南海トラフ地震や首都直下地震が起こったらどうなるか

地震被害

地震が起きればどうなるのかを事前にイメージしておくことで、日頃の備えとして何をしておくべきかが明らかになります。

特に大都市は災害に弱く、個々の家庭での備えが必要になります。どんな地震でも指摘されることは、いずれも過去の地震災害で言い古されてきた課題ばかりです。

過去の地震災害を踏まえ、自分がいる場所で地震が起こったらどうなるか、日頃の備えとして何をすべきかを考えましょう。

まずは、内閣府による南海トラフ地震、首都直下地震の被害と対策に係る映像資料をお時間がある方はご覧ください。非常に分かりやすくまとめられています(約17分)。

南海トラフ地震や首都直下地震が起こったらどうなるか

地震直後の様子

耐震性の低いビルやアパート、古い家屋、古いブロック塀などが倒壊し道路を塞ぎます。木造家屋密集地では火災が発生し、通行できない道路や消防力不足で延焼が拡大します。

沿岸部では、液状化により建物が傾き、道路に段差ができます。南海トラフ地震では津波が沿岸部を襲い、浸水地域の損壊した家屋内には多くの人が閉じ込められたままになります。

強い揺れや液状化によって、ガスや上下水道などの地中の配管が破断します。長期にこれらが使えなくなるため、炊事、トイレ、入浴など日常生活に支障がでます。高層マンションなどは、停電すれば、エレベータが使えず、水のポンプアップなども困難になります。

大都市には中高層の集合住宅が多く、居住空間も狭いので、家具の転倒や散乱によって、逃げ遅れたり室内でケガを負います。

東京には16万基を超えるエレベータがあり、首都直下地震の被害想定では、3万基が緊急停止、1万7千人が閉じ込められます。

高速道路は通行止め、新幹線・在来線は運行停止になります。多くの人が行き場を失い、大量の帰宅困難者が発生します。運行停止によって、道路渋滞が発生し交通網がマヒします。

携帯電話の基地局が被災し、通信回線が切断されると広域で携帯電話やインターネットが利用できなくなります。

地震直後は、火力発電施設の多くは強い揺れで緊急停止し、広域に停電が広がります。火力発電所は電気が無ければ始動しません。発電施設が損壊すれば停電は長期にわたります。

地震後の被災地での救助・救援・医療活動

地震後の被災地での救助・救援・医療活動は、困難を極めることになります。

最初に、救出・救助と緊急輸送道路などを優先した道路啓開が行われます。津波浸水地域・液状化地域・家屋倒壊の多い地域では、啓開に時間がかかります。さらに被災地の広域さ故に人員や資機材が大きく不足します。

都市の場合、被災者が遥かに多くなるので、自衛隊、消防、警察、医療などの対応資源が何れも大きく不足します。

地震火災で延焼した地域や家屋倒壊が著しい地域の瓦礫撤去には時間がかかり、地域の復旧・復興に時間を要します。仮設住宅の建設も、建設資材や作業員の不足で十分な数を用意できません。

大都市には、大学生や独身男性など、周辺との付き合いの少ない若者や、介護が必要な老人など、多くの人が一人で暮らしています。独居世帯の多い大都市では安否確認ができません。

東京都はライフラインの応急復旧日数を上水31日、下水16日、電力7日、ガス57日、電話14日としています(東京都における直下地震の被害想定に関する調査報告書より)。

この間は自力で生活する必要があり、そのために何を備えるべきかを見てみます。

地震に役に立つ必需品

東京都は、各家庭において、首都直下地震等の様々な災害に対する備えが万全となるよう、防災ブック「東京防災」を配布しています。

https://www.bousai.metro.tokyo.lg.jp/res/projects/default_project/_page/001/006/390/202004071.pdf

防災ブックの「今やろう!4つの備え」として、今すぐできる災害の備えをまとめており、大変参考になります。

私自身は、東北地方太平洋沖地震(海溝型)と阪神淡路大震災(直下型)の大きな地震を人生で2度経験しました。その経験を踏まえ、災害の備えの中で個人的に役に立ったものを3つ紹介致します。

