火災で燃え広がるのはなぜか。過去の大規模火災から考える。

火災被害

2016年12月22日に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災は、焼損棟数が147棟に及び、地震火災を除き、1976年の酒田大火以来の大火災となりました。

近年の防火まちづくりは、特に1995年の阪神淡路大震災以降、大都市を中心とした密集市街地対策が主となってきましたが、この火災により全国の地方中小都市でも強風による延焼火災が起こりうることを示しています。

火災で燃え広がるのはなぜか。過去の大規模火災から考える。

糸魚川市における大規模火災
写真:建築研究所「新潟県糸魚川市における大規模火災に係る現地調査報告(速報)」

新潟県糸魚川市にある1軒のラーメン店から発生した火災が、風速10m/sの南風によって北方向に大きく燃え広がりました。

裸木造が密集
図:建築研究所「新潟県糸魚川市における大規模火災に係る現地調査報告(速報)」

この糸魚川大火では、古い木造建物が多くあり、防火対策が施されていない、いわゆる裸木造が密集していたことと、強風による飛び火が複数箇所で生じていたことが要因となり、大規模の市街地火災となりました。

強風による飛び火

国土技術政策総合研究所と建築研究所が発表した「平成28年12月22日に発生した新潟県糸魚川市における大規模火災に係わる現地調査報告」では、飛び火による屋根からの焼損とみられる木造の建物が15ヵ所あったと報告されています。

飛び火
図:建築研究所「新潟県糸魚川市における大規模火災に係る現地調査報告(速報)」

この飛び火による延焼は、巨大な火の玉が屋根を突き破って燃え拡がるのではなく、むしろ危険なのは小さな火種となる火の粉です。

古い木造で、引っ掛け桟瓦の場合、強風などで瓦が僅かに浮き隙間が生じます。

ここに大きな火種が着床し瓦などに引っ掛かると、この僅かに生じた瓦の隙間から火の粉が入り込むとともに、強風によって送り込まれた空気によって野地板と瓦の間の空間でかまどのように炎が大きくなり、野地板に燃え拡がりました。

野地板に燃え拡がり
図:日経ホームビルダー「屋根への飛び火 延焼は大丈夫?」より

実際にこの延焼メカニズムを実験で確認しています。

延焼メカニズム
図及び写真:建築研究所「新潟県糸魚川市における大規模火災に係る現地調査報告(速報)」

古い木造(昭和初期仕様)の屋根瓦の脆弱性と比較するために現代仕様の試験体による実験も実施しています。

現代仕様では瓦が密着して隙間が小さいため、風速10m/秒でも瓦の下に火の粉が入りにくく、屋内まで燃え抜けることはありませんでした。

糸魚川大火から考える木造密集地域で起こること

関東大震災で焼けて亡くなった人は9万人です。糸魚川大火と同じく秒速10mほどの風が火災を拡大させました。

糸魚川大火では、防火対策をしていない裸木造建築が飛び火によって燃え上がり、延焼を拡大しました。こうした古い木造建物は、日本全国数多く街中に混在しています。

このような木造建築が密集する市街地で防火対策をするには、防火建築を並べて延焼遮断帯をつくる必要があります。

延焼遮断帯
図:糸魚川市「大火を防ぐまちづくりプロジェクトHP」より

このようにして飛び火が出る前に消火できる建物を増やしておけば、今回のような大火になる前に延焼を食い止められます。街全体を火災に強いつくりに変えていくことが必要です。

また、近隣での火災時には建て主が屋根に水を掛けるなどの防火意識を持っておくのも重要になります。

仮に火災を消せない場合でも延焼を遅らせる効果が望める場合もあります。ただし、火災を消火できず身の危険を感じた場合、消火活動をやめて、命を最優先に避難しましょう。

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