旧耐震のマンションを買う。過去の地震被害からリスクを考える。

旧耐震マンション

都心では新築・中古マンション価格が上昇し続けているため、その中でも安価な旧耐震マンションを購入することを考えられている方もいると思います。

しかしながら、フルリフォームで綺麗になっていても、相当の地震災害リスクがあることを理解しなければなりません。

過去の地震被害を見ても、大きな被害を受けるのは旧耐震のマンションです。さらに損傷した場合の復旧にも課題があります。

これら過去の地震被害から想定されるリスクを一緒に考えましょう。

旧耐震のマンションを買う。過去の地震被害からリスクを考える。

建物の建築基準は、過去の大きな地震災害を経て見直されてきています。

特に1978年の宮城県沖地震(マグニチュード=7.4、死者28人)を契機として、1981年(昭和56年)に建築基準法の耐震規定が大きく改正され、現在の新耐震基準となりました。

この新耐震基準(1981年6月)以前に建てられた旧建築基準法による建物(旧耐震)の中には耐震性能が不足しているものが多数あり、1995年に起きた阪神・淡路大震災(マグニチュード=7.3、死者6,434人)においては、これらの建物に被害が集中しました。

旧耐震と新耐震の違い
引用:早分かり!耐震性の目安、改正後の新耐震基準について学ぼう(スーモマガジン)

(株)不動産経済研究所が発表した旧耐震マンションに関する調査結果(2017年12月)を見ると、首都圏の旧耐震マンションは6,746物件あり、全国で現存する旧耐震マンションの約57%が首都圏にあります。そのうち東京都内が4,840物件になります。

東京都では、構造上のバランスが悪いマンションとして、以下のような建物を挙げています。

構造上のバランスが悪いマンション
引用:東京都耐震ポータルサイト「1.分譲マンションの耐震化」

このような構造上のバランスが悪い建物は、過去の地震で被害が大きくなる傾向が分かっています。

これらの建物の過去の地震被害を見てみましょう。

ピロティ形式のマンション

ピロティ形式のマンション

2016年の熊本地震では、1階部分を駐車場などに利用するため壁を少なくした「ピロティ形式」のマンションなどに被害が多く見られました。

ピロティの柱破壊
引用:朝日新聞デジタルより

この建物は熊本市西区の7階建てマンションで1974年に完成した旧耐震物件です。

ピロティの柱が完全に壊れ,建物の1階が落階して自動車を押し潰しています。

1995年の兵庫県南部地震でも、鉄筋コンクリート造のマンションに最も多く見られた被害は、この「ピロティ形式」の被害です。

建物の倒壊
引用:朝日新聞デジタルより

この神戸市東灘区のマンションは兵庫県南部地震で1階部分が崩れ傾きました。

1階部分に耐震壁が入っていたとしても、駐車場等のために間口を広くとっている場合などは、壁量の不足や壁の偏在による捩れにより地震被害が生じます。これを避けるには,建築物の柱や壁は,各階とも平面的にバランス良く配置する必要があります。

また、現在の耐震基準で設計された鉄筋コンクリート造建物のうち,兵庫県南部地震によって大破以上の被害を受けたものが十数棟ありましたが、そのほとんどがピロティの柱の被害です。

同じく熊本地震でも、現在の耐震基準の建物でピロティの柱の被害が確認されています。

平面または断面形状が不正形なマンション

平面または断面形状が不正形なマンション

現在はエキスパンション・ジョイントで切って、不整形な平面形状にならないように配慮されていますが、昔のマンションではL字型・コの字型の不整形な平面形状のものが多くあります。

また、これらに加えてセットバック等で断面形状が不整形な建物では、地震が起きた時にそれぞれの固まりが違う揺れ方をするので、接続部分などが局地的に破壊することがあります。

柱・壁に大きな亀裂
引用:マンション耐震化マニュアル(国土交通省)

この写真は、旧耐震基準のSRC造ラーメン構造のL字型建物で、L字コーナー付近の廊下の柱・壁に大きな亀裂が生じました。L字部分に地震力が集中し、せん断破壊を起こして損傷したと考えられます。

