マグニチュード9地震がどれほどの破壊力なのか

地震被害

2011年東日本大震災を引き起こした地震はマグニチュード9で日本の地震観測史上最大の超巨大地震でした。しかし第一報の地震速報はM7.9、ほどなくM8.4に上がり、夕方には8.8に修正、その2日後には気象庁はM9.0と発表し直しました。なぜこのような修正が行われたのかまず確認しましょう。

地震規模(M)の算出方法の違い

最初に発表されたM7.9及びM8.4は気象庁マグニチュードと呼び、日本独自の基準のスケールです。後者のM8.8及びM9.0はモーメントマグニチュードといい、別の算出方法によるものです。

気象庁マグニチュードは、主に地震による地盤の振幅や加速度で算出し、小規模から幅広くマグニチュードの算出に利用されています。また地震規模の算出まで短時間ででき、日本で発生するレベルの地震を正確に判定できる反面、M8ぐらいからの巨大地震で地震規模が小さい方にずれる、つまり過小評価してしまう特徴があります。いずれにせよ緊急地震速報や津波警報など、一刻を争う情報には役立ちます。

一方で、後者のモーメントマグニチュードは、岩盤の強さ、破壊された断層面責、ズレの量で算出し、中規模地震からM8〜9級まで巨大地震規模を正確に表現できます。ただし算出時間に世界にある地震観測網のデータが必要になるため時間が掛かる特徴があります。日本で起きた地震が海外の地震観測網に届くには数十分かかり、かつデータを送り返してもらう時間も必要なためそれなりの時間が掛かるためです。

2011年の東北地方沖地震では、気象庁マグニチュードで算出した津波の高さが実際の高さより低く見積もられてしまうという課題が生じました。これが結果として避難行動に影響したのではないかと考えられています。

これらを受け、M8以上の巨大地震については、モーメントマグニチュードによる地震規模の全容が明らかになるまでは、例えば津波高さ○○mといった具体的な数字ではなく、”津波巨大”ということばで表現して避難を促すことになりました(例:○○県太平洋沿岸津波高さ巨大など)。

過去100年間の大地震分布

日本が地震国であることは広く知られていますが、最も地震が多い太平洋からインド洋にかけてその分布を見てみましょう。

M7以上の地震

過去100年(1922年3月〜2022年2月)の世界の大地震の分布を見ると、M7以上の地震は1299回記録されています。日本は世界で起きる地震の20%が起きると言われています。阪神淡路大震災を引き起こした兵庫県南部地震、今後起こるとされる首都直下地震などの内陸型地震には、M7クラスが多いと考えられています。

M8以上の地震

M8以上の地震は、全世界で84回起きており、日本では関東大震災、今後起こるとされる南海トラフ地震はこのクラスになります。

M9以上の地震

M9以上の地震は、全世界で5回起きており、写真左側のスマトラ沖地震以外は太平洋を囲むエリアで起きています。この中で一番古いのが1952年11月4日のカムチャッカ地震(ロシア)でM9.0を記録しました。地震被害とともに、津波が太平洋に広がり、日本を始め、アメリカ西海岸にも到達しています。

次が1960年5月22日のチリ地震でM9.5を記録しました。科学的な観測の元記録された過去最大規模の地震です。同じく津波が広がり、地震発生の15時間後にハワイを襲い、そして22時間かけて到達した日本の三陸地方では6mに達する大津波が襲い、140名以上が亡くなりました。

次の1964年3月27日のアラスカ地震は、M9.2でアメリカ国内の地震では最大規模になります。そして21世紀に入って最初の巨大地震が2004年12月26日のスマトラ島沖地震でM9.1を記録しました。この地震による津波がインド洋全体に広がり、津波犠牲者が約22万人、負傷者が13万人という大災害になりました。

最後の2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震はM9.0〜M9.1を記録しました。これらを表にすると以下になります。

マグニチュード別 全世界地震回数(1922年3月1日〜2022年2月28日)

M9以上5
M8.0〜M8.979
M7.0〜M7.91215
M6.0〜M6.910272
M5.0〜M5.978256
M4.0〜M4.937747

小さい地震でガス抜きになる?

マグチュードは数字が1上がることにエネルギーが約32倍(31.6倍)、2上がればやく1000倍になる対数になります。なのでマグニチュードが0.2上がればエネルギーが4倍、0.4上がればエネルギーが4倍になります。

日本で最も多いM4.0の地震を基準として、それ以上の地震規模がどのぐらいになるかをまとめています。

M9.031600000倍
M8.01000000倍
M7.031600倍
M6.01000倍
M5.031.6倍
M4.0(基準とした場合)1倍

この表から分かることは、中規模地震がいくら起きようとも、それがガス抜きになって大地震が起こらないということはあり得ないです。これほどの違いがあるわけですから、歪みが解放されてしばらくは地震が起こらないというのは間違いだと分かるでしょう。

日本で起こるM9クラスの地震予測

今後、日本で想定される大規模地震として、以下の2つの地震があります。特に南海トラフ地震では、いくつかの破壊する断層が想定されており、その中のひとつでも断層がズレるとM8半ばの巨大地震になると言われ、そのブロックが全て同時にズレるとM9以上になると想定されています。

例えば、1707年の宝永地震では、静岡沖から四国沖までの断層が一度に破壊して、M8.7になっていたのではないかと最新の研究で明らかになっています。政府の地震調査委員会では、南海トラフ地震の40年以内の発生確率を90%程度と情報修正しています。その他にも南関東を中心とした首都直下地震の発生確率は30年以内に70%とされています。

https://www.bousai.go.jp/kyoiku/hokenkyousai/jishin.html

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