なぜ住宅の倒壊、マンションの崩壊は起こったのか?

施工不良

2021年6月25日、大阪市西成区で住宅2棟がのり面の下に崩れ落ちました。崩れる前に「家の下の方から水が出ている」という連絡が警察にあり、その後住宅が傾き始めたとのこと。

崖下では老人ホームの基礎工事が行われており、崩壊との関連は不明となっています。

大阪市西成区で住宅2棟
毎日新聞:住宅街で崖崩れ、2棟が崩落

一方で、6月24日の深夜1時30分頃、アメリカフロリダ州マイアミ近郊で12階建てのマンションの一部が突然崩壊しました。建物は1981年に造られたものとのこと。

現場は高級リゾート地として知られるマイアミビーチの近くで、海に面しています。コンドミニアムと呼ばれるタイプの建物で、短期滞在者や観光客もおり、崩落時に建物内にいた人数は判然としていません。136戸のうち約55戸が崩れ落ちています。

コンドミニアムが倒壊
Photo: Maria Alejandra Cardona / The New York Times

これらの倒壊事故について、専門家として少し考察してみました。

住宅の倒壊はなぜ起きたのか(2021年7月5日追加あり)

崩壊した擁壁は、裏込め土と石だけでつくられた空石積みで、高さ約9mの急勾配でしたが、急傾斜地崩壊危険箇所や急傾斜地崩壊危険区域には指定されていませんでした。

倒壊した住宅の崖下では老人ホームの基礎工事が行われていて、土留めと杭工事を終えた4月中旬、擁壁の目視調査で北側の石積みが開いているのが見つかったそうです。

そこで高さ1.1mの鉄筋コンクリート構造物で足元を固める補強工事を実施。本体工事の掘削を再開してまもなく、対策を講じていなかった南側の擁壁が崩壊しました。

危ない擁壁

崩れた家は1968年に建設されており、それよりも前に擁壁が作られたとみられているので、その部分の影響が大きいと思います。なぜなら住民の証言「家の下の方から水が出ている」にあったように、水はけの悪さが影響していると考えられるからです。

水はけが悪くなると、土が水を含んで重くなり、その水がせき止められて擁壁に負荷がかかります。それが原因で擁壁が崩れるケースが沢山あります。

上の写真からも確認できますが、崩れた擁壁の奥には、上町台地のあった岩盤のような硬い地盤が見られますが、その上の盛り土した部分が流れ出しているように見えます。

このような岩盤は透水性が低く、逆に盛り土は水を多く含むため、その間で水が溜まり、その水圧で擁壁を押したことも考えられます。

これを防ぐため宅造法では、擁壁には「水抜き穴」を設けることが義務づけられています。しかし、古い擁壁では、水抜き穴のない擁壁があり、また水抜き穴があったとしても土砂などで詰まっていて機能していないものあり、これらは危険な擁壁なので注意が必要です。

一方で、空石積み擁壁は水抜き穴が不要で、石と石との間から排水する仕組みがあるため、水が直接の原因ではないという見方もあります。

そうなると、そもそも弱い擁壁が、擁壁下で行われていた工事に伴う振動によって崩壊したことも考えられます。近隣住民はその振動を気にしていたとの報道もありました。

また、以前の工事で擁壁下の地盤を掘削して、柱状改良を一定間隔で施工していることも判明しています。

いずれにせよ、弱い空石積み擁壁、水、盛り土、工事の振動のそれぞれが複合的に影響して崩壊したケースになります。

マンションの崩壊はなぜ起きた?

もともと、米国は日本より30年早く1920〜30年代に急速に道路や橋の整備が進み、それに合わせてコンクリートマンションなどの建設も行われてきました。

しかし、十分な維持管理費が投入されなかった結果、耐用年数の目安とされる50年が経過した80年代には道路や橋の老朽化によって事故が相次ぐようになり「荒廃するアメリカ」といわれ、社会問題になっています。

この建物は1981年に造られたものとのことで、構造上の完全性を確認するために必要な40年目の点検を受けている最中でした。建物の屋上も修理されており、街の役人が進行状況を確認していたという。

地震などの災害以外で、建物が倒壊するケースは少なく(中国以外)、原因は調査中ですが、可能性としては、地盤沈下やコンクリートの劣化が挙げられています。

海沿いのコンドミニアム
https://www.afpbb.com/articles/-/3353622

フロリダ国際大学のシモン・ウドウィンスキ教授らの研究によると、建物は1993年から1999年まで年間で2ミリほど地盤沈下していたとの発表をしていますが、後に今回の崩壊との関連性を否定しています。

また沿岸部であるため、内部の鉄筋が錆びて膨張し、それがさらにコンクリートの剥離を進める悪循環の現象を指摘しています。

このような崩壊のケースは、3割程度が設計ミスなどによる人災とも言われており、過去にも設計の失敗で倒壊した建物が多くあります。

例えば、アメリカでは工期の短縮するためにプレキャストコンクリート工法による集合住宅の建築も数多く、接合部の設計ミスで、建築後に崩壊するという惨事が過去ありました。

倒壊部分
(c)CHANDAN KHANNA / AFP

写真からの想像ですが、直行方向への梁部材が柱端部から落ちており確認できないので、プレキャスト接合部での劣化(鉄筋の錆びなど)から、重みに耐えられず層崩壊(パンケーキクラッシュ)へとつながった可能性もあります。

また過去の事例でも、接合部の鉄筋とコンクリートの付着が弱く、上階の崩れた重みなどに耐えられずに接合部から部材が引き抜ける現象が多くみられています。

建物が崩壊する様子を捉えた付近の監視カメラの映像を見ると、最初に建物の中央部分が崩れ落ち、続いて残された東側が崩壊しており、いずれの箇所も崩れ始めてから一気に崩落しているのが特徴なので、重みに耐えられず層崩壊になったことが確認できます。

CCTV footage shows collapse of Champlain Towers building in Miami

今後の綿密な調査によって、倒壊が起こった原因が明確になるはずです。

層崩壊ではなく進行性破壊

崩落の原因は依然として特定されていませんが、一部の専門家は建物下層が最初に崩れた進行性破壊ではないかとの意見も出ています。

地下駐車場の柱や梁(はり)、壁に大小様々なひび割れやコンクリートの剥離があり、劣化が進行していたとのこと。コンクリートの劣化の大半は直ちに補修を要するとの指摘があったそうです。

2001年の同時多発テロで崩壊した米国の世界貿易センター(WTC)の場合は、最初に上層階が壊れましたが、その逆で下層の構造部材が壊れて、そのダメージが崩壊現象へ繋がったのではないか。

いずれにせよリタンダンシー(構造冗長性)による余力が少ない建物であったことは確かなよう。

7月4日夜に行方不明者の捜索は続けられる模様ですが、熱帯低気圧の接近で残存部の崩壊の危険性もあるため、爆破処理されました。

爆破解体処理の様子
米フロリダ州サーフサイドで、一部が崩落した集合住宅の爆破解体処理の様子(2021年7月4日撮影)。(c)CHANDAN KHANNA / AFP

今後も原因究明が行われるようですが、続報を待ち、進展がありましたらお伝え致します。

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