2020年8月11日、米グーグルはアンドロイドを搭載した世界中のスマホ(推定20億台以上)を使って、地震発生を検知する巨大ネットワーク「Android Earthquake Alerts System」を発表しました。
地震検知と言えば、日本では各地にある地震計からの情報をもとにした緊急地震速報の仕組みがあります。
しかし、発展途上国などは、地震計や通知の仕組みの整備など、インフラを整えるのにコストがかかり、同様の仕組みを持つ国や地域は多くはありません。
それでは、グーグルのスマホ地震検知ネットワークと日本の緊急地震速報の仕組みをそれぞれ見て行きましょう。さらに日本の最先端の地震観測技術についても紹介します。ぜひご覧ください。
Googleのスマホ地震計と日本の緊急地震速報の違いは何か
アンドロイドOSのスマホには、極加速度センサーが内蔵されています。
このセンサーは、スマホの画面の縦横の向きの切り替えや、ゲームする時に、スマホの動きを把握してくれる部品です。この加速度センサーによって、地震の揺れを検知することができます。
地震が起きると、震源地に最も近いスマホから「揺れ」が伝播します。するとスマホはその信号を、グーグルの地震検知用のサーバーに送信します。
その集まったデータで、地震が起きているのか、どの程度の規模なのかを判断します。
つまり、自分の持つスマホが小さな地震計になり、他の数百万台のスマホと結合して世界最大の地震検知ネットワークを形成して、リアルタイムアラートが受け取れるようになります。
このアラートによって、危険な落下物から身を守ることができるし、ある研究では地震による負傷者の50%は防ぐことができるとの予想もあります。
Googleのスマホ地震検知ネットワークの仕組み(やや専門的)
グーグルのスマホ地震検知は、ほぼ日本の緊急地震速報のシステムと同じです。日本の各地にある地震計が、スマホになったと考えればよいです。
まず、地震が起きると、破壊力はそこまで大きくない「P波」が、先行します。それに続いて、より大きな衝撃をもたらす「S波」がやってきます。
スマホの加速度センサーでも、この2つのタイプの波を見分けて検知することができます。
ある地震を検知するために必要なスマホは数百台でよく、スマホの位置が分散しており、かつ台数が多いほどに、より精密に、より速く、より正確にマグニチュードなども把握できます。
しかし、日常的にスマホを使っているときの揺れと、地震による揺れを、どのように見分けるのか。そこに、地震検知アルゴリズムがあります。
このアルゴリズムによって、膨大なスマホが感知する「揺れ」のデータから、地震とは関係のない大量のノイズを取り除くことができます。
現時点では、実用段階ではなく、2021年からこの地震検知システムを使って、地震の多い地域に住んでいる人々のスマホにリアルタイムアラートを配信する予定となっています。
日本の緊急地震速報
日本の緊急地震速報も同じく、P波の方がS波より速く伝わる性質を利用しています。
この波の伝わる速度の差を利用して、先に伝わるP波を検知した段階でS波が伝わってくる前に危険が迫っていることを知らせることが可能になります。
また、全国約690箇所の気象庁の地震計・震度計に加え、国立研究開発法人 防災科学技術研究所の地震観測網(全国約1,000箇所)を利用しています。
このように多くの観測点のデータを活用することで、地震が起きたことを素早くとらえることができます。
北海道から関東地方の海に多く黄色の観測点があります。これは、日本海溝海底地震津波観測網(S-net)と呼ばれる海底にある観測装置です。
日本海溝海底地震津波観測網(S-net)とは
海底に観測装置設置し、それを海底ケーブルで接続して、リアルタイムに24時間連続で観測データを取得しています。
観測装置は150カ所に設置、ケーブル全長は約5,500kmになります。
このように日本では、地震や津波が起きた後に、より早く、正確に地震や津波の情報を得るために、海溝型地震の震源により近い場所である海底に、リアルタイム観測を行う地震計と津波計の整備を行っています。このような分野では、日本は世界最先端と言えます。
この観測網によって、地震研究の新しい知見(スロー地震)も生まれています。
このスロー地震は巨大地震の前兆になるとも言われており、解明が進めば、巨大地震の被害を食い止める存在になるかもしれません。
以上のように、日本のようにハードウェアによる地震観測やグーグルのようにスマホを利用した地震観測など様々な技術開発によって、少しでも地震被害が少なくなることを期待しています。
特にグーグルの膨大なスマホを使った、地震検知ネットワークは、とりわけ既存のインフラがないところで大きな価値を発揮することになります。