危ない擁壁の見分け方。熊本地震から考える。

地震被害

大地震に対する防災・危機意識が高まり、日本各地で集中豪雨が発生している中、一般の人にも擁壁に関する知識が求められています。

擁壁が劣化している場合は崩壊の危険がありますし、そもそも基準が甘い上に違法な擁壁も少なくないのが現実です。

敷地内に擁壁があった場合は入念に敷地を調べ、もし不適合な擁壁だった場合には、設計者らと擁壁対策を練る必要があります。

危ない擁壁の見分け方。熊本地震から考える。

28時間以内に震度7を2回記録した2015年熊本地震では、建築基準法や宅地造成等規制法に適合していない擁壁の崩落が多数ありました。

熊本地震による宅地被害
写真:熊本市都市建設局「熊本地震による宅地被害と復興」より

過去の地震による擁壁被害では、擁壁高さ2m未満の擁壁の被害が多くなっています。

擁壁高さ2m未満の擁壁の被害
図:熊本市都市建設局「熊本地震による宅地被害と復興」より

2メートルを以上の擁壁を作る際には建築基準法に基づき、建築確認申請が必要になります。

しかし、2m未満の擁壁については、工作物申請が不要で、検査済み証がありません。また、2m以上の擁壁でも、古い造成地では検査済み証がないことも珍しくありません。

構造計算書など強度を示す資料がなければ、「強度なし」を前提に住宅設計しなければなりません。

被害の割合
図:熊本市都市建設局「熊本地震による宅地被害と復興」より

その擁壁の多くは空石積擁壁や増積擁壁などの現行技術基準に不適格な擁壁が占めています。

崩れたケースが多い擁壁タイプ

崩れたケースが多い擁壁タイプ
図:横浜市建設局「擁壁のはなし」より

特に危険なのが、既存の擁壁の上に増設した「増し積み擁壁」です。想定していなかった土圧がかかり、大地震が発生した時はもちろん、降雨量の増大で水圧がかかるとさらに崩壊の危険性が高まります。

また、過去に高級感がもてはやされた大谷石の擁壁ですが、風化による大谷石の老朽化が進み、土圧に耐えられずに崩落する事例が多くあります。

危ない擁壁のチェックポイント

土地の所有者は、擁壁の崩壊やがけ崩れ等の災害が生じないよう、安全な状態に維持管理する責任があります。

所有する土地でがけ崩れ等が発生したことが原因で人命や建物等に被害が生じた場合には、土地の所有者としての管理責任を問われかねません。

それではどのような擁壁が危ないのか見分けるポイントが以下の図になります。

ポイント1
図:横浜市建設局「擁壁のはなし」より

このように構造耐力上の危険性は目視である程度は推測できます。

ポイント2
図:横浜市建設局「擁壁のはなし」より

また、水抜き穴がなければ、雨の日に雨水がたまって水圧が擁壁にかかります。前述した増し積み擁壁ならばさらに大きな土圧がかかっていると予想できます。

排水状況が悪いと
図:東京都都市整備局の「既存擁壁の安全確保について」より

これら以外にも詳しく調べたい場合は、国土交通省が作った「我が家の擁壁チェックシート(案)」のほか、東京都都市整備局の「既存擁壁の安全確保について」、横浜市建築局建築防災課の「あなたの擁壁は安全ですか?=石積み・ブロック積み擁壁のチェックシート=」も分かりやすいのでぜひ参考にして下さい。

擁壁以外で考えないといけないこと

傾斜地に住宅を建てる際は、盛り土と切り土を交互に行ってひな壇状に造成するのが一般的です。

そこに擁壁を設けますが、コンクリート擁壁そのものは大丈夫だと思っても、その上に載る地盤が沈下するケースが多くあります。

L型擁壁
図:日経クロステック「L型擁壁のメカニズム」より

この擁壁をつくるには、擁壁のコンクリートを打設してから土を埋め戻します。

そのため地山と埋め戻し土では強度が異なります。よって埋め戻しの際に十分転圧しないと、その上に建築する住宅が不同沈下する可能性が高くなります。

擁壁の変形
図:東京都都市整備局の「既存擁壁の安全確保について」より

さらに擁壁を設ける地盤が弱いと沈下するばかりでなく、背後からの土圧に押されておじぎをするように前に倒れます。

地すべりが発生して住宅本体の倒壊を招いたりする恐れもあり、沈下よりも複雑で危険です。

倒壊した住宅
写真:日経クロステック「豪雨によって裏手にあった緩傾斜地で崩壊が発生。その崩土によって倒壊した住宅(写真:応用地質)」より

擁壁の危険は、前傾、はらみ、亀裂、内側の盛り土の陥没、地割れなどのほか、伸縮目地が開いて天端の高さが不ぞろいになるといった兆候で知ることができます。

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