インスペクション(住宅診断)いる?いらない?

制度

2018年宅地建物取引業法の改正により、中古住宅の売買の際に行われる重要事項説明に、既存住宅状況調査を実施している場合にはその結果について説明することが義務づけられました。

既存住宅状況調査(インスペクション)は、構造耐力上主要な部分(基礎、壁、柱等)に生じているひび割れや、屋根、外壁等の雨漏り等の劣化事象・不具合事象の状況を、目視、計測等により調査するものです。破壊検査、瑕疵の有無の判断、建築基準関係法令への適合性の判定等は含みません。

この制度は、中古住宅取引の活性化を目的として導入され、義務化という話もあったようですが、現時点では任意となっています。

安心して中古住宅を購入するためにこの制度を使うべきか、使わないべきかの判断材料として見ていただければと思います。

中古住宅の雨漏れは新築の40倍

まず、新築、中古住宅いずれでも保険事故の大部分は雨漏れです。つまり中古住宅の購入で最も気をつけないといけないのが雨漏れです。

新築後9年未満の雨漏り等の保険事故は、概ね0.05%(国土交通省資料より)で推移しています。

しかし、中古住宅では、既存住宅売買瑕疵保険(個人売買)の保険事故発生率は、加入一年未満での保険事故発生が最も多く、保険期間5年契約では2.231%と、新築保険の事故発生率の40倍以上になっています。

さらに、この既存住宅売買瑕疵保険の加入率は10%程度しかないため、実際は中古住宅購入後の保険事故発生率はさらに多いと考えられます。

中古住宅売買瑕疵保険

次に法律的な話をすると、宅地建物取引業者が売主のときには宅地建物取引業法が適用され、中古住宅の場合でも最低2年間は瑕疵担保責任を負わなければなりません。

なお、瑕疵担保責任の範囲は、「本物件の隠れたる瑕疵について売主は2年間責任を負う」とするのが慣例です。

一方で、不動産会社が売主ではない場合(個人間取引(仲介))は、係法令は民法のため、売買取引の実務では「引渡し日から3ヶ月」と定めることが慣例です。また、特に古い物件のときには「瑕疵担保責任を負わない」とすることも多いです。

また、このような個人間取引の場合は、瑕疵担保保険は売主も買主も義務ではありません。そして、瑕疵担保保険のための検査に合格する必要もあります。

瑕疵担保保険に加入するには、瑕疵担保保険加入用のインスペクション(登録検査事業者)を受ける必要があります。

ちなみに、この瑕疵担保保険加入のインスペクション(検査は1時間〜1時間半)は、資格者の技量(経験)や調査精度にばらつきがあり、また見える部分のみ(目視)のため、受けたからといって必ず不具合が生じない訳ではありません。

結局、事故が起きるまで分からない状況が多く、インスペクションの普及が進まない原因になっています。

インスペクションの問題

雨漏れ以外にも色々な問題があります。例えば、床下、小屋裏などは基本的には見ないため、瑕疵担保保険加入のインスペクションでチェックしなくても良い項目です。

そのため、購入してからすぐにシロアリ被害があったということがよくあります。ちなみに、シロアリ被害は保険対象外なので個人負担になってしまいます。

また、買主の方で、インスペクションを受けたいと言っても、売主が認めないケースも多くあります。理由として、インスペクションで建物に不具合があった場合、その費用を捻出しなければならなくなりますし、その状態のまま取引すれば売買後にトラブルになるなどが考えられるからです。

さらに、住んでみないと分からない程度の住宅全体の傾きがあることがあります。これもインスペクションにない項目です。実際、住んでから気になってしまい、ジャッキアップして傾きを戻すのに150万円近くかかったケースもあります。もちろんこれも保険対象外です。

このようなケースは少ないとはいえ、注意する必要があります。しかしながら、まずは雨漏りの状況を確認するべきですし、専門家に屋根の雨漏りのみを重点的に見てもらうことでも対応は出来そうです。

インスペクションを行う業者の中でも、床下、屋根裏、ドローンによる屋根調査をしっかりするところもあります。また購入前の調査によるアドバイス、購入した後のサポート、メンテナンスまで一気通貫でサービスを提供する業者も少しづつ増えてきています。いずれにせよ、信頼できる業者かどうかしっかり見極める必要がありそうです。

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