コンクリートブロック塀の倒壊は、地震のたびにその危険性が指摘されてきました。古くは1978年宮城県沖地震では28名がブロック塀などの下敷きとなって命を落としています。
その後、1981年には建築基準法が改正されたものの、2005年の福岡沖地震や2016年の熊本地震でも倒れたブロック塀で下敷きになり亡くなっています。
さらに、2019年大阪北部地震では、通学途中の小学4年生の女児がコンクリートブロック塀の倒壊により命を落としました。
このように倒れたブロック塀の下敷きになる事故は、大地震のたびに繰り返されています。
ただし、過去に発生した大きな地震でも、現行建基法を守ったブロック塀が倒壊した事例は少ないです。また阪神大震災でも、倒壊した建物をブロック塀が支えて空間ができたことで助かった例があります。
危ないブロック塀。なぜ見落とされる安全性。
どのようなコンクリートブロック塀が危ないのか実例を見ていきましょう。
擁壁上などコンクリートブロック塀

このようなブロック塀の多くは、ブロック下の本体とブロックが差し筋であとに施工(接続)されていることが多く、危険なブロック塀になります。
また、高い所に設置されているため上部に大きな地震力が作用します(転倒モーメント)。
上記右図に3つの問題点が挙げられていますが、専門的には鉄筋の定着・継手長さの不足や、禁止されているブロック内での継手により、鉄筋が引き抜かれて倒壊しました。

報告書の中で、高槻市学校ブロック塀地震事故調査委員会は、事故原因の検証結果として、接合筋の破壊形式を3タイプに分類し、抜け出しは33本/46本中であったと示しています(接合部の破断は残り13本)。
さらに、当時の施工内容も把握できておらず、その危険性があったにも関わらず放置されていました。
補強されたコンクリートブロック塀

擁壁の前で折れ曲がっている角形鋼管は、熊本地震でブロック塀が倒壊した際に、壁の重量に耐えられずに折れてしまいました。このような角形鋼管の補強は支えとして役に立ってはいません。
このような鋼材で補強されているコンクリートブロック塀が多く確認されています。どのような施工がされているか分からないので、とりあえず補強してみた程度では危険な状態であることに変わりはありません。

このブロックには控え壁が設置されており、その控え壁と塀はボルトで緊結されていましたが、4段分のブロックが全長に渡り脱落しました。
上4段は鉄筋が見られましたが,下5段分は配筋されていなかったことから,上段部が増積みされた可能性があります。
前例と同じく、施工された内容の把握は後からは難しく、その補強が適切かどうかは判断することができません。
ブロック塀の施工にはそもそも問題が
隣家との境界などに個人が単独でブロック塀を設置する際は、基本的には自治体等へ届ける必要はありません。そのため、基準に満たないブロック塀がどれくらいあるか把握しきれないのが現状です。
一般的にブロック塀の設置は、外構工事にあたり、施工の終盤や建物の竣工後などに行われるため、その多くは設計者が携わることなくつくられています。
さらに、なるべくコストを抑えたいと考える発注者や施工者が、設計者を介さずにブロック塀の設置を小規模な施工者に発注してしまうケースが多いです。
この小規模な施工者や多くの職人は戸建て住宅の建設が盛んな頃にブロック塀の積み方などを現場から学んでいます。
そのためブロック塀の設置を厳しくチェックしていなかった時代の技術を引き継いだ職人が多く、その施工方法を現場で伝え続けてきたため、安全性が不十分なブロック塀がつくられ続けて、今日まで残ることになっています。
また、施工が不十分になりやすい理由として、基準を満たさない塀ならば価格を2割程度安くできるため「コストを抑えたい施工主の要望を受け、手抜き工事をする業者はいるだろう」との見方があります(公益社団法人日本エクステリア建設業協会福岡県支部)。
ブロック塀は積極的に建て替えることが少ないです。特に老朽化した設置から20年経過したブロック塀は本当に危ないです。そのため専門家による耐震診断をして下さい。