日本海側は津波の速さに注意。新潟地震から考える。

津波被害

1964年の新潟地震では、マグニチュード7.5の地震が発生し、15分後には最大で高さ4メートルの津波が北海道から中国地方に至る日本海側に押し寄せました。

1983年の日本海中部地震(M7.7)では地震発生の7分後、1993年の北海道南西沖地震(M7.8)が2~3分後に津波が押し寄せ、甚大な被害が出ました。

このように避難までの猶予時間が短いため、強い揺れの後は避難指示などを待たずに逃げることが必要になります。

それでは、なぜ津波が速いのかを考えてみましょう。

日本海側は津波の早さに注意。新潟地震から考える。

新潟地震の震源は、日本海の新潟県沖から北海道沖にかけて南北に延びる「ひずみ集中帯」で起きました。

この「ひずみ集中帯」は、M7級の地震を起こす海底断層が陸に沿って密集する場所です。個々の断層の活動間隔は長いですが、全体で見ると発生頻度は低いとは言えません。

海溝型地震

日本海東縁部にはユーラシアプレートと北米プレートの境界があり、プレート同士の衝突が度々大きな地震を引き起こしています。

また、いつ起きてもおかしくないと言われている南海トラフ地震や2011年に東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震もこのプレート同士の衝突によるものです。

日本海に限らず、震源が陸に近い場合、津波到達までの時間は短くなります。

東北大の今村文彦教授(津波工学)は「日本海の地震は断層の角度が大きくなり、津波が高くなるケースもあるので注意が必要だ」と指摘し、その上で「強い揺れの後は避難指示などを待たずに逃げることが大事です。地域の津波浸水想定や津波到達までの時間、避難場所を改めて確認してほしい」と強調しています。

2019年山形県沖地震での津波避難行動

震度6強の揺れを観測した、新潟県村上市で人々はどう行動したのか。海沿いの2つの地区の住民に聞き取り調査を行っています。

最大規模の津波を想定した市のハザードマップによれば、日本海で大きな地震が発生した場合、この地区には19分後に津波が到達すると予測されています。

今回の調査では、81%の人(黄色)が、それよりも早く避難していました。

避難行動
図:NHKクローズアップ現代「緊急報告 震度6強」より

すばやく避難した理由として、1964年に起きた新潟地震の記憶が迅速な避難に繋がっています。また、毎年のように防災訓練をやっていたため、多くの人が自分の判断ですばやく行動し、落ち着いて、パニック状態にならず避難できています。

津波注意報や避難勧告、避難指示に頼るのではなく、揺れたら、できるだけすばやく避難をするというようなことが重要で、それを実践されています。

また、できるだけ早く避難するということを繰り返し訓練することの重要性を示しています。

想定やマニュアルは、あくまでもこれまでの経験だったり、机上で考えたものなので、決してそれを過信することがないようにしなければならないということです。

津波注意報が発表される前に津波は到達

山形県沖地震が発生したのが午後10時22分ごろ。そして、その2分後には、津波注意報が発表されています。

注目すべきは、この時の発表内容です。「津波到達とみられる」とありますが、山形県と新潟県で、すでに津波が到達しているとみられることです。

津波到達とみられる
図:NHKクローズアップ現代「緊急報告 震度6強」より

実際に最初の津波が観測されたのは、地震から40分余り後でしたが、より大きな規模の地震が発生した場合は、地震発生から僅か数分で津波が押し寄せていた可能性があるということを示しています。

こうしたことは、日本海側の地域だけではなくて、陸から近い海底で地震が発生するリスクがある地域では、どこでも起こる可能性があります。

激しい揺れを感じたら、すぐに避難する。そのことは原則だということが今回の地震で改めて示されたと思います。

岩手県釜石市鵜住居 (うのすまい) 地区のケース

東日本大震災で被災した岩手県釜石市鵜住居 (うのすまい) 地区の浸水予想図と死者・行方不明者居住地分布図を紹介します。

岩手県釜石市鵜住居 (うのすまい) 地区の浸水予想図と死者・行方不明者居住地分布図

このように浸水予想図の赤や黄色の部分よりも、その周辺の浸水が想定されていない地域で多くの死者が出ています。

これらからも津波三原則の「想定にとらわれるな」の意味を考えるべきです。

想定されていた地域では、どのような避難行動をしたのかは以下のブログをご覧ください。

上記ブログ抜粋

東日本大震災において釜石市は壊滅的な被害を受けましたが、地域の小中学生は高齢者や小さな子どもたちを助けつつ自主的に迅速に避難し、ほぼ全員が無事でした。

これは「釜石の奇跡」と言われており、この背景には「子供たちの津波防災教育」がありました。

東北地方には古くから伝わる“津波てんでんこ”という言い伝えがあり、その新解釈として子どもたちが覚えやすい言葉で表現されたのが「津波避難の三原則」です。

この三原則は自然災害に対峙する主体的な「姿勢」についての原則になります。

津波避難の三原則(参考文献:「人が死なない防災」片田敏孝著より)

1.想定にとらわれるな

2.いかなる状況でも最善を尽くせ

3.率先避難者たれ

今後発生する可能性が高い、南海トラフという太平洋側の地震などは、津波というものについて、やはり意識が高いのが現実としてあります。

ただ、日本海側でも、北海道南西沖地震、日本海中部地震、新潟地震と、10年、20年に1回ぐらいは地震が起こっています。

新潟県村上市や岩手県釜石市のように、防災訓練やハザードマップで確認するなど、きちんと備えておくことは重要だと思います。

特に日本海側は、すぐに津波が来るというのが特徴なので、ちゃんとそれぞれの地域のリスクに応じた避難行動を考える必要があります。

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