地震後の被害の判定に悩まない(パート1)

地震被害

被災後、一番大変な時に直面する課題が被害判定です。この被害判定の経験は人生の中で1度あるかないかのため、なかなか共有ができません。

建物の被害状況を正確に知ることが大切ですが、被害判定には目的に応じて種類があり、さらに判定結果が異なることから、それが入り乱れて混乱を引き起こします。

被災した後、混乱しないように事前に知っておきましょう。

地震後の被害の判定に悩まない(パート1)

被害後の判定は以下の表のように進みます。

判定の流れ
図:酒田市HP「地震発生後の被災建物の調査区分」より

地震発生後にすぐに市区町村によって行われるのが直接の危険性の判定です。

①被災建築物応急危険度判定

応急危険度判定調査の目的は、余震などによる建物倒壊の危険性や外壁・窓ガラスの落下、付属設備の転倒などの危険性を判定することにより、人命にかかわる二次的災害を防止することです。通常、1~2週間以内に実施されます。

建築士の資格を有し講習会を終了し各都道府県に登録している「応急危険度判定士」によって行われます。

判定の種類には、下記の3種類があります。

3つの判定
図:一般財団法人日本建築防災協会「全国被災建築物応急危険度判定協議会」より

・調査済み(緑):危険がない

・要注意(黄):損傷があるが立入は可能

・危険(赤):倒壊の危険が高い→立入り禁止

この3つの判定ステッカーを建築物の玄関等の見やすい位置に掲示することにより、周辺住民等に周知します。

応急危険度判定士が原則として外観目視により被災建築物の傾きやひび割れを調査し、建築物の倒壊や、屋根材等の落下の危険性があるかなどを判定します。

木造建築物の応急危険度判定調査表
サンプル:木造建築物の応急危険度判定調査表

鉄筋コンクリート造(壁式構造など)のマンションでは、規模が10階程度、または高さ30m程度までの場合は、応急危険度判定調査が行われます。

これ以上になると、高層建築物となり被害認定の開始は相当遅れることが予想されています。

高層建築物は、高層専門の構造建築士でなければ危険度の判定が難しく、判定にも相当の日数がかかります。その間、住民は住んでいいものかどうかの判断が出来ないということになります。

応急危険度判定は、罹災証明のための調査や、被災建築物の恒久的使用の可否を判定するものではありません。

瓦や外壁が落下する恐れがあるなど、あくまで緊急的な二次的災害の防止が目的なので、「危険(赤色)」と表示された建物であっても居住できるケースはあります。

赤紙
写真:毎日新聞「熊本地震「危険」の赤紙、住んでいいの? 家屋応急判定」より

そして、大まかな目視による判定が行われた後にあるのが、「被災度区分判定」です。

②被災度区分判定

応急危険度判定活動が実施された次の段階として、被災建築物の所有者からの相談及び業務依頼により、被災建築物の再使用の可能性を判定し、復旧するための被災度区分判定を行います。

被災した建物を適切に復旧できれば、住民が旧来の住宅に住み続けることが可能となります。

そのために所有者(マンションであれば管理組合)が建築士に業務依頼し、日本建築学会が定めた構造躯体に関する被災度区分による判定を行います。

判定の種類には下記の5種類があります。

・倒壊:建物の全部又は一部が倒壊      

・大破:建替えが必要な致命的な被害   

・中破:大規模な補強・補修が必要な被害

・小破:タイル剥離、ひび割れ等修繕が必要な被害

・軽微:微少なひび割れ、仕上げ補修復旧できる程度の被害

・無被害:無被害と認定

判定の種類
図左:豊橋市「命を守る家づくり」より
図右:鹿島建設「地震被害について」より

これらは「震災復旧のための震災建築物被災度区分判定・復旧技術指針」に基づいて判定します。

ただし、実際に被災建物の判定や修復をした経験がない建築士が判定をすることが多いです。なぜなら建築士と言え、そのような災害に立ち会うことが少ないからです。

さらに、その調査や判定に法的な拘束がある訳ではありません。

なので、東日本大震災の時には、罹災証明発行の基準で、「全壊」とされても、被災度区分では「小破」となるケースもありました。

また、この被災区分度判定は、誰が調べるか、どのくらい厳密に調べるかによって変わってきます。

例えば、タイル張りの柱のタイルのクラックが、仕上げのタイルのみのものなのか、躯体まで深く入っているものなのか、正確にはタイルをはがしてみなければ判定できません。さらに柱を斫って見なければ分からない場合もあります。

被災区分度判定は、余程の緊急性がなければ、罹災証明を受けるための調査が先行するので、次に「③罹災証明認定基準による判定」を説明します。

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