木造住宅の寿命は?既往の研究から考えよう。

木造住宅

国交省では、中古戸建住宅、中古マンションなどについて、それぞれ取得、入居、リフォームした住宅の建築時期の調査しています。

平成30年度住宅市場動向調査
図:国交省「(2018年)平成30年度住宅市場動向調査」より

2018年の調査では、中古戸建住宅、中古マンション、リフォーム住宅は、建築時期が「平成7年(2005年)~平成16年(2004年)」の物件が3割程度で最も多くなっています。

築後年数の平均は、中古戸建住宅が20.4年、中古マンションが23.5年、リフォーム住宅が27.2年、民間賃貸住宅が17.2年となっています。

これらの構造区分(木造、RC造)などは明確になっていませんが、中古戸建住宅、リフォーム住宅、民間賃貸住宅は木造、中古マンションはRC造の比率が大きいと思います。

このような中、築後20年~30年程度の木造住宅を購入した場合の寿命はどのくらいなのか確認しましょう。

マンションの寿命は?既往の研究から考えよう。

工学院大学吉田教授、早稲田大学小松教授らは、木造住宅の平均寿命の調査研究成果を発表しています。

小松教授が2011年10月~11月に実施した最新の研究成果によれば、木造家屋の平均寿命は65.03年という結果となっており、1997年調査の43.53年から年数が大幅に伸びています。

木造住宅の法定耐用年数は22年に対して、実際に使用に耐えることのできる年数とは3倍近い乖離があります。ちなみに法定耐用年数は税法で使われる考え方で、実際に使用に耐えることのできる年数とは異なります。

しかし、どういった木造住宅が60年弱の寿命があるかはここからは分かりませんので、その他の調査研究などを確認してみましょう。

既往の研究による木造住宅の耐用年数

早稲田大学小松教授の調査も含め、既往の調査研究として以下が挙げられています。

期待耐用年数
表:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」より

住宅性能表示制度は、平成12年4月1日(2000年)に施行された制度ですが、劣化対策等級2で木造躯体の耐用年数が50~60年というのは上表からも妥当かなと思います。

ただし、木造住宅の難しいところは、腐朽菌による腐朽やシロアリによる蟻害などです。

仕上げや下地が経年劣化して、内部に水分が入ると、腐朽を中心とした生物劣化が進みますし、その湿気が要因でシロアリも寄ってきます。

そのため、躯体の耐用年数で寿命が決まるというよりも、仕上げ材などの耐用年数が寿命に大きく影響します。

仕上げ材などの耐用年数

仕上げ材などの期待耐用年数をまとめた表が以下になります。

表:国土交通省「期待耐用年数の導出及び内外装・設備の更新による価値向上について」より

外部仕上げは、最大40年、内部仕上げは最大25年が目安になります。木造躯体の寿命が60年とすれば、外部は1回、内部は2回程度のリフォームが必要になります。

リフォームするか、建て直し(新築)するか

早稲田大学小松教授らは、木造住宅の平均寿命の調査研究成果の発表と共に、木造住宅のライフサイクルコストを試算しています。

木造住宅のライフサイクルコスト
表:財務省・PRE戦略検討会(早稲田大学小松教授)「建物は何年もつか」

約100㎡の木造平屋戸建て住宅の場合で試算した結果、30年で取り壊す場合の生涯費用4,362万円、60年で取り壊す場合の生涯費用5,404万円となっています。

これを毎年の費用として見ると、30年の場合145.4万円/年、60年の場合90.0万円/年となり、長寿命化により、ライフサイクルコストは年間55.4万円(38%)安くなる結果になっています。

しかし、上屋は800万~1000万弱で建てられることを考えると、25~30年ごとに建替えて新築の家に住むという発想にならざる得ない住宅産業の現状があります。

欧米などの先進国と比較しても、日本の建築物の平均寿命は極端に短い傾向にあります。

建築物の平均寿命
表:財務省・PRE戦略検討会(早稲田大学小松教授)「建物は何年もつか」

欧米では、メンテナンスをして「建物の価値」を維持するのに対して、日本では「建物の価値」はなくなるからメンテナンスはしないという経年減価の観念があります。

古くても定期的にメンテナンスされていれば、価値が保たれ、そうした中で中古物件の再利用が進んでいくことが必要だと思います。

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