全ての窓がLow-E遮蔽タイプになる理由

住まいの環境

前回のブログでは、お金をかけずに快適な住宅にするための方法を書きました。

夏の直射日光を遮ることができる外部シェードは、非常に効果が高いです。また窓の性能を組み合わせることでより快適な住宅になります。

その窓の選び方の基本は、南面は日射取得、東西北面は遮熱です。北面を遮熱とするのは夏の3時以降7時くらいまで西日が当たり続けるからです。

窓の選び方
図:YKKAP「快適な窓辺のつくり方

この窓の性能は、サッシとガラス部分に分けられますが、今回はガラスに注目しましょう。

全ての窓がLow-E遮蔽タイプになる理由

ペアガラスの性能

多くの住宅メーカーの窓ガラスは「複層(ペア)ガラス」「Low-E複層ガラス」が標準仕様になっています。さらに「Low-E複層ガラス」には断熱タイプと遮熱タイプがあります。

ペアガラスの性能
図:YKKAP「快適な窓辺のつくり方

「断熱タイプ」は、しっかり断熱しながらも太陽の暖かさを取り込んで室内を暖かく保ちます。

「遮熱タイプ」は、断熱はもちろんのこと、明るさを取り込みながらもガラスに当たる日射熱を遮り、室内を涼しく保ってくれます。

ここで質問を良く受けるのが南面窓を「ペアガラス」にするか、「Low-E遮熱タイプ」するかです。夏の日差しは、「Low-E遮熱タイプ」を選んでも、輻射熱の影響があり、暑さの体感はそれほど変わりません。

そのため究極的には窓の外側で遮熱するしかありません。「外部シェード」+「単なるペアガラス」はコストメリットが大きいです。また、サッシ枠がアルミであれば、樹脂サッシへ変更することまずお勧めします。

この「外部シェード」は夏の日差しを遮るのに最も適していますが、多くの住宅メーカーは「外部シェード」を標準仕様にしていません。

また、本来であれば各方位面に合わせて窓の仕様を決めるべきですがそれもせず、安易に「Low-E遮熱タイプ」として、冬の寒さの原因になるケースが多いです。それには理由があります。

「外部シェード」が使われない理由から、なぜ「Low-E遮熱タイプ」を採用してしまうのかを見てみましょう。

外部シェードが使われない理由

省エネ法では、断熱性能はUA値で規定され、日射遮蔽性能はηAC(冷房期の平均日射熱取得率)が指標になっています。

ηACは小さいほど室内に侵入する熱量が少ないことを表し、例えば6地域であればηACは2.8以下となっています。しかし、この基準値さえクリアしていれば涼しい住宅になるという保証はどこにもありません。

まず、現在の省エネ法では、日射遮蔽部材が「和障子」と「外ブラインド」しか認められていません。そのためカーテンや内ブラインドをはじめ、すだれやよしずなど日射遮蔽手法は多く存在し、その効果は大きいにもかかわらず、省エネ基準上は認められていません。

省エネ基準変更点

これらはH11年省エネ基準からH25年基準になる際に削除されてしまいました。理由は図面で確認できないし、本当に設置して使われているか分からないからです。

しかし外付けブラインドはかなり高価なので、夏のηACを下げるために窓のガラスを「Low-E遮蔽タイプ」を選んでしまいます。しかし冬の日射取得も少なくなるため、結果的に暖房負荷が大きくなります。 

また、高断熱住宅のように断熱が強化されるほど、室内の熱は逃げにくくなるため、室内に侵入した日射熱による室温の上昇は大きくなります。

しかし、省エネ法やHEAT20の外皮性能グレードでは、断熱レベルによらずηACの基準値は一定になっています。

つまり、断熱だけ強化すれば、夏には日射による室温上昇が大きくなります。だから、それを防ぐため安易に「Low-E遮蔽タイプ」を選んでしまいます。

お客様からしても、日射遮蔽強化なしの高断熱住宅は夏は暑いと言われてしまうので、夏は遮熱が良いと考えてしまっているのです。

等時間日影図でチェックしましょう

ほとんどの住宅メーカーや工務店で配置計画をする時に陽当たりのチェックをしていません。等時間日影図で1日に当たる日照時間をひと目で理解することができるのにです。

日当たり君
図:ホームズ日当たり君

最近は上記のように3Dで確認できるフリーソフトも充実しているので、日照時間を確認して、間取りや窓位置を決めるだけでなく、断熱・遮熱への影響を考えて下さい。

高断熱高気密住宅では、冬に暖かい、夏も涼しいがあたり前です。しかしηACの基準値があっても、それが涼しい住宅になるとは限りません。省エネ法の制約にとらわれることなく、年間を通して快適な住宅を目指すべきです。

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