まず住む場所はハザードマップで確認しましょう。2020年九州豪雨被害から考えよう。

ハザードマップの見方

近年、立て続けに大きな浸水被害が起こっています。

2020年7月九州豪雨では1万棟超、2019年10月台風19号では関東甲信越中心に7万棟超、2018年7月西日本豪雨では3万棟の住宅が浸水し、どれも死者が50人以上となりました。

特に都市郊外や地方のベットタウンでの浸水被害が目立つようになっています。

例えば、2018年の西日本豪雨で土砂崩れが起こった広島市安芸区は丘陵地に住宅団地が新たに造られたエリアです。

さらに街全体が水没した岡山の真備町は、倉敷市中心部に通う「新住民」のベッドタウンとして人口が増加したエリアでした。

岡山の真備町
写真:日本経済新聞社「平成最大の豪雨災害、被災前後の写真で見る爪痕」より

まず住む場所はハザードマップで確認しましょう。2020年九州豪雨被害から考えよう。

このように被害が増えている背景には、降雨が激しくなっていることに加え、ハザードマップを見れば住宅を建てるべきでない場所に新築住宅が増えていることも挙げられます。

不動産開発会社は、安い土地を求めます。またお客さんは安く住宅を購入したいと思っています。

これらが一致して、過去に洪水があったと聞いたとしても、お客さんは安く買えならと購入してしまいます。

浸水被害を受けた住宅の中にも数年前に建てたばかりのものが多くみられます。ハザードマップや水害の危険性について警告を事前に確認していれば、大きな水害が起こりえると理解できるはずです。

浸水被害の重要事項説明義務なかった

現行の宅建業法において「土砂災害」や「津波の災害警戒区域」については、契約前に重要事項として説明することが義務付けられています。

2020年4月国土交通省は、豪雨による浸水被害が相次いでいることを踏まえ、不動産取引の際に水害リスクに関する説明をするよう業者に義務付ける意向を明らかにしました。

この義務化の対象は「ハザードマップの浸水想定区域」となります。つまり注意する点として、ハザードマップが整備されていない場合は説明の義務はありません。

また、今の地価がこれらのリスクを踏まえた上での地価になっていく可能性があります。

ハザードマップの整備はほんの一部のみ

ハザードマップが整備されているのはほんの一部です。また、ハザードマップを整備するのに必要となる河川氾濫のデータは、全国 109 の一級水系(国の管理)に限られています。

これら全国109の一級水系は「200年に1度の水害に耐えられるか」などの目安で堤防の必要性や規模を決め、20~30年を目標に整備を進めています。

2019年3月末時点で、大きさが計画水準に達していなかったり、堤防自体が設置されていなかったりする区間が約3割となっており、台風19号で決壊や浸水した場所も含まれていました。

また、実際に被害が発生するのは、中小河川です。特にバックウォーター現象などで支流の中小河川が氾濫することが多く、これらは現状では十分に想定されていません。

バックウォーター現象については以下の記事をご覧ください。

2020年九州豪雨の浸水エリアの多くが居住誘導区域だった。

九州豪雨では、24時間降水量が観測史上最大の446.5ミリを記録し、福岡県大牟田市では市街地の広範囲が浸水しました。

冠水した大牟田市内
写真:朝日新聞社「記録的な大雨に見舞われ、冠水した大牟田市内 福岡」より

浸水エリアの多くは、市が立地適正化計画(マスタープラン)で設定した「居住誘導区域」に含まれていました。

居住誘導区域とは、「人口減少の中にあっても一定エリアにおいて人口密度を維持することにより、生活サービスやコミュニティが持続的に確保されるよう、居住を誘導すべき区域」です(国交省Webサイトより引用)。

また、このエリアは市の洪水ハザードマップで浸水が想定されていた区域でもありました。

浸水エリアの比較
左図:国土地理院「国土地理院が発表した大牟田市周辺の浸水推定図」
右図:大牟田市「大牟田市 立地適正化計画」

本来は災害リスクの少ないエリアに指定すべきですが、自治体によっては浸水想定区域内などに指定する場合もあり、防災との両立ができていません。

こうした課題もあり、立地適正化計画を作成・公表した自治体は2020年4月時点で326市町村に止まっています。

居住誘導区域内の住宅地に浸水被害が発生するのは今回が初めてではありません。2019年台風19号では、福島県須賀川市でも同様の事態が発生しています。

福島県須賀川市
写真:毎日新聞「「もっと強く戸をたたけば…」難聴女性に届かなかった避難呼び掛け 台風19号」より

ハザードマップだけでの判断は難しい

九州豪雨の浸水被害の原因として、大牟田市によると三川地区の近くを流れる諏訪川の氾濫は確認されていません。

市によると、1時間に100ミリ近い雨が降り、三川地区の排水ポンプ場が水没し使えなくなったことで街中に溜まった水を川に排出できなくなりました。

水没したポンプの代わりにポンプ車を使って溜まった水を川に出す作業が進められましたが、排水が追い付かずにさらに水位が上がったとのことです。

もちろんこのような内水氾濫はハザードマップでは捉え切れていません。

また、一部の専門家は、今回の大雨が降った時間帯と、有明海の満潮とが重なって川の水位がさらに上がり、排水路などからの水はけが悪くなったことが考えられると指摘しています。

浸水被害は、もはや数十年に一度ではなくなり、毎年のように列島を襲う「記録的な豪雨」から想定外を想定した個々の対策が必要になっています。

とはいえ、まずはハザードマップが基本的な情報源になることには変わりはありません。

これらか住まわれるエリアのハザードマップを確認し、住宅販売業者や自治体の意見も参考にしながら災害リスクを見極めていくことが必要です。

その他の災害リスクについてもこのサイトでまとめていますのでぜひご覧ください。

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