冬は日射を取り入れ、夏は遮蔽するのが基本

住まいの環境

冷房よりも暖房に多くのエネルギーを使う関東などのエリアでは、関東以西で得られる日射をうまく利用することで暖房費を削減することができます。冬の日射は、Q値が1.4程度までなら、多く取得した方が暖房費の節約になります。

冬はできるだけ日射を取り入れ、夏は日射を遮断するという工夫によって快適な住まいを実現する方法を考えてみましょう。

冬は日射を取り入れ、夏は遮蔽するのが基本

太陽の動きと日射熱の関係

まずは、季節ごとの太陽の動きを確認して、各面に当たる日射量の推移を整理しましょう。

下図のポイントは、夏は南中時の高度が高くので南面にはそれほど日が当たらないことと、逆に冬は南中時の高度が低いので南面の窓はよく日が当たることです。

太陽の動きと日射熱の関係
図:日本経済新聞社「熱対策やっかいな屋根 高反射塗料などで多層防衛」より

日射量を見ると、夏至では200W/㎡しかなく、冬至では570W/㎡あります。各方向別の日射量を見てみましょう。

壁に入射する日射量
図:夏至、春分・秋分、冬至に各方位の壁に入射する日射量

夏至では、東西面に強い日射による温度上昇をもたらす一方、南面には日があまり当たりません。そのため東西面は日射を減らすための防御が基本となり、南面は適度な庇で日射を防ぐことです。

冬至では、南面はかなりの日射があるので、しっかり日射を取り入れることが重要です。この南面の日射遮蔽と日射取得のバランスが重要になります。

日射遮蔽の効果(夏至)

次に日射遮蔽の効果を普通ガラスとLow-Eペア(遮熱型)で比較してみました(日射熱取得率)。

単板ガラス

Low-E ペアガラス(遮熱型)

88%

40%

レースカーテン

56%

33%

内付けブラインド

46%

30%

障子

38%

26%

簾(すだれ)

30%

20%

外付けブラインド

19%

11%

サンシェード

18%

13%

建物内側に取り付けるカーテン等で日射を遮蔽したとしても、窓を通過してカーテン等の表面に当たった熱のほとんどは室内に放熱されてしまい、室温が上昇してしまいます。

一方で、外付けのものは外部で日射を遮蔽するので、カーテン等よりも遮蔽効果が非常に高く、日射熱を約80%遮れます。

このように内側に取り付けるカーテンやブラインドに比べて外付けのブラインドの効果が圧倒的に高いのが分かります。外付けブラインドは住宅メーカーでは割高なオプションになりますが、サンシェードは安価です。ただし強風時には使用できません。

この中で簾(すだれ)は季節の切り替えが容易で、日射遮蔽効果が大きく、かつ安価で、住宅としては簾をぶら下げるフックだけを用意しておけばよいので大きな費用が掛かることはありません。

すだれの効果
図左:NPO法人栃木エコロジー協会 http://can-inc.net/images/project/pdf/14.pdf
図右:マサさんのDIYブログ https://ameblo.jp/s1062700/entry-12506009765.html

開口部から熱が流入しないようサッシの性能を上げようとすると大変コストが高くなってしまいますが、簾などの日射遮蔽スクリーンはコストを抑え手軽に設置できます。

省エネ基準の課題(冷房期の平均日射熱取得率ηAC値)

省エネ基準には、ηAC値(5地域3.0、6地域2.8)があります。これは夏に建物がどれだけ日射熱を受けるかという目安の基準です。ηAC値は小さいほど日射遮蔽ができていることになります。

しかし、日射遮蔽効果の高い簾(すだれ)などの取り外しできるようなもの、つまり図面で確認できない日射遮蔽の付属部材はカウントできません(和障子と外ブラインドのみOK)。

外ブラインドなどは、付けても夏だけでなく冬も閉めていると評価され、冬の日射取得では不利に判定されてしまいます。そのため、軒・庇や外ブラインド以外で値を下げるには、窓ガラスを全方位一律で「日射遮蔽型」にしてしまうのが最もお手軽になってしまいます。

しかし、冬には日射取得量が大きく低下してしまうため、熱収支が大幅に悪化します。冬の日射取得が重要となる南面には、日射取得型ガラスの採用が必至です。

ガラスタイプ別の窓の「熱収支」※中空層幅12㎜

サーモスⅡ-H

ガラスタイプ

熱貫流率

(Uw)

日射熱取得率

(ηw)

熱収支

(Wh/日)

ペアLow-Eアルゴン

日射取得型

1.78

0.51

2930

日射遮蔽型

0.32

910

ペアLow-E

日射取得型

2.04

0.51

2670

日射遮蔽型

0.32

640

このように日射遮蔽型ガラスを南窓に用いることは、「夏は中途半端・冬は大損」になります。また仕入れコストだけでなく、窓の面積が大きくてもFIXや片引きを選びUw値を効果的に小さくすることも考慮が必要です。

断熱ブラインドによる工夫

南面の掃き出し窓のペアガラスの日没後の熱損失は大きくなるので、それを補填するのが「ハニカムブラインド」です。ただし、ハニカムブラインドは省エネ基準としては項目にありません。

断熱ブラインド
図:PVソーラーハウス協会「ハニカム構造・断熱ブラインド」

これを設置するだけで、「アルミサッシ+シングルガラス」のU値6.5がU値2.4程度まで向上します。

例えば「樹脂サッシ+ペアガラス」では、

樹脂サッシ+ペア熱貫流1.5W/㎡K⇒熱抵抗値=0.667㎡kW

ハニカムブラインド熱貫流3.8W/㎡K⇒熱抵抗値=0.263㎡kW

熱抵抗値=0.930㎡kW ⇒熱貫流率1.075W/㎡K

この数値は「樹脂サッシ+トリプルガラス」の窓と同等の性能になります。特に南面の大きな窓では、夜間の断熱性能を高める効果が高くなります。以下にハニカムブラインド空気厚と各サッシの熱貫流率を抜粋します。

熱還流率
表:PVソーラーハウス協会「ハニカム構造・断熱ブラインド」

ちなみに一条工務店はこの組み合わせを標準仕様(一条工務店の樹脂サッシにトリプルハニカムシェードで熱貫流率=0.6)としています。ただし結露リスクがあることには注意が必要です。

以上より、セオリーとしては冬の南側の窓は日射が当たるように大きくすれば暖房費が下がり、夏の2階は軒を出して、1階は庇と簾(すだれ)を設置することで冷房費を下げる、それ以外の窓は断熱ブラインドなどで日射遮蔽や熱損失を小さくすることになります。

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