のプレート境界で強い固着が起こっており、この固着が解消される際に巨大地震と、東北地方太平洋沖地震クラスの大きな津波が起きる可能性があります。
この境界の蓄積したひずみが限界に達すると、断層が一挙にずれて跳ね上がります。
この時に巨大地震と津波が起きますが、この仕組みは日本海溝で起きた東北地方太平洋沖地震(M9.0)や南海トラフ地震(M9.1)と同じです。
日本海側も津波が起きる
津波というと、太平洋側を思い浮かべる方も多いようですが、日本海側での津波にも警戒が必要です。
実際に、1983年の日本海中部地震では17分後に奥尻島を津波が押し寄せています。
また、1993年に起きた北海道南西沖地震でも津波が発生し、奥尻島では地震後5分に襲来した津波によって死者200人超という大きな被害が発生しています。
この地震の特徴として、寿都(すっつ)町、江差(えさし)町、小樽市、青森県深浦町で震度5が観測されましたが、震源域が奥尻島や渡島半島西岸に近かったため、地震発生後5分で津波が押し寄せ、多くの人が犠牲となりました。
現地調査によると、津波の高さは、奥尻島で最大約30mに、渡島半島の西岸でも最大8mに達しました。
東北地方太平洋沖地震や南海トラフ地震の場合は海溝型で、震源域が海岸からある程度離れているので、地震発生から津波の襲来までに若干の時間があります。
しかし、日本海側で地震が発生すると、震源が海岸から近いので、津波はあっという間にやってきます。
日本海側の海岸にお住まいの方は地震が起きたら、津波の襲来から逃れるために、なりふり構わず高台へ逃げてください。
寒い北海道で地震が起こったら
過去の地震では、北海道などの寒冷地の住宅は耐震性が高く、被害が相対的に少なくなっています。
理由としては、降雪対策のため屋根が軽量で、寒冷仕様で窓が少ないため壁量が多く、凍土対策で基礎が頑丈つくられているからです。
最大震度7だった2018年北海道胆振東部地震でも家屋倒壊はありましたが、倒壊による犠牲者はありませんでした。
しかし、1993年釧路沖地震でも問題となった寒冷地ゆえの課題もあります。
冬季に地震が起き停電すれば水道管が凍結し破断します。吹雪の中や凍結した路面では津波避難に困難が伴います。また暖房が無ければ生活ができません。
2018年北海道胆振東部地震ではブラックアウトによる全道停電が生じました。
全道停電により、新千歳空港が閉鎖、JRが運航停止、信号のない道路の渋滞など、交通網が完全にマヒし、北海道は孤立しました。
役所や災害拠点病院は非常用発電設備で急場をしのぎましたが、道内の工場も軒並み操業停止に追い込まれました。
交通網が途絶すれば農産物や工業製品の輸送もできません。その影響は全国各地に及びました。