構造形式が混在するマンション

構造形式が混在するマンション

上層部と下層部とで構造形式が異なる建物では、構造形式が切り替わる付近の階で、層崩壊等の被害が集中するおそれがあります。

層崩壊
引用: 1995年阪神淡路大震災スライド集(日本建築学会編)

この建物は4階部分のみが潰れており、鉄骨鉄筋コンクリート(SRC)造からRC造への構造形式の切り替え等が被害原因として指摘されています。

細長い形状のマンション

細長い形状のマンション

短辺方向は戸境壁が多く、耐震上は有効です。これに対し長辺方向は、バルコニーに面して開口部が多く、耐震上有効な壁が少なくなります。

細長い形状のマンションでは、長辺方向に地震力が伝わるのに時間差があり、長辺方向の各部位において異なる動きとなるため、耐震上弱い長辺方向に被害が集中します。

せん断破壊して層崩壊
引用:マンション耐震化マニュアル(国土交通省)

この写真は、旧耐震基準のRC造ラーメン構造の細長い建物で、1階の中央部分の柱がせん断破壊して層崩壊を起こしました。

建築年代と被害建物の関係

建築年代と被害建物の関係
引用:わが家の耐震 -RC造編-(日本建築学会)

この図は、兵庫県南部地震で大きな被害を受けた神戸市中央区内のある地域の鉄筋コンクリート造建物を建築年度別に分類した調査結果を示しています。

これを見ると1971年以前の建物は大破、倒壊または崩壊と判定された建物が多く、その被害が顕著に現れています。

マンションの耐震性能をチェックする際にも、どの時代の基準で設計されたものかが一つの目安となると考えられます。

ここで1972~81年の旧耐震でも1982年以降の新耐震でも変わらないのではと思われるかもしれませんが、それを理解するためには耐震設計法の変遷を読み解く必要があります。

1971年せん断破壊を防止

柱にせん断破壊
引用:わが家の耐震 -RC造編-(日本建築学会)

1968年の十勝沖地震では、写真のような柱が極めてもろく破壊する、いわゆるせん断破壊が数多く発生しました。

柱にせん断破壊が生じると、ある階全体が瞬時につぶれる恐れあるため、必ず避けなければなりません。

そこで1971年に、せん断破壊を防止するために、帯筋の間隔を狭くし、たくさん入れるようにせん断設計の方法が強化されました。

(日本建築学会RC規準の改定:せん断補強筋間隔の狭化、最小せん断補強筋量の採用、設計用せん断力の割り増し、曲げ降伏先行の概念の導入)

1982年たれ壁・腰壁付き柱のせん断破壊を防止

たれ壁と腰壁が上下についた柱のせん断破壊
引用:わが家の耐震 -RC造編-(日本建築学会)

1978年の宮城県沖地震では、写真のようなたれ壁と腰壁が上下についた柱のせん断破壊や非構造壁のせん断破壊が問題になりました。さらに耐震壁が偏在した建築物の崩壊も確認されています。

非構造壁の破壊
引用: 2016年熊本地震による建築物被害(国土技術政策総合研究所講演会)

特に非構造壁の破壊は、ドアや窓の開閉機能に支障をきたす場合があるため、地震時に屋外へ避難する際の妨げになる可能性があります。

(新耐震設計法の採用:一次設計と二次設計、じん性に応じた保有水平耐力、剛性率・偏心率、変形制限)

まとめ

このように耐震設計法に大きな違いがあり、本来で建物の耐震性能を論じる場合には、その地域で想定される地震動の大きさや個々の建物の特性を検討しなければなりません。絶対数は同じように見えても被害程度は大きく異なります。

また、マンションの耐震性能については、建物が崩壊しないための構造以外に、安全に避難できるための避難経路や機能を保持するための設備の視点も重要です。

次回は、旧耐震でも被害が少なかった建物の特徴、古い建物で構造以外に気を付ける点、地震被害に合った場合の住み続けることが難しいことなどをご紹介致します。

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