前回のブログでは、過去の浸水被害で生じた課題について説明しました。
このような浸水被害は毎年のように起こり、むしろ水害の頻度は地震より多いです。
地震被害の注目度により耐震性は向上したものの、耐水害性は低下しているのではないかと思われる新築も多く見られます。
そこで、家を建てる前に浸水対策として何ができるかを考えましょう。
家を建てる前の浸水対策は何ができる
家を建てる前の浸水対策として、国土交通省が作成した「家庭で役立つ防災」で紹介されている方法などを表にまとめてみました。
高床式にする
| ピロティ構造にする |
鉄筋コンクリート造の基礎を高くする | |
地盤を高くする | 敷地全体に盛り土を行い、周辺よりも家の地盤を高くする |
必要に応じて沈下または崩壊が生じないよう締め固め、鉄筋コンクリートの擁壁を設ける | |
防水壁で家を囲む | 住宅の周囲を防水性のある塀で囲んで敷地外からの浸水を防ぐ |
塀の開口部に堤防の役割を果たす開閉可能で防水性のある門扉(陸こうに相当)を設けて、住居への浸水防止を図る | |
外壁を耐水化する | 建物自体を防水性のある建材などで囲む |
地下室の玄関の出入り口などに、豪雨時や洪水時に水の侵入を防ぐ止水板を取り付ける | |
基礎の浮きを防ぐ | 基礎の浮きを防ぐ浸水による浮力で建物が浮き上がらないよう基礎との接合を強化する |
設備機器を守る | コンセントを高い位置に設置する |
1階と2階のブレーカーを分けて2階の停電を防ぐ | |
エアコンの室外機や給湯器などを想定される水位よりも上に設置する |
浮き上がり対策としては何ができる
木造住宅が浮き上がる被害について、浸水リスクの高い場所では基礎断熱を採用するべきでないという意見や、快適な温熱環境や省エネ効果をもたらす基礎断熱は必要という意見もあります。
また、基礎断熱は床断熱よりも室内に水が入りにくくなる点を、建物と家財の損害を減らす意味で重要視する意見もあります。
浮き上がりは建物重量を浮力が上回ることで起きるため、基本は建物重量を重くすることが有効になるので、以下のような対策が挙げられます。
- 1階を鉄筋コンクリート造などのピロティ構造とする(混構造)
- 地下室を設ける(建物の移動を拘束できる)
- 基礎高を大きくする、3階建てにする、基礎フーチングの出寸法を大きくするなど建物重量を増す
- 上記対策+接合金物の補強
また、水深3mの洪水に耐える住宅として「耐水害住宅」の実用化も進んでいます。
特徴はRC造の躯体(くたい)に取り付けた開口部に止水対策を施して水の侵入を防いでいることです。また2019年の台風19号では、電気設備が浸水して避難所生活を余儀なくされた被災者が多数発生しているため、2階で生活を継続できるように、キッチンや浴室、分電盤、冷暖房設備といった電気を使う主要な設備を全て2階に配置する工夫も取り入れています。
浸水リスク認識から始めよう
家屋が水没することによって、木造家屋などが浮き上がり流失する危険性は、水位が深くなるほど高くなります。
国土交通省が公表した「重ねるハザードマップ」の一つに、河川が氾濫した際に浸水が想定される区域と水深を示した「洪水浸水想定区域(計画規模)」があります。
具体的な使い方は以下のブログをご覧ください。
全国地図から浸水が想定される区域と水深を確認することができます。
水害リスクのあるエリア内で建物の新築、改築、増築を行う場合は、そのリスクを考慮した対応が基本となります。

特に、家屋水没により大きな被害が想定される浸水深さ3m以上のエリアに新たに居住する予定の方は、「家屋水没」に対して、対策を講じる必要があるため専門家にご相談して下さい。
わかりやすいマニュアルが必要
浸水被害では、地震被害に比べて被災者自身が応急対応するべきことが多くあります。処置が遅れると家屋の状態はさらに悪くなり、カビや腐朽により、結果的に修理費用が高くつくこともあり得ます。
国交省や業界団体の作った資料がありますが、被災者から見て手順の流れが分かりやすいものとはなっていません。
一方、米国では、図で分かり易く示した絵本型のマニュアルがあります。

こうしたマニュアルがあれば、被災者も迷わず「応急処置→乾燥期間→修繕工事」と進んでいけるはずです。
地震対策ばかり注目されますが、水害の頻度は地震より多いです。
床上浸水しても、メンテナンス性がよく、部材が容易に交換できて、かつそれも最小限で済むような耐水害性に優れた住宅の開発が望まれます。