タワーマンションの地震の揺れ。防災対策から考えよう。

地震被害

タワーマンションに住もうと思われている方、また住んでいる方は「長周期地震動」ということばを聞いたことがあると思います。

「長周期地震動」の問題は、地震動の周期と建物の揺れやすい周期がマッチすると、揺れが長時間続くことで徐々に共振して揺れが大きくなることです。

このため、タワーマンションの室内は想像を超える強い揺れに見舞われる可能性があります。

短周期と長周期地震
図:内閣府「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動について」より

タワーマンションの揺れやすい周期は、概ね建物階数に0.1秒を乗じた周期で、高層のタワーマンションほど長周期で揺れます。

それでは、タワーマンションはどのくらい長く、大きく、どのように揺れるのか、また防災面での課題を考えましょう。

タワーマンションの地震の揺れ。防災対策から考えよう。

タワーマンションはどのくらい長く揺れるのか

内閣府では、南海トラフ地震に対する長周期地震動予測結果が公表されています。

マグニチュード7以上、かつ震源が浅い地震では、長周期の揺れが長時間放出され、その揺れが遠くまで伝わり、広範囲で長周期の揺れが生じます。

特に、大規模堆積平野では、長周期の揺れが増幅され、平野内に揺れが留まるため、揺れの時間が長くなります。

南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動

図:内閣府「南海トラフ沿いの巨大地震による長周期地震動について」より

発表では、三大都市圏(東京、名古屋、大阪)の揺れの継続時間が長くなっています。最も赤い部分で400秒(7分近く)も揺れ続けます。

タワーマンションの揺れの大きさは?

タワーマンションの耐震設計では、想定する地震に対して、構造的な損壊を抑え、内外装材や設備の損傷を防ぐために、各階の変形の傾き(層間変形角と言います)を1/100程度以内に納めるようにしています。

層間変形角ってなに?
図:マンションラボ「層間変形角ってなに?」より

例えば50mの高さのタワーマンションであれば、最上階の利用に当たっては、往復1m程度の揺れが生じるということになります。50mの高さの建物の周期は4~5秒ですから、揺れの速度は最大、秒速3mくらいになります。

東京理科大学永野氏(超高層集合住宅地震観測合同研究会)によれば、2011年東北地方太平洋沖地震時の関東・関西14棟の超高層マンションの層間変形角を調べた結果、関東地域では平均1/170程度、関西地域では平均1/500程度という結果なっています。

さらに、同じ東京地域でも、湾岸部に立地するマンションの揺れは大きく、立地条件によって揺れ方が異なることが調査データでも証明されました。

タワーマンションはどんな揺れ方する?

タワーマンションのように細長い建物では、上の階になるにつれて、建物全体が下敷きのように曲がります(専門的には曲げ変形)。

曲げ変形

水平方向の揺れは1方向ではなく、2方向になり楕円軌道を描きます。上層階では、この水平の揺れに加え、曲げ変形で床が傾斜するため上下の動きも加わります。

2011年東北地方太平洋沖地震では、体感としては本当に建物が折れるような感覚になった方もいらっしゃると思います。

どうにもできないエレベーターの閉じ込め

2018年大阪府北部地震では、関西地方全域で6万6千基ものエレベーターが緊急停止し、339件の閉じ込めがありました。

あまり報道されていませんが、地震が伝わる前の初期微動(P波)を感知し自動的に最寄り階に停止する地震時管制運転装置が設置されているエレベーターでも155件で閉じ込めが起きています。これは最寄り階に着く前に強い揺れが到来したためのようです。

ちなみに大阪府の最大震度は6弱でしたが、ビルが林立する大阪府や兵庫県の市街地の揺れは震度4程度でした。つまり震度4程度の揺れでかなり多くのエレベーターが停止しています。

中央防災会議の作業部会による被害想定では、首都直下地震では最悪、エレベーターの停止は30,100基、閉じ込め人数は17,400人、南海トラフ地震では停止41,900基、閉じ込め人数22,500人と試算されています。

このような中、大規模火災や道路の渋滞や停電が起こった場合に早期の救出は困難になると想像できます。

どんなにハード・ソフトの備えがあっても、機械は作動しないこともあります。まずは、エレベーター内で揺れを感じた時の基本だけは忘れないで下さい。

1.すべての階のボタンを押す

2.インターホンで通報する

3.停電してもあわてず救助を待つ

また、万一、閉じ込められたときに備え、エレベーター内に非常用の防災キャビネットを備えておくこともお勧めします。

エレベーター用防災キャビネット
例:「エレベーター用防災キャビネット」

水、食料、トイレ、ライト、電源などを備えた三角形などのボックスです。

揺れても大丈夫な備えを!

タワーマンションの上層階では、強い揺れで家具が転倒したり、走り回ったりします。家具固定などの室内安全対策は必須です。

東京消防庁が東日本大震災の発生後、東京都内で行ったアンケート調査では、高層階になるほど家具類が転倒・落下・移動している割合が高くなることが分かりました。

家具類が転倒・落下・移動している割合

地震により高層階でケガをした場合は、エレベーターが止まるため、救助・避難に「時間・人手・労力」がかかるなど、多くの苦難が生じます。

タワーマンションは、エレベーターや電気・水道など各種設備に依存しています。

たとえ、物理的な損傷が無くても停電した時はこれらが使えなくなります。

例えば品川区では、東京湾近郊で地震が起きた場合のライフライン被害想定を以下のようにしています。

ライフライン被害想定
表:品川区「高層マンション防災対策の手引き」

復旧までは、自力で生活していく必要があります。そのための備えをきちんとしておきましょう。

各自治体では高層マンション向けの備えリストを用意していますので、お住まいの地域で検索してみてください。

品川区:「高層マンション防災対策の手引き」

中央区:「備えて安心!マンション防災~震災時にも住み続けられる高層住宅~」

埼玉市:「高層マンション防災ガイドブック」

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