日本には約2万もの川が流れ、低い土地に街が広がり、そのような浸水リスクがある地域に住む人は、4人に1人にあたる3000万人以上とも言われています。
自宅が水害に遭ったらどんな状況になり、何から手を付けて、どんな作業が必要なのかご存じでしょうか。
被災後の状況を知ることで、本当に住み続けるのか、建て替えるべきなのかの判断材料にして下さい。
浸水被害に遭う。住み続けるべきか?建て替えるべきか?
実は、自治体が指定する「居住誘導区域」に「浸水想定区域」が含まれている自治体が全国で242都市あります。
国は原則として浸水想定区域を含まないよう求めていますが、山あいの土地が多い日本では、川沿いの平地に人口を集約したほうが、開発やインフラの整備がしやすいことが大きな理由です。
一方で、川沿いの平地に多くの人が生活し、浸水のリスクにさらされながらも生活せざるをえないのが東京・江東5区です。
この「浸水想定区域」に250万人ほどが住んでいます。
このような住まいの現状があるからこそ、浸水後の復旧について知っておきましょう。
片付け前に被害状況の写真を撮る
まず始めにしなければならないのが、被害状況の写真を撮ることです。
被害状況の写真は、今後の罹災証明書の発行や保険の請求で必要となります。また、半壊や全壊などの被害認定を行う際に浸水深さが分かるように最低限、以下の写真は撮るようにしましょう。
・浸水した深さが分かるような家の外観(四方向から)と内部の写真
人を立たせて、浸水の高さを指さしてもらえれば分かりやすいです。できるだけ引いた状態で全体が写るように撮ってください。
・被災の状況が分かるような各部屋の写真(システムキッチン、洗面台、濡れた家電)
・屋外にある自動車、農機具、物置の写真
各保険会社に連絡する
保険証券がなくても大丈夫です。各ホームページから連絡先を調べて電話しましょう。このような非常時の場合は大抵ホームページの目立つところに専用の連絡先が載っています。
特に、火災保険の水災特約に加入しているか不明な場合は、真っ先に確認しましょう。水災特約に加入している場合、後日保険会社の担当者が現地の確認に来てくれます。
担当者は被害状況と浸水高さを測定し、保険会社独自の試算で保証金額を計算します。
災害復旧時は疲労やストレスから正常な判断ができない状態であり、保険会社の言われるがままの補償金額でサインするケースが多々あります。
次に説明する罹災証明書で「全壊判定」であっても、保証金額の上限の支払いをしないケースもあります。このような場合は、その判断の根拠の説明を受けるべきです。慎重に判断してください。
家財保険
保険証券の連絡先に電話すると、保険会社の担当者が現地の確認に来てくれます。その際に提出書類を受け取ります。
浸水被害のあった家具家電の金額をリストの一覧に記入し、後日それを保険会社に提出します。
罹災証明書の発行
罹災(りさい)証明書の詳しい説明は以下をご覧ください。
罹災証明書の取得は、被害状況の認定のために各市町村の職員が現場確認をおこなうのが通常の流れですが、大規模な災害の場合は迅速な対応をするために現場確認が省略される場合があります。その場合は被害状況の写真が必須ですので、準備しておきましょう。
片付け・掃除する時の服装
片付け・掃除をする際には、ケガをしないように肌の露出を避ける服装にして下さい。水害の後は不衛生のため、少しの傷でも「破傷風」に感染する危険性があります。
家の中の物を処分する
汚水に浸かった家具家電はほとんど使用できませんので処分します。家の片付けは大変な重労働です。身内や友人だけでは片付けが不可能な場合があると思いますので、その場合は市町村のホームページを確認、もしくは避難所でボランティアの依頼をしましょう。
水を含んだタンスなどの家財や衣類は想像以上に重くなっています。できるかぎりボランティアの手助けを借りましょう。また、震災ゴミはトラックを持っているボランティアの方が引き受けてくれることもあります。庭等に一カ所にまとめておきましょう。
これらの作業と同時進行で、罹災証明書の発行や各保険会社(車の車両保険、火災保険、家財保険)とのやりとり、仮住まい探しや仮設住宅の申し込みなどを進める必要があります。
被災者が受けることのできる支援
このような時だからこそ、様々な被災者支援がありますので、市町村のホームページや避難所にて最新の情報をチェックして下さい。
・住宅の応急修理制度(仮設住宅を利用しない場合の修繕費用支援)
・被災者生活再建支援金(家を建て替え等する場合の支給)
・義援金の配分や都道府県・市町村の見舞金制度
・住宅ローン支払いの猶予や減免措置
・仮設住宅や借り上げ住宅など、当面の住まいの提供
・被災した住宅の取り壊し(公費解体)
・床下や屋内の簡易消毒
・支援物資の配布 etc..
ここからやっと今後の住まいのことを考えることになります。
大規模水害の場合、ハウスメーカーにリフォームの見積もりをお願いしても、なかなか見積は出てこないです(一か月はかかります)。かといって住み続けるのであれば、カビだらけになる前にある程度、床と壁を剥がし、断熱材を取るなどの作業もしなければなりません。
およそですが、2階の床上まで浸水した場合はリフォーム費用が莫大になり、建て替え方が安くなるので、リフォーム以外の選択肢を考えた方が良いです。また、公費解体できるのであれば、その方が断然安くなるでしょう。
(追加)国の支援金、自治体の加算金、義援金など
浸水した住宅の建て主には、国の災害救助法と被災者生活再建支援法に基づく支援金のほか、自治体の加算金、義援金などが支給されます。
それぞれの金額は、浸水深や損傷率などで判定する被害認定で大きく変わってきます。
床上1.8m以上の浸水は最も重い「全壊」に該当し、修繕して住み続ける場合の国からの支援金は計259万5000円、床上1m未満は「半壊」で59万5000円が支給されます。
ただし、損傷率が10%未満の床下浸水では、国からの支援は一切ありません。ただし、自治体からの義援金や災害見舞金は、床下浸水にも配分される場合があります。
次回は、住み続けるもしくは、リフォームするにあたり、どのような作業が必要になるのかを確認しましょう。