2020年7月30日午前9時36分、東京都心から500キロ以上南にある鳥島の近海を震源とする地震があり、気象庁は同38分、関東甲信や東海、東北の一部の広い範囲を対象に緊急地震速報を発表しました。
しかし、震度1以上を観測する地震はなく、気象庁は誤報であったと認め謝罪しています。
なぜ、このような誤報が起こるのか、過去の誤報から考えてみましょう。
緊急地震速報で誤報!地震が起こらないのはなぜか。
2008年から緊急地震速報(警報)は運用されており、2点以上の地震観測点で地震波が観測され、最大震度5弱以上が予測される場合、震度4以上の揺れが想定される地域に発令されます。
この地震観測点は全国約690箇所の気象庁の地震計・震度計に加え、防災科学技術研究所の地震観測網(全国約1,000箇所)を利用しています。
多くの観測点のデータを活用することで、地震が起きたことを素早くとらえることができます。
2008年運用開始からの緊急地震速報(警報)発表状況は226回(2020/7/31時点)となっています。
このうち表の中の「観測最大震度」がない2020/7/30、2013/8/08、2009/8/25はいわゆる誤報です。
緊急地震速報で誤報(過去の誤報)
2020/7/30の誤報は、速報が出る前の午前9時36分ごろ、鳥島近海を震源とするマグニチュード5.8の地震が発生しており、この地震をシステムが処理する際に、震源を本来と異なる房総半島南方沖に決定し、マグニチュードを過大に推定したとしています。
また、2013/8/8には近畿を中心に西日本と東日本の広い範囲で強い揺れが観測されるという緊急地震速報が発表されましたが、その後、震度1以上の体に感じる揺れは観測されませんでした。
このときは、三重県沖の海底に設置されている地震計で「ノイズ」と呼ばれる電気的な雑信号が原因で実際より強い揺れを予測して速報が発表されていました。
これ以外にも、2018/1/5に、ほぼ同時刻に茨城県沖(震度3)と富山県西部(震度3)で起きた2つの地震を同一の大きな地震と誤って処理して、茨城県南部で震度5強程度が予想されるとして速報を出しています。
2011年東日本大震災が発生した後、このような各地で頻発した複数の地震を大きな地震と見誤って緊急地震速報が発表されたケースが相次ぎました。
また、2016/8/1には関東地方を震源とするM9.1、最大震度7という、震災レベルの緊急地震速報が気象庁から発表されましが、実際は地震ではなく、落雷によるノイズによるものだったため、間もなく該当の情報が取り消されています。
これらの示すように緊急地震速報は、地震発生直後のわずかな時間で地震の規模などを推計するため過去にも、地震の規模や大きさを実際よりも大きく予測して発表されたケースや、落雷、ノイズ等による誤報のケースがありました。
しかしながら、計226回の警報で誤報は数回の僅かですし、心構えができるという点でも有用であると思います。
地震より後に緊急地震速報(警報)
地震が発生すると、震源からは揺れが波となって地面を伝わっていきます。この波にはP波とS波があり、P波の方がS波より速く伝わる性質があります。
一方、強い揺れによる被害をもたらすのは主に後から伝わってくるS波です。このため、地震波の伝わる速度の差を利用して、先に伝わるP波を検知した段階でS波が伝わってくる前に危険が迫っていることを知らせることが可能になります。
ただし、この波の解析や伝達に一定の時間(数秒程度)がかかるため、内陸の浅い場所で地震が発生した場合などは、震源に近い場所への緊急地震速報の提供が強い揺れの到達に間に合いません。
このように緊急地震速報が間に合わない場合や、猶予時間がわずかしかない場合があるため、日頃から地震への備えが大切です。