旧耐震マンションを買うリスクを考える(パート2)。

旧耐震マンション

都内で中古マンションを探されている方も多いのではないでしょうか。

都心部の新耐震と旧耐震のマンションでは価格の開きが大きく、「いかに毎月の支払いを軽減するか」を重視するため旧耐震マンションを検討せざる得ないこともあります。

前回のブログを読んでない方は以下からご覧ください。

今回は、旧耐震及び新耐震の地震被害について確認し、旧耐震マンションを買うリスクを考えます。

旧耐震マンションを買うリスクを考える(パート2)。

平成7年兵庫県南部地震被害調査最終報告書(建設省建築研究所)から、前回のブログで紹介した~1971年、~1981年(旧耐震)、1981年以降(新耐震)の鉄筋コンクリート造(RC造)及び鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の地震被害について確認していきます。

なお、「中破:大規模な補強・補修が必要な被害」が一つの基準になると思います。

被害状況
図:鹿島建設「地震被害について」より

またピロティについては、以下のブログをご覧ください。

まずは、~1971年までのRC造及びSRC造を確認しましょう。

~1971年

7階以上のマンションかつピロティ構造の場合は、倒壊・大破で3割強あり、とても許容できるものではないです。非ピロティでも倒壊・大破で3割弱あり、いずれにせよ~1971年のマンションは避けた方が良いのが分かります。

次に旧耐震のマンションを購入する場合のターゲットとなる建物の被害を見てみましょう。

1972年~1981年

7階以上ではピロティであるかないかに違いはなく、倒壊・大破は1割強になっています。ただし、倒壊の割合は非ピロティがピロティより多くなっています。

一方で中破は非ピロティで2割弱、ピロティが3割弱と大きくなっています。

まずはピロティを避けて、10分の1の確率を許容できるかがひとつの考えになります。

1982年以降

新耐震以降は、7階以上の建物で倒壊はありませんが、非ピロティで倒壊が数割あります。また、中破以上はやはりピロティの方が多くなっています。

~1981年をもう少し詳しく見るために、日本建築学会近畿支部で被害が大きかった地区(灘区、東灘区)のRC造建物の被害調査を確認してみます。

1981年以前の被害
表:日本建築学会近畿支部鉄筋コンクリート構造部会「1995年兵庫県南部地震コンクリート系建物被害調査報告書」より

やはり建物高さが7階を超えると、大破あるいは倒壊の割合が大きくなって、被害が小破でとどまる建物の割合が少なくなります。

この報告書の中で、注目されるのは、1971年以前に建設された8階建て以上の建物は全て倒壊した点です。

また、前回のブログでは、新耐震の見直しのきっかけとなった宮城県沖地震では、鉄骨鉄筋コンクリート造(SRC造)の被害はなかったと書きましたが、兵庫県南部地震ではSRC造の新たな問題が確認されています。

それが中間層の崩壊というこれまで経験していない被害が多数発生したことです。

中間層の崩壊
写真:愛知県「応急危険度判定士講習会テキスト」より

特にマンションでは、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC造)から鉄筋コンクリート造(RC造)に切り替わる中間層での被害が顕著になっています。

専門的には、SRC造の剛性と比べてRC造の剛性は小さくなるため、層の強度(耐力)分布が切り替え位置で急減したことが被害の一因であると推測されます。

その他にも、付着割裂破壊、鉄骨継手の破断などSRC造特有の破壊が多く確認されています。

また、最下階の柱の鉄骨が地中梁上端から立ち上がっているのか、又は基礎から立ち上がっているのかで耐震性は大きく変わります。

都心部の築40年以上の高層マンション(7階以上)の多くはSRC造となっています。

このような被害が確認されているため、構造切り替え部位の階の購入は、できる限り避けた方が良いでしょう。

ただし、築40年以上の物件の多くは当時の図面は残っていない可能性が高く、判断が難しいので専門家による診断が必要になります。

次回は、被災したマンションの5年後の復旧状況から、補修して住んでいるのか、それとも建替えたのかを確認します。

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