台風など強い低気圧が表れると、波が高くなると同時に海面の水位も上昇します。これを高潮といいます。
高潮によって一旦浸水が始まると、海水のボリュームがけた違いに大きいため、低地には浸水被害が一気に広がることになります。
近年で最も被害が大きかったのは、平成16年(2004年)の台風16号により浸水した高松市の浸水被害です。高松市内だけで15,561戸が浸水しています(全壊・半壊)。
なぜ台風によって高潮が生じるのかを確認しましょう。
高潮の意味って何?。過去の被害を確認しよう。
高潮には主に二つのメカニズムがあります。一つは大気圧の低下に伴い、海面が吸い上げられるように上昇する「吸い上げ」と呼ばれる現象です。
この「吸い上げ」が原因としてよく説明されていますが、「吸い上げ」による海水面上昇は大きくても数十センチメートル規模です。
二つ目のメカニズムは、「吹き寄せ」です。
台風の進路上にある湾に向かって吹き寄せられていくと、行き止まりで海水面は更に上昇し,場合によっては堤防を越えて陸地に浸水していくことになります。
この「吹き寄せ」による海水面の上昇は、風速が速いほど、湾の長さが長いほど、湾の水深が浅いほど大きくなります。
この吹き寄せによって海水面が上昇し、陸地が浸水することがあるという意味では、津波と同じようなもの、と捉えることもできます。
さらに、二つのメカニズムに加え、「ウェーブセットアップ」という波が崩れることによる海水面の上昇が加わります。
「高潮」と「高波」、「津波」の違い
高潮とよく間違えられる現象として「高波」があります。高波は、私たちがよくイメージする「海の波」です。
「高波」は、主に低気圧の発達による強い風によって生じ、台風の時などは高さ10メートル以上になる事も珍しくありません。
ただし、波の繰り返しはありますが、時間的には秒単位で砕けてしまいます。
「高潮」は,数十分以上にわたって海水面が高い状態が続き、その高さは、かなり高い場合でも数メートルの単位になります。
「高波」には何m以上というような具体的な基準はありませんが、気象庁や気象台では、波浪注意報、波浪警報を出す基準を決めていて、例えば神奈川県(横浜地方気象台で出す)では相模湾の波高(波の高さ)が注意報は1.5m、警報は3.0mの高さが見込まれるときに出されます。
ちなみに、「津波」は地震や火山活動、山体崩壊に起因する海底・海岸地形の急変により、海洋に生じる大規模な波の伝播現象です。
高潮ハザードマップ
左上の「災害種別を選択する」から「高潮ハザードマップ」を選びます。
高潮による浸水の危険性がある地域については、高潮ハザードマップが作成されている場合があります。
ただし、洪水や土砂災害のようにほとんどの地域で作成されておらず、未作成の地域も少なくありません。
高潮ハザードマップが整備されていない地域での、高潮の危険性は、一般論としては、海岸近くの低い土地で危険性があると考えられます。
「伊勢湾台風」って何。
2020年9月の台風10号は「伊勢湾台風」級の勢力で九州地方を直撃すると、ニュースでよく報じられていました。「伊勢湾台風」も高潮の被害が拡大した台風でした。
この台風による死者・行方不明者は、5,012人と桁違いになっています。
近年では、高潮による犠牲者(死亡者)がほぼ生じていません(平成16年高松で2人)。それは海岸の堤防整備などの効果も大きいと思いますが、偶然によるところも少なくないとの専門家の意見もあります。
海岸付近で堤防が十分整備されていないケースも珍しくなく、高潮による人的被害は今でも十分起こりうると思います。
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