気象庁は平均風速の最大クラスとして「50メートル以上」を新設し、台風シーズンが本格化する今年夏頃には導入することが明らかにしました。
これまでは「40メートル以上」が最大でしたが、平均風速の最大クラスとして「50メートル以上」を新設して、住宅の著しい変形・倒壊といった具体的影響を示す方針です。
「風速50m以上」で住宅が倒壊!?
ちなみに、平均風速で50m/sは、気象観測網で実測されることはほとんどありません。平均風速は、10分間に吹く風の平均的な速さで、3秒間の風速を平均したものは「瞬間風速」と呼ばれ、平均風速の1.5~2倍程度に達することがあります。
台風予報で赤い丸で示される「暴風域」は、平均風速25m/s以上の風が吹く場所です。なので暴風域に入った場所は最大瞬間風速50m/s以上になることも十分あり得るということです。
最近では2018年の台風21号で、高知県室戸市室戸岬では最大風速48.2メートル、最大瞬間風速55.3メートル、大阪府田尻町関空島(関西空港)では最大風速46.5メートル、 最大瞬間風速58.1メートルとなるなど四国地方や近畿地方では猛烈な風を観測しています。
ややこしいですが、最大風速とは、「ある時間帯や期間に計測された平均風速の最大値」という意味です。
気象庁のまとめによると、最大風速50メートル以上の観測記録があるのは、静岡県・富士山(72・5メートル)、高知県・室戸岬(69・8メートル)、沖縄県・宮古島(60・8メートル)など全国9地点です。
気象庁は、温暖化の影響で、今後は日本付近に到達する台風の勢力が強くなると予測されており、平均風速50メートル以上の猛烈な風に見舞われる地域が広がる恐れがあるとしています。
なぜ平均風速50メートル以上とするかというと、台風が本州接近時に中心気圧930hPa以下又は最大風速50m/s以上(平均風速の最大値)、というのが台風の特別警報を発表する基準として考えられているからです。
平均風速50メートル以上で住宅が倒壊したケース
2020年9月九州に接近した台風10号では、長崎県野母崎で最大風速44.2メートル、最大瞬間風速59.4メートルとなり、記録的な暴風となり、長崎や鹿児島では建物が倒壊する被害が出ています。
現時点では、平均風速40メートル(およそ瞬間風速60メートル)以上では、住家で倒壊するものがある、鉄骨構造物で変形するものがあるとして気象庁が定めています。
その他にも「木造住宅が著しく変形、倒壊する」「鉄筋コンクリート造の集合住宅で、ベランダの手すりが広範囲でゆがむ」などの表現があり、これらを軸に内容を詰める方針とのことです。