構造計算しない木造住宅!?

木造住宅

建築基準法は、建築物に関する「最低の基準」を定め、「国民の生命、健康及び財産の保護を図る」ことを目的としています。しかし、この最低の基準、つまり最低限の安全性すら備えていない欠陥住宅が多数作り出されているという現実があります。

例えば2016年の熊本地震では、築年数の浅い木造住宅が倒壊し、被害調査の過程で多数の施工不良などが見つかっています。

また、一部の工務店は、構造計算は「余計な手間」や「コスト増になる」と考えています。

一方でお客様からすれば、「建築確認済証」があれば、国から安全性に対するお墨付きが得られたと勘違いしていることもあります。

なぜ、地震等に脆弱な欠陥住宅が生み出されるのか、その要因には種々のものが考えられますが、その一つとして,建築基準法令による規制自体の不十分さが長年指摘され続けています。

構造計算しない木造住宅!?

例えば、木造2階建てで延べ面積が500m²以下のものは「4号建築物」と呼ばれています。

この「4号建築物」の木造住宅などは、手続き上、構造計算せずに仕様規定で安全性を確認することが認められています。つまり、実体的な特例として,構造計算の免除が認められています。

この仕様規定では、壁量などを簡易計算はしますが、部材や地盤・基礎は簡易な確認にとどまります。

さらに、4号建築物のうち建築確認が義務付けられている建築物に対する手続的な特例として、建築確認・検査手続における構造審査の免除ないし省略が認められています(いわゆる「4号特例」)。

認められる条件としては、

①「建築士の設計に係るもの」である場合、建築確認手続において構造安全性の審査が省略され(法6条の4第1項3号)、

また②「建築士である工事監理者によって設計図書のとおりに実施されたことが確認されたもの」である場合は、中間検査及び完了検査手続において構造安全性の検査が省略されます(法7条の5)。

これらの結果、確認申請書に構造関係の設計図書(軸組図、伏図等)を添付しなくてよくなります。

4号建築物の何が問題なのか?

一番の問題は、仕様規定でつくられた建物を構造計算すると、ある一定の割合でNGになり、形式的に仕様規定を充たしただけでは建築基準法令の要求する耐震性能を必ずしも確保できないことです。

特に木造在来軸組工法に関する仕様規定については、次のような指摘があります。

①壁量計算結果は、構造計算(許容応力度計算)によって要求される壁量の約6~7割程度しかない(専門的には2000年基準との壁量計算の乖離)。

②建築物の規模や形状等を無視し、単に火打梁を設置しただけで、水平剛性の確保ができていない。

③壁量配置の偏り、耐力壁や柱の上下階における不一致(壁直下率・柱直下率)の規定がない。

また、確認申請書に構造関係の設計図書(軸組図、伏図等の構造図面)を添付しなくともよいので、平面図・立面図程度しか作成せずにプレカット材を発注し、プレカット業者が作成するプレカット図面を構造図に代替させている実態があります。

さらに、大きな開口部や広い居室空間等といった垂直構面の耐力要素を減らし、さらに大きな吹抜やスキップフロア等といった水平構面の耐力要素も減らすなどの構造安全性に配慮のない設計をする設計者もいるため、このような建物は構造計算すれば必ずNG結果となります。

特例扱いの弊害ケース

実際に、この4号建築物を特例的取扱いすることによって、弊害が生じている実態があります。

例えば、関東・東海地方をエリアとするプレカット工場で加工された物件から、2階建て木造軸組住宅を無作為に100件選び、構造計算(許容応力度計算)を試みた結果、100件全てにおいてNGの結果が出たという調査報告もなされています(「プレカットを用いた木造軸組住宅(四号建築物)に関する研究 その4-許容応力度計算による結果-」日本建築学会大会学術講演梗概集(東海)2012年9月)。

また、2016年熊本地震では、新耐震基準導入以降で倒壊した建築物77棟について被害要因分析を行った結果、接合部が現行規定の仕様となっていない建物も確認されています(国土交通省住宅局「『熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会』報告書のポイント」。

さらに、欠陥住宅の訴訟では、仮に構造計算をすれば安全性に問題があるとしても、この点が直ちに設計上及び施工上の瑕疵にあたるとはいえないと述べられる状況もあります。

専門家でない一般消費者がこれらのことを理解するには難しい側面もありますが、適切な住宅メーカー、工務店、設計者選びをできるようになることしか、今のところ対策はありません。

2016年の熊本地震で証明されたように耐震等級3(許容応力計算もしくは品確法)を最低基準として、住み続けられる住宅を選んでください。

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