東日本大震災と同様に広範囲にわたって大規模な津波をもたらす南海トラフ巨大地震は、「いつ来てもおかしくない」と言われています。
しかし、過去の南海トラフ地震の発生間隔から見ると、実はそこまで切迫した状態ではないという見解もあります。
では実際に、南海トラフ地震の発生は切迫した状態なのか。また今後、発生が予見される地震はあるのかを確認しましょう。
南海トラフ地震はいつ!?。地震の前には内陸地震が起こる!
南海トラフ地震は、南海トラフ及びその周辺の地域における地殻の境界を震源とする大規模な地震をいい、この中には南海地震や東南海地震、東海地震などが含まれます。
歴史的に見て、南海トラフ地震は比較的規則正しい間隔で発生してきた地震です。
鎌倉時代の1361年に起きた正平(康安)南海地震から数えても現在までに6回発生しており、その発生間隔は137年(明応地震)、107年(慶長地震)、102年、147年、90年です。
最も新しい南海トラフ地震である1944年の昭和東南海地震と1946年の昭和南海地震は、その前の1854年に発生した安政東海・南海地震から90及び92年後に起きており、これが最短の発生間隔になっています。
また、過去の地震は、東南海地震や東海地震と同時、または数十時間から数年の時間差で発生したことが知られています。
そして現在は、昭和東南地震(1946年)から74年を迎え、最短の発生間隔に照らし合わせても、まだ発生までに時間があると考えられています。
南海トラフ地震の前に内陸地震が発生する
これまでの歴史から、南海トラフ地震が発生する前の数十年間と発生後の数年は内陸での被害地震が明らかに増えることが分かっています。
前回の昭和東南海地震(1944年)の前には、1943年に鳥取地震(マグニチュード7.2)が起き、東南海地震の1カ月後には1945年の三河地震(マグニチュード6.8)が起きています。
同じく昭和南海地震(1946年)の2年後の1948年には、福井地震(マグニチュード7.1)も起きています。これらはすべて内陸地震で、どの地震も1000人以上の方が亡くなられています。
また、2011年東北地方太平洋沖地震が発生する2日前には、マグニチュード7.3、最大震度5弱の地震が三陸沖で発生しています。
このようにマグニチュード7クラスの地震が発生した後は大きな警戒が必要です。
内陸地震の予測は難しい
内陸地震を引き起こす震源断層で存在が把握できていないものが2割程度あり、さらにその活動履歴から長期的に評価が可能な断層は全体の半数以下に限られています。
また、「断層がない」といわれている場所であっても、地下に震源断層が潜んでいる可能性も否定できません。
断層についての詳しい説明は以下をご覧ください。
特に関東は地下で三つのプレートがせめぎあう世界的にも珍しい複雑な場所です。
陸のプレートとフィリピン海プレートとの境界付近、フィリピン海プレート内部、フィリピン海プレートと太平洋プレートとの境界付近、太平洋プレート内部など、どこが震源になるかは予測できません。
政府の地震調査委員会は、南関東でマグニュード7級の地震が今後30年間に発生する確率を70%と予測しています。
大都市の直下で起これば阪神・淡路大震災のような災害になります。人口が過度に集中した都市圏で何が起こるかは明らかです。
30メートルを超える大津波が襲来?
南海トラフを震源とする巨大地震で、死者が最大32万人に達するとの推計が公表されています。その中で高知県、静岡県などは30メートルを超える大津波が襲来するという情報もあります。
これは、「千年に一度」の最大級地震が起きた場合の数字で、最悪のシナリオで計算されたものです。
もちろん最悪のシナリオは想定しておく必要はありますが、こうした津波が発生する確率は、それほど高くありません。
津波の大きさと発生する確率で参考となるのが、2020年1月に政府の地震調査委員会が発表した、将来の発生が懸念される南海トラフ地震で西日本から東日本の各地を襲う津波の確率です。
この評価では、30年以内に70~80%の確率で起きるとされるM8~9クラスの「現実的な想定」を示しています。
対象となる津波は最悪のシナリオよりも低いですが、発生すれば大きな被害をもたらします。3メートル以上の津波では木造家屋の全壊や流出が相次ぎ、5~6メートルの高さを超えると被害が急増することが過去の浸水被害からも分かっています。
最悪のシナリオによる避難行動が最も重要ですが、10メートルを超える津波が襲来すると考えられる場所はそれほど多くはありません。
南海トラフ地震は震源域が太平洋沖で、地震発生から津波襲来するまでは少し時間があると考えられます。地震が起こったら素早く逃げ続けてください。