2022年5月1日未明に発生した横浜市中区打越の土砂崩れについて考えたいと思います。
JR石川町駅から徒歩10分程度の住宅密集地で土砂崩れが起きました。写真では家の基礎部分から崩壊していることが分かります。土砂崩れの幅は、約10m、奥行き約3メートルにわたって崖が崩れています。

県によれば、この崖地は2021年3月に土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)に指定されており、ハザードマップ上でも土砂災害特別警戒区域にあることが分かります。

ちなみに土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)は、土砂災害警戒区域(イエローゾーン)のうちで、建築物に損壊が生じ、住民等の生命または身体に著しい危害が生ずるおそれのあると認められる土地の区域です。
また、横浜市のホームページでは災害履歴を確認することができ、中区では土砂災害の災害履歴は確認できませんでした。

都市型崖崩れの原因
土砂災害は全国で年間平均1,000件を超える件数が発生し、そのうち神奈川県では、年間平均71件の土砂災害が発生しています(2022年4月現在)。
今回の崖崩れの原因は、前日に降った50ミリを超える雨量で地盤が緩んでいたことと、崖の変状が重なったことです。また写真でも分かるように非常に傾斜が急で高さが高いことも挙げられます。
特に土砂災害の多くが、長雨や急な強い雨の時に発生しており、参考として「1時間で20mm以上の雨」又は「連続した100mm以上の雨」を記録した日は特に注意が必要だと考えられています。
また、このような急傾斜が崖は適切に地盤が補強されていなければ、少しずつ劣化し地盤は弱くなっていきます。近隣住民の話からも、「小石がパラパラ落ちて怖い」と異変に気付いていたようです。このようなコロコロと小石や土が落ちてくるのは崖崩れの典型的な前兆現象の一つです。
空き家で状況把握できていない崖
このような災害が起きてしまった場合には、民法上の賠償責任は土地所有者にあります。
特に全国で空き家が問題になっており、土地建物所有者自身が遠方におり、その中で全く現状把握ができていない方も一定数いると考えられます。さらにレッドゾーンやイエローゾーンの指定範囲は年々拡大しており、指定されたことを知らない土地所有者も一定数いると考えられます。

もちろん、指定された場合には、都道府県知事は、建築物の所有者、管理者または占有者に対し、特別警戒区域から安全な区域に移転するなどの土砂災害の防止・軽減のための措置について勧告できることになっていますが、あくまで強く勧める程度のものであり、その対応については所有者に委ねられているのが現状です。
例えば、都心から30〜40km圏内にある戸建空き家予備軍は以下のようになっています。
市区町村名 | 戸建の空き家予備軍 | 戸建の空き家予備軍率 | |
1位 | 横浜市栄区 | 7,160 | 32.2% |
2位 | 千葉市若葉区 | 12,050 | 31.0% |
3位 | 我孫子市 | 10,170 | 30.7% |
4位 | 横浜市港南区 | 11,350 | 29.4% |
5位 | 横浜市金沢区 | 10,210 | 28.9% |
本来は取るべき措置を行わず、このような災害に巻き込まれないためにも、また巻き込まないためにも必要な知識をしっかりと身につけて頂ければと思います。