2021年10月7日夜22時41分、千葉県北西部を震源とするマグニュード6.1(5.9へ変更)地震がありました。埼玉県川口市、東京都足立区では、震度5強の強い揺れを観測し、その他都心部でも震度4から震度5弱の揺れを観測しています。
東京23区で震度5強以上の揺れを観測したのは、2011年の東日本大震災以来です。

千葉県北西部を震源(上表✖︎印)とする地震メカニズムを明らかにして、なぜ川口市や足立区で震度5強の揺れになったのかを解説します。
首都直下型地震との違い
結論から言うと、今回の地震は首都直下地震で想定されている地震の規模や性質と全く違う地震です(専門的には、東西方向に圧力軸をもつ逆断層型の地震メカニズム)。

首都直下地震で想定されている震源位置(上図:千葉市直下)と似ていますが、その地震の規模はすべてマグニュード7以上です。ちなみに今回の震源位置は2005年7月23日起きたマグニチュード6の地震とほぼ同じ位置で起きています。
今回の地震はマグニチュード6.1(5.9へ変更)で、1.0違えば地震のエネルギーは32倍違うため、被害の様相は全く違ったものになります。
次に、震源の深さです。今回の地震は気象庁の発表によると深さ75kmと深い位置(暫定)で発生しています。

地震の発生場所は、地殻内やプレート境界で発生すると考えられていますが、今回の地震の深さ75mは、上の図でいうと④あたりと考えられています。
首都直下地震の想定は、比較的浅い地震で、フィリピン海プレート内、フィリピン海プレートと北米プレート、そして地殻内の浅い地震によってマグニチュード7クラスの地震が起きるとされています(番号①②③)。
震源が浅ければ浅いほど、地面に近いため、地上の揺れは強い揺れとなる可能性が高く、被害が拡大します。阪神・淡路大震災では、震源の深さが16キロと比較的浅く、狭いエリアが強烈に揺さぶられました。
一方で、今回のように震源が深い場合は、揺れが遠くまで伝わるため地震の範囲は広くなります。
川口市や足立区で震度5強の揺れ
なぜ川口市や足立区で震度5強の揺れになった理由は、上記の震源が深かったことと、地盤の特性にあります。

http://150.60.125.138/kenchiku/img/yureyasusa.pdf
地震の揺れは、やわらかい地盤であればあるほど、揺れやすくなります。

東京都の地盤の揺れやすさを見てみると、湾岸エリア、足立区なども揺れやすい場所となっており、これらの地域では、震度5弱が確認されています。
また、ウェザーニュースアプリ利用者から寄せられた被害状況の報告では、震源に比較的近い千葉県北西部から東京23区、埼玉県南部にかけて、「家具が倒れた・物が落ちた」の報告が目立っており、上記地盤の揺れやすさマップとの相関性が確認できると思います。

長周期地震度階級2
今回の地震では、千葉県北西部と東京23区で長周期地震動 階級2を観測しました。
長周期地震動は、高層ビルやマンションでは、大きく長時間揺れ続けるため、物につかまらないと歩くことが難しく、棚にある食器類や本棚の本が落ちることがあるなどとしています。

なぜ、長周期地震度階級が定められているかというと、高層ビルやマンションでは長周期の揺れに共振しやすい固有周期(揺れやすい周期)を持っているため、長時間大きく揺れ続けた結果、地震被害が拡大する可能性があるからです。
このような情報活用して、防災対応を行うための判断支援、また、高層階の住民の方々が、震度とは異なる揺れであったことを認識することを想定して定められています。
ただし、高層ビルの中でも、階や場所によって揺れの大きさが異なり、特に、建物の頂部の揺れ方は、発表した長周期地震動階級よりも大きくなる場合があるため注意が必要です。
今後も同程度もしくは同程度以上の地震が一週間以内に発生する可能性があるため注意してください。