過去に日本で起きた震度6以上の地震では、わずかな例外を除き、大規模火災が発生しています。大規模火災で怖いのは建物が壊れない「震度6」と「火災旋風」です。
また、市民による初期消火の重要性についても解説します。ぜひご覧ください。
地震火災で怖いのは震度6と火災旋風。火災危険度マップを確認しよう。
防災の第一歩として、まずはご自身の住む地域の火災危険度がどの程度なのかを確認しましょう。
例えば、東京都では火災危険度を測定して色分けした「火災危険度マップ」を公表しています。
危険度の高い地域の特徴は、火を扱う店舗、工場が多いこと、老朽化した木造建物が密集しており、道路や公園などが少ないことです。
東京都は、首都直下地震の切迫性や東日本大震災の発生を踏まえ、東京の最大の弱点である、木密地域の改善を一段と加速するため、「木密地域不燃化10年プロジェクト」に取り組んでいます。
この取り組みで東京都は「不燃化特区」を定め、老朽建築物の除却や建替え等、各区が推進している不燃化の取組に対し、支援を行っています。 東京都以外にお住まいの方は、国土交通省では、「わがまちハザードマップ」で火災被害マップ公表状況をまとめています。
インターネットで公表している地域では、火災危険度をマップ上で確認することができます。
例えば、神奈川県茅ケ崎市では、「茅ヶ崎市クラスター分布図」を確認することができます。
茅ヶ崎市には500棟以上の建物数で構成されたクラスターが16箇所存在し、火災になり、甚大な被害を被ることが予想されています。
「震度6」がもっとも燃えやすい
兵庫県立大学防災教育研究センター長の室崎益輝氏によると「直下型地震の場合には津波よりも火災が怖い。特に震度6前後での火災が危険」とのこと。
震度6では建物が崩壊していない可能性が高いため、建物内で空気の流通がはかられ、激しく燃えやすくなります。関東大震災でも、全壊率の高かった鎌倉や小田原では意外にも火災被害は少なかったです。
地震時に燃え広がると、延焼スピードは時速200~300mにもなります。火災が時速100mを超えると逃げ切れず火災に巻き込まれる人がでます。
阪神・淡路大震災当時はほぼ無風で、延焼スピードも時速40m程度でした。人も逃げることができ、亡くなった焼死者も500人ほどと少ないです。
しかし、関東大震災で焼けて亡くなった人は9万人です。台風が近くにあり、秒速10mほどの風が火災を拡大させ、激しく燃え広がった地点は時速800mといわれています。
関東大震災で大きな火事が起きたのは今の墨田区です。現在の新宿から吉祥寺への市街地地図と比べると、今のほうが木造住宅が密集し、面積もはるかに広くなっています。
関東大震災の火災の密度は間隔が500mほどでした。そこで延焼速度が毎時200mとすると1時間で両サイドから燃え広がり、残りは100m以下となります。すると間を通り抜けられなくなり、火に囲まれて多くの人が亡くなることになります。
火災旋風とは
大規模な市街地火災では、その猛烈な風によって急速な延焼を引き起こしたり、火炎を含んだ竜巻状の渦である「火災旋風」に発展したりすることがあります。
1923年の関東大震災では、人々が避難していた陸軍被服廠(工場)の跡地であった空き地に旋風が襲来し、この場所だけで約3万8千人もの方が亡くなりました。
この渦状の火災旋風が火災地域を通過する時、火柱状になり、火災旋風の風速は秒速100mにも達します。
火災時に発生する旋風のなかでも、横風が吹いている条件での火災域の風下に発生する旋風はその報告例が非常に多く、被服廠跡を襲った旋風も当時の証言や気象条件、火災状況などからこのタイプのものであった可能性が高いと考えられます。
この他にも2013年3月、ハンガリー首都ブダペストの郊外で大火災が起き、燃え盛るプラスチック加工工場の上空に火災旋風が発生しました。
また、下記の動画は2010年米国ハワイ州で発生した火災旋風のものです。
これらの火災旋風の発生条件や発生メカニズムはいまだ解明されておらず、その対策も全くとられていないのが現状です。
初期消火の重要性
震災時は119番通報がつながらず、道路も塞がり、消防隊が到着するころには、手に負えない規模にまで火災が拡大する可能性があります。
そのため阪神・淡路大震災では、火災現場に居合わせた地域の住民同士が連携して消火活動を実施しました。
初期消火を実施した146件の火災のうち、消火活動が有効だった事例は58件と実に4割近くの火災が地域住民の手で消火に成功しており、市民による初期消火活動の重要性が示されています。
火災は火が小さいうちに、いち早く消火するというのが大原則です。木造家屋内で発生した火災は進行が早く、火災発生から2~5分経過すると天井まで届くほどになります。
地域住民で対応できる火災の規模は、建物の天井に火が届くまでの小規模な初期段階(2~5分程度)に限られたものとなります。
早ければ早いほど、初期消火の成功率が高くなるので、すぐに消火活動できるものから使用することが望ましいです。
火災を消せない場合でも延焼を遅らせる効果が望める場合もあります。ただし、火災を消火できず身の危険を感じた場合、消火活動をやめて、命を最優先に避難しましょう。