水害(洪水・津波・高潮など)から身を守るために必要となる知識

水害ハザードマップ

洪水・津波・高波などにより家屋浸水などの被害は広範囲に及びます。特に都市近郊の河川が決壊や氾濫を起こせば被害はさらに増えます。

記憶に新しい2015年の鬼怒川の水害では茨城県常総市で2人が死亡し、4千人以上が市街地などに取り残されて救助されました。

高潮や河川氾濫では排水に数週間かかることもあり、自宅に一定期間とどまることを想定した備えが必要な場合もあります。

これらを踏まえ洪水・津波・高潮などの浸水被害に備える知識を確認しましょう。

水害(洪水・津波・高潮など)から身を守るために必要となる知識

浸水は想像以上の速さで広がります。過去の浸水データやシミュレーション結果から、水かさは1分間で約3センチ増えるとされています。

河川の氾濫などの浸水被害では、浸水が思っていた以上に早く広がり、多くの住民は身動きがとれなくなります。

浸水被害に備えるためには、まず水の力の特性を知っておくことが備えの第一歩になります。

水の力を知っておく

水の力は水の深さと流れの速さで決まりますが、例えばプールの中で歩くと前に進みづらいのは水圧があるからです。

浸水して水位が高くなると歩くことが難しくなり、子どもや高齢者の場合は水深20センチ程度までとされています。

また水の流れが速い場合は、水深が10センチでも手すりなどにつかまらないと歩けなくなります。

歩行やドアが開かなくなる水深
朝日新聞デジタル:「台風から身を守る」より参照

自宅で避難が遅れた場合、水圧がかかる扉は押し開けづらくなり、幅80センチの一般的なドアにかかる水圧は、水深が30センチで36キロ、50センチでは100キロにもなります。

約800人を対象にした実験では、30センチになると力の弱い子供や女性、高齢者など、成人でも40センチで開けられなくなります。

車での避難の注意点

東日本大震災では、津波から逃れるために車で避難する方が大勢いました。車で逃げることは大きなリスクを伴います。

豪雨で視界が悪い中、運転席から水深を測るのは難しいため、進むうちに深みにはまることがあります。

日本自動車連盟(JAF)が、セダンと車高が高いSUVで冠水した道路を走る実験をしたところ、水深30センチではどちらも走れたが、60センチではセダンは走れず、SUVも速度を上げると走れなくなりました。

一般車は、水深が30センチを超えてくるとマフラーから水が入ってエンジンは停止します。

さらに水深が60センチ程度になると、成人男性でも水圧でドアを開けるのが難しくなります。また車が浮き、パワーウィンドウが作動せず、車の中に閉じ込められてしまいます。

クルマが水没!!水深何cmまでスライドドアは開くか?(ミニバン)【JAFユーザーテスト】

窓から脱出時に、電動のパワーウィンドーが開かない場合は引き抜いたヘッドレストの金属棒をガラスと枠の間に差し込んで押し、テコの原理で割る方法もあります。

朝日新聞デジタル:「台風から身を守る」より参照

地下、アンダーパスには要注意

都市は、路面の多くが舗装されて雨水が地中に浸透しにくく、豪雨で排水が追いつかずに浸水が起きやすい場所です。

地下街や地下鉄の駅ではどこから雨水が流れ込んでくるか予測できません。

特に危険な場所は地下です。1999年の福岡水害では川が氾濫してJR博多駅周辺が浸水。ビルの地下に取り残された女性が死亡しています。

地上や上階の水深が30センチになると、流れ落ちる雨水で成人男性でも階段を上ることが困難になります。

万一、地下に取り残された時は中身を空にしたペットボトルなどにつかまり、顔が沈まないように救助を待つことです。天井が高い部屋は水没までの時間が長くなり救助される可能性が高くなります。

また、全国に約3500カ所あるアンダーパス(立体交差で掘り下げている道路)も注意が必要です。冠水後に自動車で進入して動かなくなり、乗っていた人が死亡する事故が相次いでいます。

内水氾濫の前兆

さらに、避難で注意しなければならないのは、濁流で足元が見えず、ふたが開いたマンホールや側溝に足を取られる可能性もあります。

避難のタイムリミットを知る

自宅や職場周辺のリスクを知り、安全な場所まで何分でたどり着けるか、タイムリミットを知ることも大切です。

洪水時などの浸水予測エリアをハザードマップで確認し、予測される状況を洗い出し、あらかじめ取る行動を決めておくことで、早めの避難などにつながります。

そして台風の接近など大雨の恐れが強まったら気象情報を確認します。1時間後までの詳細な予想が見られる気象庁の「高解像度降水ナウキャスト」や、川の水位や雨量がわかる国土交通省のサイト「川の防災情報」が役立ちます。

観測所で定められている「氾濫危険水位」などを参考に、あらかじめ「危険の目安」を決めておき、その目安を超えたら、避難行動に移ります。

ただ、災害時は想定外のことも起きます。避難を焦ることで、かえって危険に陥る状況もあるため、自宅の2階や近所の高い建物にとどまるなど、状況に合わせた判断が必要になります。

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