台風で屋根が飛ぶのはなぜか?

台風被害

台風が日本本土に上陸するのは多くが7月から9月です。台風の予想進路が発表されるものの、台風に備えるといっても、何をしないといけないか分からない方が多くいると思います。

前回に引き続き2019年台風15号の被害状況や、台風銀座と呼ばれる沖縄県の取り組みなどから自分たちでできる防災対策を考えます。

台風で屋根が飛ぶのはなぜか?

20192019年9月台風15号は千葉県を直撃し、大規模な停電や家屋被害を引き起こしました。県内では住宅約7万4千戸が損壊。特に被害の大きかった房総半島南部の沿岸部では、修理できずブルーシートで覆われたままの屋根が今も目立ちます。

台風15号による強風で壊れた住宅の屋根に、ブルーシートが張られていた
朝日新聞デジタル「台風15号による強風で壊れた住宅の屋根に、ブルーシートが張られていた」より

今回のように屋根のダメージが大きいと、その後の雨で被害が拡大し、生活への影響が深刻になります。

この屋根被害でしばしば見られたのが、屋根が「小屋組みごと吹き飛ぶ」と「瓦が吹き飛ぶ」被害です。

屋根(小屋組み)ごと吹き飛ぶ原因

強風が吹くと、以下の図のように押す力と引っ張る力が働きます。特に緩勾配屋根は風上側にも引っ張り力が働きます(図左)。

風圧力
(図:日経ホームビルダーより)

この引っ張る力に抵抗するために「ひねり金物」を屋根の接合部に取り付けます。

ひねり金物

しかし、窓ガラスが割れるなどので、建物の風上側に穴が開くと、屋根を外側に押す力と屋根を外側に引っ張る力が共に増して大きな力がかかります(図右)。この場合、通常の「ひねり金物」では全く強度が足りないことになります。

この小屋組みの接合方法に関する仕様規定は建築基準法にはありません。住宅金融支援機構が木造住宅工事仕様書で、軒先部の垂木と桁をひねり金物で留める方法などを示しているだけです。

つまり、具体的な荷重水準や緊結する部材の強度に関する規定はありません。そのため構造検討なしで設計・施工をするケースがあり、このような接合強度の弱い小屋組みが吹き飛ぶ可能性があります。

台風15号の屋根被害では、この接合金物が全く確認できなかったものや、必要な場所に取り付けられていなかったものが多数ありました。

瓦が吹き飛ぶ原因

沿岸部では既存住宅の多くは瓦だったため、釘留めしていないおびただしい数の瓦が飛散しました。

また、釘留めしていても、瓦同士を突起ではめ合わせる「防災瓦」ではないタイプの瓦だったり、くぎに回転止め加工が施されていませんでした。

瓦が飛ぶ
(写真:千葉県瓦工事業組合)

一般社団法人全日本瓦工事業連盟では、「瓦屋根標準設計・施工ガイドライン」を定めています。

また、「防災瓦」が推奨されており、この瓦は軽量で施工時に瓦同士がかみ合うため、台風などの強風に強い固定力を持っています。

今回の屋根被害調査でも、築10年以内の建物で防災瓦を使いガイドラインに準拠した施工したものについては、その仕様の安全性はほぼ確認できています(千葉県瓦工事業組合)とのこと。

ただし、千葉県旭市の海岸沿いに立つ築1年の住宅の「防災瓦」が、強風の影響で屋根の瓦が飛散したケースがありました。

ガイドラインでは、基準風速は38m/s、地表面粗度区分は「Ⅲ」を前提に仕様を示しているため、沿岸部の条件(地表面粗度区分は「Ⅱ」)では、耐風圧性能を上回る風圧力を受けて、飛散した可能性があるので注意が必要です。

化粧スレートが吹き飛ぶ原因

建売住宅などに多く採用されている「化粧スレート」屋根の住宅の被害も確認されています。

化粧スレートが飛ぶ
(写真:千葉県瓦工事業組合)

化粧スレートは、重量が瓦の半分以下(瓦:1㎡約39kg スレート:1㎡約21kg)と軽く、加工がしやすく、施工方法も簡単なため、工事費用も安価です。

化粧スレートは基準風速38m/s以内の地域は標準工法で施工できます。そのため、これらの被害は防災瓦と同様に、基準風速を超える風を受けて発生した可能性があります。

2018年10月の台風24号でも、築19年の木造3階建て住宅の屋根材の破片約200枚が飛散し、一部が近隣の住宅の窓ガラスを突き破りました。

くぎや下地材を留めるタッカーにさびが生じており、その原因が釘にあるのか、化粧スレートにあのかは未だ未解明のままです。

沖縄の屋根や瓦は飛ばない理由

沖縄の伝統的な家屋には、台風に耐えるための工夫が見られます。

まず、赤瓦の屋根は瓦を一つ一つつなぎ、さらに漆喰で固めています。さらに風を逃がしやすくするために、屋根が四方向に傾斜する造りの寄棟(よせむね)屋根になっています。

沖縄中村家
沖縄中村家住宅

また、家の周囲には軒の高さまで積み上げられた、サンゴでできた石垣をめぐらして、台風の強い風が屋根の上を吹き抜けるようになっています。さらに防風林としてフクギも周りに植えられています。

都市部では、屋根もコンクリートの住宅が多くなっており、窓には格子、ルーバー雨戸がはめられていて、窓ガラスを飛散物から防いでいることが多いです。

近年では木造住宅も多く建築されていますが、屋根(小屋組み)を接合する「ひねり金物」は、構造計算に基づいた耐風仕様のものが使用されています(ハリケンタイ/カネシンなど)。某住宅メーカーでは、耐風仕様の接合金物を2丁掛けで使っている現場もあります。

台風対策を理解しよう

沖縄県では、建築基準法に定める基準風速(46m/s)が最も大きく、台風の通り道であるため、様々な対策がされています。

小屋組み接合部には耐風仕様のもの、化粧スレートの施工方法も、一般的な施工ではなく、ビスや接着剤を使用した補強仕様を採用しています。

これから住宅を建てる方、屋根リフォームを考えている方は、建築・施工業者に「風速何m/sまで耐えれる仕様になっていますか」とご質問してみてください。

多くの場合、少しの手間や費用で台風被害を大きく軽減できることができます。

上記の防災瓦+補強仕様、耐風仕様のひねり金物や補強仕様の化粧スレートの具体的な話がない場合は、注意してください。

また台風被害の軽減を図るために、沖縄県と同等の施工方法を採用するなども考えてみて下さい。

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