ビルドインガレージ付きの木造3階建て住宅の耐震性は?

木造住宅

都心部の狭小地のビルトインガレージ付き3階建て住宅は多くは、十分な耐震性能を確保していないと考えられています。

もちろん、木造3階建て住宅は、構造計算による耐震安全性を確認しますが、住宅メーカーによっては最低限の耐震性能となっている場合があります。

このような住宅を購入するときの注意点についてまとめました。

ビルドインガレージ付きの木造3階建て住宅の耐震性は?

都心部の狭小地のビルトインガレージ付き3階建て住宅は、間口が狭く、細長い建物になり、明らかに間口方向の壁量が少なくなる傾向があります。

某住宅メーカーの平面プラン
図:某住宅メーカーの平面プラン

さらに木造3階建ては、風に弱く揺れやすいという欠点があります。

最近の木造3階建ては、欠陥が少なくなってきていますが、初期の頃の木造3階建ては、設計ルールも浸透しておらず、施工不良や施工ミスが多くありました。

また、設計図面通り作っていないことも多く、それが欠陥の温床となっていました。

以下の映像は、防災科学技術研究所・兵庫耐震工学研究センター(通称=E-ディフェンス)で2011年10月27日、木造3階建て住宅を試験体とした実大振動実験です。

加振の結果、性能表示制度における「耐震等級2」相当とした試験体が倒壊しました。

奥にある住宅は揺れによって大変形し、まず1階の水平耐力要素(筋かい)が折れました。さらに揺れ続けた結果、1階は大きく変形し、元に戻らなくなり、ゆっくりと倒壊しました。手前の住宅も実際の基礎の上に建っていれば柱脚が転落し、1階が大変形して崩壊するか、建物全体が転倒しています。

ビルトインガレージ付きの場合は、駐車場入り口側に玄関が来ることが多く、この面の強度が非常に弱いのが特徴です。特に駐車場上でセットバックしていると非常に弱くなります。

こんな3階建てプランは危ない!

オーバーハング

1階より2階が大きいといったような立面的に不整形な建物です。

不整形なプラン例
図:住友不動産「2世帯住宅」

上階の重さが重くなりバランスが悪くなるので、一般的に次に説明するセットバックより危険な形状になります。

敷地を有効に活かさなければならない都会部の木造3階建てに良く見られる形状で、揺れが増幅しやすい構造です。

セットバック

立面的に見て1階より2階が小さいといったような立面的に不整形な建物です。上階からの力が下階にスムーズに荷重を伝達できないため工夫が必要です。その工夫をせずに無理な設計が目立ちます。

スキップフロア

スキップフロアは変化のある室内空間が得られますが、床面が分断されるため、この点を考慮した構造計画をたてないといけません。また、床レベルの違うゾーンでそれぞれ壁の量や配置バランスをチェックする必要があります。

しかし、構造計画を全くしていないスキップフロアが多いのも事実です。

古い建売住宅

古い建売住宅は、計算通り施工されていないケースが多い上、構造計算ミスや施工不良も多いです。特に狭小地の中古木造3階建ては要注意です。

そもそも構造計算が一番の問題

過去、木造構造技術者は、鉄筋コンクリートの構造技術者と異なり意匠設計者が兼任している場合が多くありました。

その理由として、簡易に入力できるソフトが普及したことがあります。無茶苦茶な構造計画でも構造計算さえ通れば良いとした風潮や、施工側の金物等の認識不足により施工不良があったりもしました。

例えば、ホールダウン金物などが適正に施工されておらず、壁の量も不足する場合があります。このような建物は、非常に危険です。

もっとも、きちんと設計できており、工事監理もできていれば、それほど大きな問題が発生しないはずです。

近年、設計者の技量不足や施工不良などで、3階建て木造住宅は揺れるとの誤解を聞くようになっています。

揺れの許容できるかどうかは、その人の個人差が大きいのですが、かなり揺れる≒なんらかの不具合が発生していると考えてもよいかもしれません。

ビルドインガレージ付きの木造3階建て住宅で耐震等級3は可能?

近年の地震被害を鑑みれば、耐震等級3を確保は必須だと考えています。

よく見られるのが、玄関前付近に多重の壁を設置して計算上数合わせのみをして構造計算しているケース?です。

多重の壁を設置して計算上数合わせ
図:某住宅メーカーの平面プラン

このように車庫の入り口の強度不足を補うケースは、設計者の技量により、構造安全性への効果は大幅に異なります。

在来工法の木造住宅では、耐力壁の量で耐震性能を上げます。耐力壁は、壁の中に筋交いという木材(もしくは面材)を入れて、横からの力に耐えられる壁のことです。

耐力壁によって耐震性は上がりますが、吹き抜けや大開口などを採用すれば、耐力壁の量が減るので、必然として耐震性は落ちてしまいます。つまり、耐震性能を保つ為に間取りの制限が生じるということです。

よって、ある程度お金を掛けなければ、在来工法で耐震等級3は極めて難しいと言えます。

抜本的な対策として、1階RC造+2,3階木造、木造ラーメン構造(SE構法など)が考えられます。

1階RC造+2,3階木造
写真:建築家紹介センター「池上の家」
木造ラーメン構造
写真:SE構法「ビルトインガレージ」

また、補強方法として、門形フレームを入れる、方杖を入れる、仕口ダンパーを入れる、ステンレスブレースを入れるなどがあります。

ただし、バルコニーの先端に補強フレームを配置する場合、バルコニーの面積が増え、増築扱いになり、確認申請が必要になるケースがあるので注意が必要です。

このような補強する際に、確認申請をしないで済む方法として、大規模の修繕・模様替えに該当しないよう、「主要構造部の過半」にならない範囲に補強部位を絞る方法があります。

例えば、柱の場合、建物全体の総本数に対する補強本数を半分以下に納めれば、確認申請の必要はありません。

また、柱や梁の場合、金属板や炭素繊維シートを巻くなどの補強方法は修繕や模様替えに該当しないので申請の必要はありません。

ちなみに炭素繊維シートは新築時には主要構造部に使えないが、耐震補強では使用できます(2001年国土交通省告示1024号「あと施工アンカー・連続繊維補強設計・施工指針」について)。

いずれにしても、木造3階建て住宅に習熟した木造構造技術者との連携が必須になります。

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