災害時に踏切が開かない

地震被害

国土交通省によると、開かずの踏切の数は全国で532カ所に上るとのこと。この開かずの踏切の数は都市圏が多く、東京都が245カ所と約半分を占めています。

鉄道が事故などで不通になった場合に、踏切が開かないという経験された方もいると思います。

踏切が開かない場合、一番困るのが災害時です。特に緊急輸送道路にある踏切が、全国各地にあることがわかっています。

緊急輸送道路は、地震直後から発生する緊急輸送を円滑に行うための道路で、防災拠点を相互に連絡する道路のことです。

災害直後から、避難・救助をはじめ、物資供給等の応急活動のために、緊急車両の通行する重要な道路ですが、鉄道の安全性が確認できないため、踏切が開かず、救急車などが通れないという事態が実際に起こっています。

それでは、実際のケースを確認してみましょう。

災害時に踏切が開かない

2018年の大阪北部地震では、震度6強を観測した列車が踏切の手前で緊急停止しました。

大阪北部地震
朝日新聞:緊急停車の列車乗客より

JR西日本によると、大阪北部地震の発生時に駅と駅の間で緊急停止した列車について、153本で乗客は約14万人だったと発表しました。

一部の列車が踏切の手前で緊急停車したため、最大で9時間閉まったままの状況になった踏切もありました。

そのため、けがをした女性の救助に向かっていた救急車が踏切を渡れず、到着まで、かなりの時間が掛かったケースが確認されています。

また、緊急輸送道路にある踏切が開かず救急車が通行できないケースもあることが全国各地で分かっています。

例えば、横浜市にある、JR横浜線の小机駅からおよそ200メートルにある踏切の周辺には広域避難場所に指定された競技場や救急病院もあります。

しかし、大地震で踏切の手前で列車が緊急停車した場合、運行が再開されない限り、踏切は閉じたままです。緊急輸送道路でも、救急車などが通れなくなってしまうのです。

急輸送道路を跨ぐ踏切
NHK NEWS おはよう日本:踏切や線路が渡れない 災害時の思わぬリスク

さらに、このような緊急輸送道路を跨ぐ踏切が全国で約1500カ所あり、都市部に集中していることが分かっています。

このような事態を受け国は、法律を改正し、災害時には緊急輸送道路の踏切を速やかに開けられるよう、あらかじめ手順を決めておくことを鉄道会社などに義務づけました。

しかし、災害時に一度閉まった踏切を開けることは、鉄道会社にとって難しい側面があります。その大きな理由の1つが、現場で対応できる作業員の数が多くないということです。

特に都心部では、対象エリアにある踏切や信号設備の数が多く、災害時には現場にいって被害が出ていないか確認する必要があります。しかし、そもそも限られた人員でどこを優先的に再開させるのかとう問題などが生じますし、夜中などに地震に見舞われた場合には、人員の移動も難しくなります。

開かずの踏切がある理由

ちなみに、開かずの踏切とはピーク時の1時間に、遮断される時間が40分以上になる踏切のことです。

開かずの踏切は、多数の列車が通過するため発生します。そもそも列車の本数は人や貨物を運ぶことを優先しているので、わざわざ踏切の都合を考慮せずに決められています。

踏切に到達する時刻を決めてしまえば、多くの路線でラッシュ時の混雑はいっそう激しくなります。だから開かずの踏切とならないように、列車の運転時刻や本数を決める工夫をするわけがありません。

2021年4月、国土交通省は2025年度末までに改良すべき全国93ヵ所の「開かずの踏み切り」を公表しました。

踏切の交通量などを勘案したうえで、「一日当たりの踏切自動車交通遮断量が五万以上のもの」「一時間の踏切遮断時間が四十分以上のもの」「直近五年間において二回以上の事故が発生したもの」など、12の項目に1つでも当てはまれば指定の対象となっています。

とくに早急な改善が必要とされる踏切(駅)は以下です。

  • 西武新宿線・野方駅(東京都中野区)ラッシュ時間 午前7−9時、午後4−6時
  • 南武線・平間駅(神奈川県川崎市)ラッシュ時間 午前8−9時
  • 大井町線・戸越公園駅(東京都品川区)ラッシュ時間 午前7−8時、午後6時
  • 京王線・千歳烏山駅(東京都世田谷区) ラッシュ時間 午前7−8時
  • 京王線・柴崎駅(東京都調布市) ラッシュ時間 午前7−9時、午後5−6時
  • 京王線・下高井戸駅(東京都世田谷区) ラッシュ時間 午前7−9時、午後5時
  • 京王線・つつじヶ丘駅(東京都調布市) ラッシュ時間 午前7−8時

その他、踏切道改良促進法に基づく法指定箇所

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