木造住宅が浸水した場合の課題と浸水対策を確認しよう。記録的な大雨に備えよう。

浸水被害

2015年の関東・東北豪雨では鬼怒川が氾濫し、住宅の全半壊7171棟、床上・床下浸水は約1万6千棟、2017年の九州北部豪雨では、住宅被害は全半壊1432棟、床上・床下浸水1661棟に上りました。

2018年の西日本豪雨では、約1万8千棟の住宅が全半壊、床上・床下浸水は約2万8千棟に上り多数の世帯が応急仮設住宅での生活を強いられています。

西日本豪雨で浸水した住宅地
引用:週刊朝日「西日本豪雨で浸水した住宅地」より

さらに2019年10月の台風19号では、記録的豪雨が上流域を中心に降ったため、東京都と神奈川県の境を流れる多摩川では、住宅地への越水被害がありました。また床上・床下浸水は7万棟に上りました。

このような豪雨から命を守るには、自宅や職場がある地域のハザードマップで避難場所や安全な経路をあらかじめ確認し、早めに避難することが重要です。

それでは近年の記録的な大雨で住宅が浸水した場合の被害と課題を確認しましょう。

住宅が浸水した場合の課題と浸水対策を確認しよう。記録的な大雨に備えよう。

壁の内側のカビ

住宅の浸水被害が生じた場合に、一番大変なのが侵入した水や泥の除去です。

泥出しは早くやらないと、感染症などの衛生上の問題だけでなく、臭いの原因になり、湿気により部材がカビてしまいます。

特に木造住宅の場合は壁の室内側に使われている石膏ボードや内部の断熱材は濡れて乾燥しないため、そのまま放置すると、カビの発生や断熱材の性能低下、筋交いや柱の腐朽といった耐震性の問題が生じます。

水分含んだ断熱材の早期除去をカビの恐れ、台風での浸水住宅
引用:共同通信「水分含んだ断熱材の早期除去を カビの恐れ、台風での浸水住宅」より

床上浸水が10cm程度でも、断熱材が上の方まで吸水しているケースがあります。このような場合は、壁の一部を壊さないと断熱材の状態は確認できません。しかし不必要に壊しても修理代が掛かってしまいます。

泥出し

進まぬ復旧、泥かき大変
引用:朝日新聞デジタル「進まぬ復旧、泥かき大変」より

泥出は、住宅の構造によっては難しくなります。古い住宅では、床板をバール等で比較的簡単に剥がすことができますが、最近のフローリング床の家では、点検口が設けていないため、一部を切断して作業用の口を作る必要があります。

その時に、フローリングを支える床下の根太や大引きを切ってはいけません。ボランティアで十分な床や基礎の知識を持った者は限られます。

広域水害では、業者に頼むことも難しく、応急処置から修理まで全てお任せにした場合、その費用は膨大なものになります。

乾燥期間

泥出しや湿った部材を撤去した後、カビや腐朽の対策には、家屋の乾燥、特に床下の乾燥は重要です。

浸水した部材の乾燥には、木材もコンクリートも最低2カ月は掛かると言われています。

特に断熱・気密性能を高めた住宅は乾きにくいです。

しかし、早く自宅に戻りたいために急ぎリフォームを行ったが、結局リフォームを急いで新品の建材にカビが発生する被害が複数確認されています。

工務店の中には、木材の水分率を計器でチェックしながら進めているところもあれば、直ぐリフォームして構わないと言ったところもあります。その判断もまたバラバラであり、被災者はどう判断すればよいか分からないです。

特殊工法の木造住宅

特に断熱材の撤去に手間がかかるのがパネル工法(型式認定工法)の住宅です。

これらの住宅は、ハウスメーカーのオリジナル工法であるために修繕の見積もり額が高くなり、ハウスメーカーに代わって修繕を頼まれた地元工務店では、工法に関する資料やメーカーのオリジナル建材が手に入らず、施工に苦慮します。

浮き上がって船のように流れる住宅

木造住宅に働く浮力

過去の浸水で木造住宅が浮く被害が複数確認されています。

浮き上がって船のように流れる住宅
引用:日経ホームビルダー2018年9月号より

この住宅では、柱が基礎や土台から外れる被害が確認されています。

浸水深が3mを超えると室内に作用する浮力が大きくなり、強度の弱い接合部が外れた可能性があります。

木造家屋に働く浮力
引用:滋賀県「耐水化建築ガイドライン」より

木造家屋では家屋が浸水すると、小屋裏の空気溜まり・1階床下の空気溜まり・2~3階床下の空気溜まり・壁内の空間・木材の容積で浮力が発生し、これが接合金物の耐力もしくは家屋重量を上回ると家屋全体が浮き上がります。

最近の高気密住宅(基礎断熱)は要注意

また、木造住宅が基礎ごと浮く被害が複数確認されています。これらの住宅に共通するのは高気密で基礎断熱を採用していたことです。

2019年の台風19号で深刻な浸水災害に見舞われた長野市内では、木造高気密住宅が200m流されたケースがありました。

千曲川沿いの堤防が決壊した地区で見つかった流失した住宅と浮いた住宅の位置を示す
引用:千曲川沿いの堤防が決壊した地区で見つかった流失した住宅と浮いた住宅の位置を示す(資料:日経ホームビルダー)

室内に空気がたまった状態で建物の外周部が浸水すると、浸水深に比例する形で建物に浮力が生じます。

気密性能の高い住宅は、室内に水が入る速度が遅くなるので、空気が溜まって浮力を生じやすくなります。

観測史上最大雨量に相当する毎時300ミリの雨を再現して行われた「耐水害住宅」の公開実験様子
観測史上最大雨量に相当する毎時300ミリの雨を再現して行われた「耐水害住宅」の公開実験様子

このように室内に水を入れない木造住宅が、実際にどの程度の浸水深で浮くかは、防災科学技術研究所が2019年10月に非公開で実施した実験が参考になります。

防災科学技術研究所の研究員によると、浮き始めた浸水深は地盤面から1.8m弱の高さでした。

一方で室内に水が入る木造住宅では、室内にたまる空気の体積が小さくなるので浮力は弱まります。

滋賀県が作成した「耐水化建築ガイドライン」には、3.5mの高さまで浸水しても浮かないという計算結果が示されています。

次回は浸水対策として何ができるかを考えます。ぜひご覧ください。

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