住宅が浸水した場合の修繕には、火災保険の「水災補償」を利用できます。
水災補償の保険金は一般に、「床上浸水」「地盤面より45cmを超える浸水」「損害割合が30%以上」のいずれかの条件を満たした場合に支払われます。つまり、床下浸水では基本的に保険金が支払われません。
このように保険金が受け取れないことも考えて、水害による住まいの復旧について確認しましょう。
浸水した家屋の片付けと掃除の手順
床下に水や泥が入り込んでいないかをまず確認します。
床下浸水や床の上はきれいにしても、そのまま床下に泥や水が残っていた場合、それが原因でニオイやカビの発生につながります。
床下には断熱材がある場合があり、綿状のグラスウールなどは水を吸収しやすく乾きません。放置するとカビが生えるので撤去する必要があります。
同じく壁も内側に断熱材が入っており、ほっておくとカビが生え健康被害につながります。
表面では濡れていなくても、まずは壁を撤去して、風通しを良くすることが大切です。
床下の泥の撤去は、泥出し⇒洗浄⇒乾燥⇒消毒の手順です。
汚れが残っていたり、水分が残っていると消毒しても効果があがりません。高圧洗浄機や水中ポンプなので丁寧に洗浄しましょう。
ただし、木部を高圧洗浄機で洗うと木の表面が削られてしまうので使わないで下さい。
床下の乾燥には扇風機やダクトファンなどを使い、最低でも一か月は掛かります。
布基礎の住宅では、床下浸水すると表土にすぐカビが生え始めます。自治体が屋外消毒用に配布する消石灰を床下にまくケースがありますが、消石灰の強アルカリ成分は細菌を殺せても、カビは殺せません。
24時間運転の送風ファンで乾燥させることがまず第一です。
消毒には、「逆性石けん」のスプレー噴霧、「次亜塩素酸ナトリウム(ハイター)」は雑巾に染み込ませて拭きます。
消毒で注意を要するのが透湿防水シートです。消毒薬に界面活性成分が含まれていると、シートの防水性能が低下する恐れがあります。シートは水で洗い流すだけでよいです。
こららの乾燥が終わってから、断熱材を新たに施工し、石膏ボートの取り替え、仕上げとなります。
前回のブログで書いたように、建て替え費用より、リフォーム費用が高い金額になるのかというと、床下の泥の除去から、断熱材などの除去、消毒、取り替えという風にリフォームが大掛かりな工事になってしまうからです。
水害リフォームで見落としがち
浸水住宅では、建て主やボランティアが応急処置を行い、その後で建築会社が修繕工事に入るパターンが多いです。
その際、修繕での再利用を検討していた部材が廃棄されていたり、建て主が苦労して清掃した部材が修繕の都合で壊されたりといった、応急処置と修繕工事のつながりの悪さが目立ちます。
どこまでしっかり清掃するのか予め想定して、徒労に終わらないようにしましょう。また、次の項目は、修繕工事会社でも見落としがちな部分です。注意しましょう。
木材の防蟻処理
まずは、木材の防蟻処理が見落としがちです。白蟻は湿気を好み、湿った土台は格好のすみかになります。そのためしっかりとした乾燥を優先しなければなりません。
さらに浸水、洗浄、消毒により薬剤の効果が低下するため、木部の再処理が必要です。たとえ保証期限内であっても再処理をして下さい。
高気密高断熱や特殊工法の住宅
高気密高断熱住宅の場合は、修繕工事業者によっては、断熱・気密施工のノウハウがない場合もあります。また、特殊なディテールや仕様となっている場合、図面上の確認ができない(浸水による喪失)ことや現場では仕様が判断できないこともあり得ます。
ノウハウのない業者での施工を依頼した場合、せっかくの高気密高断熱住宅の意味がなくなります。
また、断熱材の撤去に手間がかかる型式認定工法の場合、ハウスメーカーに代わって修繕を頼まれた建築会社は、工法に関する資料やメーカーのオリジナル建材が手に入らず、施工に苦慮します。
防火・準防火地域の住宅
火災延焼の被害を最少限に抑えるため、その地域の土地利用や建物の密集度などを考慮して、防火地域や準防火地域が設けられています。
この地域に指定されたところでは、周囲で発生した火事の延焼を防ぐために屋根、外壁、窓など外部に面した外装を、燃えにくい材料で仕上げるよう、法律で定めています。
このような防火地域と準防火地域にある住宅は、耐火性能の高い建築資材を使用しなければいけません。このことを知らずに修繕してしまうケースが多発しています。