旧耐震マンションを買うリスクを考える(パート4)。

旧耐震マンション

前回のブログでは「阪神淡路大震災」での分譲マンションの地震被害を確認し、旧耐震マンションのリスクについて考えました。

今回は「2016年熊本地震」や「2011年東日本大震災」の旧耐震マンションの被害について確認します。

旧耐震マンションを買うリスクを考える(パート4)。

2016年熊本地震

熊本県内の分譲マンションは754棟(2017年3月推定)あり、その中でターゲットとなる旧耐震マンションは90棟あります。

熊本県内の分譲マンション

その中で、罹災証明で半壊以上になったマンションは約3割あり、この内訳は旧耐震マンションでは約44%が半壊以上の証明を受ける結果となっています。

罹災証明で半壊以上になったマンション
図:熊本市「分譲マンション実態調査報告書」より

以上から、旧耐震マンション90棟の内、4割強が、新耐震マンション664棟の内、3割弱が住まい続けるのが難しい状況であることが分かります。

これらは、前回のブログで確認した阪神淡路大震災と比べても高い結果となっています。

では、実際はどのような被害があったのか見てみましょう。

RC造6F共同住宅(竣工年:1971年)の建物ですが、一階が店舗になっており、その部分が層崩壊し、上部についても梁の曲げ・せん断ひび割れあり非常に危険な状態です。

RC造6F共同住宅(竣工年:1971年)
写真:日本建築学会北九州支部「2016年熊本地震被害調査速報」

このような1階が店舗や駐車場の場合は、壁量が少なく、このような崩壊に繋がるケースが非常に多いです。

下の写真はRC造7F共同住宅(竣工年:1974年)の旧耐震の建物ですが、1階がピロティかつL字型不整形建物になっており、避けるべき建物の代表例になります。

RC造7F共同住宅(竣工年:1974年)
写真:日本建築学会北九州支部「2016年熊本地震被害調査速報」

この白い建物は、RC造9F集合住宅でおそらく新耐震と思われます。特徴的なのは、周辺が地盤沈下してしまい、建物が傾いていることです。

RC造9F集合住宅
写真:日本建築学会北九州支部「2016年熊本地震被害調査速報」

また、非構造壁のせん断破壊によりドアや開口部が開くことができなくなり、継続使用が困難となっています。やはり建物が高くなることの影響が出ていると言えます。

非構造壁のせん断破壊
写真:日本建築学会北九州支部「2016年熊本地震被害調査速報」

このような新耐震でも、主要構造以外の部分の損傷や地盤沈下などにより住まい続けることができないこともあります。

2011年東日本大震災

高層住宅管理業協会(管理協)は2011年9月21日、同協会会員会社が受託する東北・関東の1都6県約46,000棟の東日本大震災でのマンション被災状況をまとめ発表しています。

表:高層住宅管理業協会「東日本大震災の被害状況について」より

上から~1971年(旧旧耐震)、1972年~1981年(旧耐震)、1982年~(新耐震)の調査対象となっており、基準となる「中破」の比率も阪神淡路大震災と比べてもかなり小さくなっています。

東京大学地震研究所の古村孝志教授、筑波大学の境有紀教授などが発表によると、東日本大震災で発生した地震動は、建物に最悪の被害をもたらす周期1~2秒の「キラーパルス」が、阪神大震災の2~5割にとどまったからと説明しています。

そのため、「マグニチュード9、震度7」の巨大な地震であった割には、全壊した建物は少なかったです。

ただし、これらの被害は「建築学会の判定基準」に基づいたものであり、「罹災証明書の認定基準」では、全壊100棟となっています。

これは建築学会の判定基準では「小破や軽微」であっても、マンション居住者の生活実感から見ると「居住のための基本的機能を喪失した状態」であれば、全壊判定となるからです。

また、高層住宅管理業協会の被災状況報告書では建物以外の被害についての記載があります。

(1)建物本体または住戸が被災し一時的に使用不能になったものは11棟。

(2)集会所、立体駐車場、自走式駐車場等建屋が傾いたり破損したりして、一時的に使用不能となったものは27棟。

(3)タワー式駐車場や機械式駐車場等の機が損壊して、使用不能になったものは87棟。

(4)マンション敷地内のライフラインが地盤沈下等の原因で損壊し、復旧等の為の工事を要したものは797棟。

(5)受水槽・高置水槽の被害は33棟に“発生”。そのうち、24棟で水槽本体の破損または傾きがあり、補修で対処できたのは19棟、システムを変更したものは5棟。復旧には1か月以上要したケースもある。(仙台市周辺106棟のみのサンプル調査)

(6)エレベーターは、設置していた102棟全てで停止。復旧は当日復旧が3件、2日~3日が大半で、1棟はロープ交換のため1週間かかった。(仙台市周辺106棟のみのサンプル調査)

など、生活を継続する上でのマンション特有の難しさも指摘されています。

次回のブログでは、マンションが被災した後、どのように復旧して生活を取り戻していくのかを確認しましょう。

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