耐震等級3の計算方法の違い

木造住宅

建築基準法の遵守した住宅はあくまでも「百年に一度来ると言われている震度6強クラスの地震が発生した際に建物が倒壊、大破しない」ということなので、人命は守るけど、地震後住み続けられるかどうかは考えられていません。

だからこそ、大地震時の被害をより軽微にするため、つまり住み続けられる住宅にするためには、耐震等級3(基準法の1.5倍の耐震性能)が有効であることが常識になりつつあります。

この等級3の必要性は2016年熊本地震の被害を考えれば明らかです。

熊本地震被害

熊本地震では、新耐震基準(2000年 基準)の建物も被害を受け、激震地において19棟が全壊または倒壊しました。しかし、耐震等級3の住宅については、中破以上の被害は0件でした。

この耐震等級を示すために構造計算が必要になってきますが、その方法には大きく別けて「壁量計算(簡易な方法)」、「品確法住宅性能表示」、「許容応力度計算」の3パターンがあります。

耐震等級3の計算方法の違い

まず木造2階建て(4号建物)には、最低限守らなければならない技術基準(仕様規定)があります。その仕様規定で定められているのが、壁量計算、バランスの検討(4分割法)、N値計算などです。

簡単に言えば、地震に抵抗する壁の量とそのバランスをチェックして、耐震壁が有効に働くように金物を取り付けるということをします。これらは必ず守らなければならない最低基準(耐震等級1)になります。

これらと比べて、品確法住宅性能表示では、壁量・接合部・基礎・横架材についてより詳細な検討を行います。

建築基準法 仕様規定

品確法住宅性能表示 構造の安定

壁量

◆必要壁量の算出
 ・地震に関する必要壁量
 ・風に関する必要壁量
◆存在壁量の算出
 ・耐力壁存在壁量
◆判定

◆必要壁量の算出
 ・地震に関する必要壁量(積雪考慮)
 ・風に関する必要壁量
◆存在壁量の算出
 ・耐力壁存在壁量・準耐力壁存在壁量
◆等級判定
 ・耐震等級(等級2,等級3)

・耐風等級(等級2)

壁の配置

4分割法または偏心率

4分割法または偏心率(準耐力壁は考慮しない)

床倍率

なし

◆耐力壁線の設定・チェック(耐力壁線間距離≦8m)
◆必要床倍率を求める
◆平均存在床倍率を求める
◆等級判定
 ・耐震等級(等級2,等級3)・耐風等級(等級2)

接合部

◆「筋かい端部」と柱・横架材との接合部のチェック
◆「柱頭・柱脚」と横架材との接合部のチェック

◆「筋かい端部」と柱・横架材との接合部のチェック
◆「柱頭・柱脚」と横架材との接合部のチェック
◆「胴差の端部と通し柱」の接合部のチェック
◆「床・屋根の外周の横架材」の接合部のチェック

基礎

◆建築基準法の告示に基づく仕様のチェック

◆建物条件に基づいて、構造計算、またはスパン表より基礎の仕様を選択
①基礎形状の選択 ②基礎の各部寸法の選択 ③基礎の配筋の選択

横架材

◆建築基準法の告示に基づく仕様のチェック

◆建物条件に基づいて、構造計算による断面算定、またはスパン表より選択

品確法の「基礎」「横架材」に構造計算またはスパン表と書いていますが、大手住宅メーカーではスパン表によって決められています。

スパン表は、あらかじめスパン(長さ)や荷重条件などを決めて計算したシートで、そこから部材の断面を選びます。よくあるのがこの事前に計算したシートが間違っているということです。

例えばグレー本にある曲げ耐力を算出する時に、仕口の値(断面欠損)を記載そのまま使っているなど、知識不足や人為的なミスがあることがあります。

次の「許容応力度計算」では、荷重や地震に対して柱や梁などが十分に耐えられるかどうかを細部まで計算します。

計算方法
図:がいな家 田中工務店より

どのような時に許容応力度計算が必要?

この許容応力度計算は、手間やコストがかかるなどの理由によりほぼ実施されていません。

費用は品確法の耐震等級3の検討費用が10万前後に対して、許容応力度計算は倍程度かかります。

また、許容応力度計算すると耐力壁量が多くなりコストアップになるとの誤解が多くあるからです。

同じ耐震等級3でも「壁量計算で計算した耐震等級3」と「許容応力度計算で計算した耐震等級3」はもちろん別物です。

およそですが、品確法の耐震等級3は基準法2倍、許容応力度計算では基準法の2.5~2.7倍の壁量が必要です。

こう考えれば、品確法から許容応力度計算にすれば壁量は1.35倍必要になります。ただし、壁倍率の上限が7.0倍にできるので、仕様を変えることで5倍を7倍にすれば、1.4倍にすることができます。

つまり、壁の数を増やさなくても許容応力度計算で等級3とすることができる場合があるのです。

比較的整形で総2階の住宅などは「品確法の耐震等級3」で問題ないです。熊本地震でも被害のなかった建物に品確法の耐震等級3が含まれていました。

しかし、不正形で壁配置のバランスが悪いもの、梁のスパンが大きいもの(最大3.6m以上)、直下率が悪いもの、構造区画ができていないもの、いびつな吹き抜け、スキップフロアなどの構造計画が難しいものについては必ず許容応力度計算をするべきです。

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