雨が止んだ後に洪水は起こる

ハザードマップの見方

関東甲信越や東北の広範囲を襲った2019年台風19号による堤防の決壊は52河川73か所、水が堤防を乗り越える越水はのべ231河川にのぼり、同時多発的に氾濫が起きる異常な事態となりました。

各地の氾濫はなぜ起こり、これほど被害がなぜ拡大したのかを考えましょう。

雨が止んだ後に洪水は起こる

長野県千曲川の流域圏は広く、面積は栃木県とほぼ同じ大きさで、このエリアに降った雨が支流をたどり、千曲川へと流れ込み、決壊へとつながりました。

その翌日、台風は通り過ぎ、長野市でも晴れ間が広がりました。このとき、千曲川ではすでに水があふれ出していましたが、避難所から自宅に戻った人が複数いたことが分かっています。

これは、自分の近くを流れている川の水位が、ずっと遠くに降った雨だという実感がないことが原因です。もう雨が止んだので、これで洪水が終わったと勘違いする人が多くいます。

雨のピークと水位の上昇に“タイムラグ”があり、このため、川の下流では、雨が弱まった後に水位が上昇することになります。

千曲川で起きたようなことは、各地の川でも起きています。

利根川の水位
図:NHKクローズアップ現代「同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号」

台風が接近してきた12日の昼ごろから、まず上流の水位が上がり始めます。しかし、日付が変わり、台風が通過したあと、中流から下流の水位が高くなり、その状態がしばらく続きました。

このタイムラグは、大きい河川ほど長く、利根川や千曲川・信濃川のような大きい河川では、半日から1時間ほどの時間差が起きます。

越水により堤防は決壊する

千曲川の下流域では高い水位が長時間続くという現象もありました。それが越水、決壊につながり、広域の氾濫を引き起こしました。

5分ごとに画像撮影を行う河川事務所のカメラが、水が堤防を超えて、あふれ出すまでをとらえていました。

堤防決壊の千曲川 河川監視カメラが捉えた増水の様子

この越水が発生すると、堤防を乗り越えた水は滝のように流れ落ち、斜面の土を外側からえぐり取っていきます。ひとたび越水が起こると、いとも簡単に堤防が破壊されます。

この現象により堤防決壊を再現する屋内実験を東京理科大が公開しています。

堤防決壊の公開実験

水が堤防を越えると、外側の斜面が削られていき、30分ほどで決壊しました。越水の危険性が改めて示されています。

越水は大量の水が一時的に滞留する河川のカーブ部分で発生しやすいことが分かっています。

千曲川でもカーブ部分に溜まった水が行き場を失い、越水したとみられます。

写真:NHKクローズアップ現代「同時多発 河川氾濫の衝撃 ~緊急報告・台風19号」より

こうした越水を起こしやすい場所は他にも沢山あり、広く警戒が必要です。

河川の氾濫は予測できつつある

東京大学生産技術研究所芳村教授の“Today’s Earth – Japan”は最大39時間先の河川状況をモニタリングできるシステムです。

このシステムによって台風19号の氾濫決壊地点(129/142か所)の9割を的中させています。

このシステムは、地形の起状、川の場所・幅、堤防の高さ、森林の位置をもとにリスク指標化し、河川の許容流量と流域の雨量を比べて、洪水を予測します。

Today’s Earth – Japan

この図は千曲川の決壊39時間前に予測されていたものです。赤色の部分が決壊する危険性が最も高い部分を示しています(利根川の文字の上が千曲川)。

ちなみに10/12午後4時(千曲川決壊11時間前)に気象庁は大雨特別警報(レベル5)を発表していますが、河川の決壊・氾濫については明言していません。

国土交通省の調査によれば、長野市では4割超の世帯が千曲川が越水後に避難しており、そのため逃げ遅れた人が1700人に達し、ヘリコプター等での救助になりました。

このシステムで予測したアラート約500地点の内、約370地点は決壊・氾濫は起こりませんでした。また、雨量やその進路の予測が難しい「線状降水帯」による洪水予測は難しいとのことです。

このように洪水はある程度予測は可能になってきており、24時間前に天気予報と同じように洪水が分かれば、避難の選択肢が増えることになります。

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