スニーカー

日中、勤務先で被災した場合、やはり無理にでも自宅に戻ろうとします。男性の革靴、女性のパンプスなどでは、どう考えても長時間歩き続けることは困難です。男性の革靴で15km歩くとマメだらけになり、女性のハイヒールは4km歩くのが限度と言われています。

また、東京都は、午後6時に大地震が発生した場合、自宅までの距離が20kmを超えると「翌朝までの徒歩帰宅は困難」と想定しています。

帰宅ルートを決める際は、幅員の広い幹線道路を帰宅ルートに設定しましょう。なぜなら広くて歩きやすく、ガラスなどの落下物の危険を避けることや火災の熱を防ぐことができ、給水拠点やトイレ、休憩場所などの帰宅支援ポイントが整っているからです。

大都市圏の多くの自治体ではガソリンスタンドの組合と協定を締結しています。ガソリンスタンドは、水、トイレ、情報の提供などのサービスを実施します。またコンビニは、食料や飲料の販売のほか、トイレの提供も行います。

ただし、災害情報も得ずに徒歩帰宅を選択すれば、大量の徒歩帰宅者が、大規模火災発生地域へ突入することや、余震で建物倒壊や外壁が落下して被害に合うこと、大量の帰宅者・車で大渋滞して、救急・消火・救助・災害対応が大幅に遅れるなどが生じる可能性があるので十分な配慮が必要になります。

自転車

東日本大震災では、大量の徒歩帰宅者や車により歩道や車道が大渋滞しました。徒歩帰宅者は近所の量販店で自転車を購入したため売り切れが続出しました。都心では高額自転車でも仕方なしに購入した方もいたようです。

私自身は自転車通勤だったためあまり影響がなかったのですが、都心に住む妹の様子を見に行ったり(妹は阪神淡路大震災の災害トラウマで、小さな地震でもかなり心配になるようです)、近隣への買い出しと災害時の移動手段としてはかなり活用できました。

自転車は、瓦礫や交通止めにしばしば阻まれても、例えば時速10kmで10時間走れれば100km。もしも2日続けられれば200kmと行動範囲が広まります。

ただし、阪神淡路大震災のときはガラスや釘が散乱しており、パンクして使い物にならなかったこともあったので、パンクしないタイヤなどを装備しておくことおすすめします。

車は避難所の仮設部屋として利用する

自治体ごとに災害が起きた際の避難所の計画がありますが、居住空間として割り当てられている面積は、1人あたりおよそ2~3㎡くらいです。さらに都市で災害が起きた場合、想定以上の人が避難所に押し寄せることも考えられます。

このような中で避難生活が長期にわたる場合、大勢の人と生活を共にすることで、精神的に辛くなります。その場合、車を避難所の仮設部屋として利用することができます。

避難所にはさまざまな情報が集まり、行政サービスを受けることもできます。基本は避難所に滞在して、家族が交代でクルマに泊まる、着替えに使用、ペットを同行した場合も車があれば、他の人への気遣いが減ります。ただし、自治体によっては車の避難を制限しているところもあります。

災害は臨機応変に対応する

日常生活の延長として、災害に強い暮らし方や考え方を情報や知識として少しずつ取り入れていくことが大切です。

上の3つを挙げたのも、決まったパッケージとしての防災の備えをするのではなく、それぞれの暮らしのかたちに応じた災害の知恵を増やしていくことをして下さい。

近年のアウトドアブームでは、屋外での調理やテントや車での生活を趣味にされているご家庭も多くなっています。そこで学ぶ知識はそのまま災害でも十分活かせます。

誰でも災害時には、視野が狭くなったり、慌ててしまうのは当たり前のことです。そんな時、繰り返し積み重ねた小さな知識が必ず役に立ちます。

タイトルとURLをコピーしました