分譲マンションはいつまで住めるのか

旧耐震マンション

都心部で安い分譲マンションを探すと、築40年や50年の物件が多くあります。しかも、立地の良い場所であれば築50年でも、そこそこ良い値段で売買されています。

鉄筋コンクリート造マンションの法定耐用年数は、47年となっています。

実は1998年の法改正によって、建物の法定耐用年数は短くなりました。法改正前は60年もありました。

短くなることで築年数が法定耐用年数を超えたマンションは、金融機関によっては住宅ローンの貸し出しの可否に影響します。

住宅ローン融資では申し込む人の返済能力や、住宅性能、土地の条件などさまざまな項目で検討されますが、鉄筋コンクリート造は耐用年数が47年と、2020年-47年=1973年以降のマンションであれば法定耐用年数内になります。

しかし、あくまで税制上の法定耐用年数なので、実際どのくらいまで住めるのかが気になるところです。

分譲マンションはいつまで住めるのか

最も古いマンションは、1953年の日本発の東京都の分譲マンション「宮益坂アパートメント」と1956年に民間による分譲マンションの第一号「四谷コーポラス」ありましたが、いずれも建て替えになっています。

建替えの理由は、外壁の剥落、雨漏れ、給排水管の劣化による漏水、耐震性能不足などがありました。

一方で、世界で最初の鉄筋コンクリートの建物の「フランクリン通りのアパート(1903年)」は、現在も使用されていますし、ニューヨークにある「エンパイアステートビル(1931年)」もあります。

フランクリン通りのアパート
写真:Google Map「フランクリン通りのアパート(1903年)」

また、国内でも100年以上経過している鉄筋コンクリート造の建物は「SACRA(旧不動貯金銀行京都支店)(1916年)」や「旧北國銀行京都支店(1916年)」などがあります。

こう考えると、メンテナンスをしっかりしながら住めば100年は十分住めることになります。

100年住むことができるマンション選びで考えないといけないことは沢山ありますが、ここでは「中性化」と「設備配管」の2点に絞って考えてみましょう。

中性化の問題

外壁などの仕上げ、給排水など設備配管、耐震性能などは、お金を掛ければ何とかなりますが、建物の老朽化で問題になるのが中性化という現象です(物理的耐用年数)。

中性化とは

コンクリートが二酸化炭素(炭酸ガス)などの浸透により中性化すると、内部の鉄筋を守っている不働態被膜が破壊されます。そこにひび割れなどから水分が供給されれば鉄筋は錆びて、耐力を低下させます。

ただし、コンクリートそのものは中性化しても強度は低下しないため、鉄筋が錆びるのをいかに防ぐか、つまりコンクリートのひび割れを放置しないことが重要になります。

また、コンクリート表面から鉄筋までの距離をかぶり厚さといい、建築基準法や学会基準で柱梁壁30㎜~40㎜が決まっています。

このかぶり厚さが厚ければ、それだけ中性化が進行しても鉄筋まで届かないようにできることになります。

この中性化の進行速度は、t=7.2√Xの式で算出(無塗装)することができ、鉄筋面まで中性化する耐用年数は、

  • かぶり厚さ2cm⇒約29年
  • かぶり厚さ3cm⇒約65年
  • かぶり厚さ4cm⇒約115年

となります。

理論的には、水セメント比との中性化の関係もありますが、ひび割れからの水の侵入を防ぐことで、65年~115年は供用可能です。

近年では、この中性化したコンクリートをもとに戻す工法なども実用化されています。

給排水管の課題

古いマンションで問題になるのが、排水管からの漏水と老朽化です。

床スラブ上下配管
図:http://repco.gr.jp/knowhow/checklist/check6

古いマンションは右図のように下階の天井裏に排水管が通っており、配管を交換するにしても、漏水した場合でも下の住人に迷惑が掛かります。

また、建築時期によって配管材料や耐久性も異なります。

時期

給水管

排水管

管材料

継手

耐久性

管材料

耐久性

1970年中頃まで

亜鉛メッキ鋼管

亜鉛メッキ継手

約15年

炭素鋼鋼管

約20年

1970年~1980年

硬質塩化ビニルライニング鋼管

樹脂コーティング継手

約15年

炭素鋼鋼管

約20年

1980年代~1980年代後半

硬質塩化ビニルライニング鋼管

樹脂コーティング継手

約15年

排水用ライニング鋼管

約25年以上

1975年頃までに建設されたマンションでは「水道用亜鉛めっき鋼管」という材料が使用されていました。この管材は、鋼管の内面に亜鉛めっきが施されているだけだったため、15年~20年ほどで配管内面が激しく腐食してしまい、赤水や漏水などが発生し問題になりました。

このような抜本的な対策(共用部の配管交換など)が必要になることを考えると1975年頃までのマンションは控えた方がよいかもしれません。

この配管内面の腐食問題を解消するために登場したのが「硬質塩化ビニルライニング鋼管」です。硬質塩化ビニルライニング鋼管の耐久性は約15年となっていますが、むしろ問題は継手の部分が問題になります。

1985年頃までは「樹脂コーティング継手」という樹脂を内面に塗布したものが使用されていました。この継手には、管端の鉄露出部分や鋼管ネジ部分がさびやすいという弱点があります。

排水管の「炭素鋼鋼管」は、歴史の古い配管材で、雑排水管(台所・浴室・洗面・洗濯からの排水)や通気管を中心に昔から多用されています。

鋼管の内外面ともに亜鉛メッキが施されているだけであるので、全面的な腐食が生じるもの、ドレネージ継手による「ねじ接合」の場合は、ねじ切り加工により元々半分程度の肉厚しかないので、腐食減肉による漏水が生じやすいことが挙げられます。

ただし、漏水事故による損害賠償は、保険対象となる場合が多いです。

配管からの漏水によって、自分の部屋が損害を受けた場合と、下の階の部屋が損害を受けた場合で対象が異なります。

1970年代後半に入ると耐食性を向上させた他の鋼管類が普及することで使用が減り、現在の新築マンションでは使用されていません。

この「炭素鋼鋼管」を使用されているマンションが、まさに今、苦労しながら排水管の更新に取り組んでいます。

ただし、水漏れ被害が自分の部屋の場合は、火災保険の「水濡れ」を補償内容に含んでいれば、保険金がおります。

下の階の部屋は、下の階の方の火災保険「水濡れ」またはあなたの「個人賠償責任特約」で補償されることになります。また、管理組合が加入している保険が適用されます。

以上から、古いマンションを買う場合に一番の問題は、中性化の問題ではないでしょうか。そのような意味では、外観がしっかりとメンテナンスされているマンションであれば購入を検討してもよいかもしれません。

マンションの寿命については、以前のブログもご参考にして下さい。

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