住宅を購入する際に断熱性を考えられる方が多くなっています。しかし、その指標となる断熱性能の基準が乱立しており、どこを目指すのか?は一般の人にはなかなか分かりません。
また、窓の性能が低いのに、壁の断熱性能だけ良いなどの断熱性能の偏りがしっかり考慮されていない住宅も見かけるようになりました。
断熱性能で失敗しないように、私たち自身が知識を身につけましょう。
断熱性能のUA値とは?どのくらいが良い?
住宅の断熱性の指標となるUA値とは、天井、壁、床、窓などの外部に面している面積(外皮面積)に対して、どれくらいの熱量が外に逃げているかを表した数値です。数値が小さいほど断熱性能が高い住宅です。
この指標で注意する点は、あくまで平均値であるということです。例えば、壁の断熱性能が高くて窓の断熱性能が低くても、全体では平均となってしまいます。そのため数値が小さくても個々の断熱性能をしっかり把握する必要があります。
特に窓の断熱性能は大きく影響するため、窓の断熱性の確保が必須になります。
UA値はどのくらいが良い?
UA値の基準が多くあり、どの指標が適切な断熱性能を確保しているのかが分かりづらいのが現状です(このブログでは6地域を対象)。
基準 | 内容 |
断熱等級3 | 平成4年の断熱基準。6地域の断熱基準は「UA値1.54以下」。低い性能であてにならない。 |
省エネ基準(断熱等級4:最高) | 平成28年の断熱基準は「UA値0.87以下」。この基準をクリアしても、省エネな家ではない。 |
ZEH(ゼッチ)基準 | 断熱性能の基準は「UA値0.6以下」。 |
HEAT20(G1・G2・G3) | 断熱性能の基準は、G1で「UA値0.56以下」、G2で「UA値で0.46以下」、G3で「UA値0.26以下」。 |
こうみれば省エネ基準(断熱等級4:最高)が最低ランクで、これを「最高等級取得」と広告する住宅メーカーがあるので注意しましょう。
結論は、HEAT20基準(G2,G3)を目指すと結構お金がかかるのでZEH基準を目指しましょう。また、断熱性能ばかりこだわっても、気密・換気システムなど住宅を全体的に考えてお金を考えなければいけません。
だからこそZEH基準(UA値0.6以下)は、それほどお金をかけずに到達できるし、省エネ基準(UA値0.87以下)の家に比べると、各段に住み心地が良くなります。
購入する住宅のUA値を確認しよう
UA値は、間取りや窓の数・種類などによって変わるので、カタログ値ではなく、購入される住宅のUA値を知ることが大切です。
冒頭に記したように、UA値はあくまで平均値です。例えば壁5・屋根5・床5・窓5ならUA値は5です。しかし壁6・屋根6・床6・窓2としてもUA値は5です。このような住宅は窓の断熱性能が低いので、暑い寒い、結露するなどの原因となります。
このUA値の計算に関しては、外部機関(性能評価証明など)に依頼すると費用がかかるので、住宅会社内で計算してもらいましょう。
断熱で考えないといけないこと
どのような断熱材が良いのかご質問を受けることがありますが、UA値が適正であれば、断熱材の種類はさほど重要ではありません。
むしろ、住宅工法に関わる屋根の断熱、基礎(床下)の断熱が大きく性能に影響します。
屋根の断熱
屋根の断熱には、「天井断熱」と「屋根断熱」の二種類があります。どちらも一長一短がありますがここでは冷暖房効率の観点から考えます。
天井断熱の場合、屋根裏の温度は夏場60℃近くにもなります。この場合、部屋のエアコンをいくらまわしたところで、屋根裏のこもった熱を冷ます方法がありません(冬はこの逆)。
これが輻射熱として室内に少しずつ侵入してきます。もちろんこの場合は小屋裏換気することが必須ですが、自然通風できずに小屋裏内の結露やカビが発生する事故などが後を絶ちません。
ただし、丁寧な断熱施工ができるのであれば、部屋の体積が小さくなるため冷暖房効率が上がります。
一方、屋根断熱にすると、施工性が悪くなる、気密が取りにくくなる、大工さんの手間がかかる事でコストが高くなることがデメリットです。また、小屋裏エアコンを設置する場合は、屋根裏にエアコンを置くので、天井断熱ができません。
このようにケースバイケースで対応になるため、どちらがいいか悪いかは正直言えません。小屋裏部を積極的に利用するのであれば屋根断熱をするしかありません。
一般的には天井断熱のコストが安いため、小屋裏収納のみを設ける場合は小屋裏収納の壁と天井で断熱して、屋根断熱にはする必要がないと思います。
基礎の断熱
基礎の断熱には、「基礎断熱」と「床下断熱」の二種類があります。床下断熱は床下に冷たい空気が流れるので底冷えしやすくなります。
一方、基礎断熱は、床下に室内と同じ暖かい空気が流れるので、底冷えしにくいです。ただし、基礎の外側に断熱材を施工する外断熱はシロアリの被害が多く確認されているのでやめましょう。
また、床下から室内に空気を循環させる換気が必要になるため、床下を含めた家全体の換気計画を立てるようにしてください。また床下エアコンを使う場合は基礎断熱が必須になります。
基本的には、断熱・気密性能を高めたい場合は、基礎断熱を選ぶべきです。なぜなら、気密性能を高めやすく、気密処理の必要な取り合い部が土台と基礎の間などに限られるからです。
また、床下空間を同じ断熱・防湿・気密仕様で統一できるため断熱・防湿・気密の連結不良が生じにくいことがあります。ただし、気密パッキン、ポリウスチレンフォームなどの材料費アップは避けられません。
一方、床断熱では、根太との隙間や配管の床貫通部など気密処理が必要な取り合い部が多いので、気密性能を上げるのが難しくなります。特に居室の床より高さが低くなる玄関や浴室などを部分的に基礎断熱にしなければならないので、断熱・防湿・気密の連結不良が生じやくなります。