温暖化でシロアリ被害が拡大中。どこが被害を受けやすいのか。

木造住宅

日本国内で建物に被害を与えるシロアリは、ヤマトシロアリかイエシロアリです。

ヤマトシロアリは、北海道の一部地域を除いて、日本国内のほぼ全域に生息しています。

一方、イエシロアリは、太平洋ベルト地帯や九州地方など温暖な地域を主な生息し、住宅被害の程度は、イエシロアリの方が圧倒的に大きいです。

また最近では、外来種であるアメリカカンザイシロアリの被害も少しずつ広がっています。

シロアリによる被害マップ
図:三井化学アグロ㈱「シロアリによる被害」より

近年の温暖化による暖冬により、イエシロアリの被害が北上しており、10年ほど前から関東でもイエシロアリが見られるようになってきています。特に古い木造住宅は気を付ける必要があります。

また、新しい住宅でも、思いもよらないシロアリの侵入経路が見つかり、問題となっています。

温暖化でシロアリ被害が拡大中。どこが被害を受けやすいのか。

築年数ごとのシロアリ被害発生率

2013年に国土交通省補助事業として全国5,322棟を対象とした「シロアリ被害実態調査」が行われました。

築年数ごとのシロアリ被害発生率
表:国土交通省補助事業「シロアリ被害実態調査報告書」より

築年数ごとのシロアリ被害発生率を見ると、築15年から被害率が大きくなり、25年~29年の住宅においては4割弱の割合で被害が発生しています(A区分:しろあり保証なし、B区分:保証期間内、C区分:未確認)。

これは新築時には住宅会社が主導で薬剤処理などのシロアリ対策を行いますが、その後は施主任せとなり、結局放置されて、薬剤の効果が切れて被害につながるからです。

被害箇所別の蟻害

戸建て住宅でシロアリの被害の多い場所は、浴室、洗面、玄関のドア枠です。シロアリは、暖かく湿気が多く、暗い場所を好み、さらにスキマが大好きです。

「シロアリ被害実態調査報告書」でも、全体で床下が最も被害率が高く64%、ついで玄関13%余り、外周8%となっています。

被害箇所別蟻害割合
表:国土交通省補助事業「シロアリ被害実態調査報告書」より

このように床下にシロアリ被害が集中する理由としては、布基礎工法が挙げられます。

基礎工法の違い
図:高増工務店「住宅の基礎について」より

布基礎のシロアリ対策の基本は薬剤による土壌処理です。しかし、土壌処理しても薬剤が半永久的に効果を持続することはありません。

土台・柱などの同じく5年を目安に再処理が必要になりますが、結局放置されて、薬剤の効果が切れて被害につながっています。

次に基礎の構造別蟻害の発生率を見てみましょう。A区分(しろあり保証切れ)の布基礎については、すべての組み合わせでベタ基礎を上回っています。

基礎構造別蟻害発生率
表:国土交通省補助事業「シロアリ被害実態調査報告書」より

これはベタ基礎は床下全面を鉄筋コンクリートの底盤で覆う形式で、建物を地面から物理的に隔絶できるからです。

このような防蟻対策としてベタ基礎工法を採用する割合は、2000年頃には4割程度しかありませんでした。

しかし、2000年品確法が施行され、2001年の同告示により、住宅性能表示基準の「劣化対策等級3」の「地盤」の項目で、ベタ基礎を採用すれば土壌処理を省略できることになりました。

そして、翌年の2002年にはベタ基礎の採用比率が布基礎を逆転し、2017年の採用比率は9割を超えています。

しかし、床下にコンクリートを敷き詰めるベタ基礎だから大丈夫と油断して被害にあうケースもあります。

ベタ基礎のわずかな隙間をついて侵入
図:京都大学 簗瀬准教授「ベタ基礎のわずかな隙間をついて侵入」より

地面をコンクリートで覆っても、シロアリは配管まわりやつなぎ目のスキマに蟻道と呼ばれる道を自分で作って床下まで侵入します。

これらから考えれば、2005年以前の木造住宅で布基礎工法を採用している物件(蟻害対策なし)は最も蟻害を受ける割合が多くなると思われます。

基礎断熱工法を採用した住宅のシロアリ被害が拡大

基礎断熱工法とは、主に基礎の立ち上がり部分に断熱材を施工する工法です。

北海道や東北地方など寒冷地で採用されてきた工法ですが、最近は高気密高断熱住宅の流行りもあり、温暖な地域でも導入する住宅会社が増え始めています。

日本しろあり対策協会が2017年11月から12月にかけ、会員715社を対象に、基礎断熱工法を採用した住宅の駆除実績を分析した調査があります。

この調査では、駆除施工を行った住宅の基礎断熱材の位置を調べたところ、内断熱が57.7%、外断熱が29.4%を占めました。

内断熱、外断熱を問わず、基礎断熱工法全般に蟻害が及んでいると分かります。さらに防蟻断熱材の蟻害も5.6%ありました。

基礎断熱におけるシロアリ侵入経路
図:日経ホームビルダーより

さらに基礎断熱経由のシロアリ被害を受けた住宅を対象に、被害の範囲を尋ねたところ「基礎断熱材のみ」は14.2%にとどまり、「断熱材に加えて土台まで」の被害が24.1%、「1階柱などの構造材まで」被害が及んだケースが47.5%を占めています。さらに「2階以上まで」広がった住宅が14.2%もありました。

「1階まで」と「2階以上まで」の合計は6割を超えており、構造体まで波及するケースは非常に多く確認されることになりました。

基礎外断熱の方が断熱効果は高いのは分かりますが、シロアリが怖いので、基礎の内側に断熱材を貼るか、もしくは床断熱にする方が良いと考える工務店・設計事務所・ハウスメーカーも多く、これが住宅業界の常識となっています。

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