トヨタのウーブンシティが着工から1年

その他

ウーブンシティはトヨタ自動車東日本の東富士工場(静岡県裾野市)の跡地に建設する実証都市です。2024年〜2025年には実際に人が住みだす予定です。

ウーブンシティ
引用:トヨタ公式HP

街に自動運転車用、人と小型モビリティー用、歩行者用の3種類と、地下には自動運転車やロボットなどによる物流用の道が設置される予定になっています。

ここで、様々なサービスの実用化の検証などが行われる予定で、そのサービスはモビリティー、エネルギー、IoT(モノのインターネット)など12領域が対象となっています。

スマートシティの背景(都市OSの開発)

ウーブンシティも含め、デジタルを使った街のあり方を再定義するため、世界各国で様々な取り組みがされています。

例えば、スウェーデンでは、単に目的地を検索して、経路を定めてくれるだけでなく、鉄道、車、飛行機、自転車などの移動の手段を最適化し、都市生活の中でどのように組み合わせれば最小限の料金、移動時間の短縮になるのか、さらにCO2の排出量を最小限にする移動手段を提案してくれるようになっています。

このような取り組みをMaaS(マース:Mobility as a service)と言い、1つのアプリで各交通サービスの経路検索や支払いが一括でできるように、データの相互利用を図ることで実現されています。

その他にも、車の混雑状況や駐車スペースの空きなどから最適化されたルートを提案することで、交通渋滞の緩和やCO2の削減に繋げたりするスマートパーキングなども代表的な事例です。

信号、交通量、救急車、観光、インフラなどの都市を構成する情報を集め、その情報を必要な人たちに再配分することで、データがある状態での新しい街づくりを実現すること、そのために新しい都市OSを開発することが求められています。

このような都市のあり方をデータによって再構築して、都市での生活を豊かにし、さらには持続的な社会への変革を促すために、このような取り組みが行われています。

カナダトロントのスマートシティの取り組みは頓挫

グーグルの兄弟会社のサイドウォークラボによるカナダトロント湾岸エリアの再開発計画がスタートしたのは2017年、「IDEA」というコンセプトが挙げられ、キーサイドという計画(7つの視点)が発表されました。

サイドウォークラボ
サイドウォークラボ

デジタルレイヤーとフィジカルレイヤー(ビルディング、モビリティ、パブリック、インフラ)でデジタル技術を活用して、雇用創出と経済活性化、環境対策、手頃な住宅の提供、モビリティの利便性などが図られる計画でした。

しかし、2020年には世間的には、グーグルが個人情報で儲けようとしているのではないかとか言われ、個人情報保護の問題などで計画の継続が難しいとされて中止となっています。

実際、サイドウォークラボのビジネスモデルは3段階に分かれており、計画(ノウハウ提供)、不動産開発(税収アップによる利益)、運営・管理(情報システムの保守など)で収益を得るようになっており、個人のデータで儲けるというよりは、インフラが導きたす価値に対して利益を受けるようなことになっていました。

この取り組みは、世界的にも注目さていたのですが、都市によるデータの蓄積・分析・連携を行うためのプラットフォーム(都市OS)の構築の難しさ、さらにはデータによって都市をどのように支えていくか、どのような運用をすれば持続可能な社会が実現できるかという難題に挑戦した取り組みだったので頓挫したことは非常に残念です。

また、報道では個人情報保護の側面が問いただされていましたが、実際には土地の権利の問題、それに付随する利権の問題解決の難しさがあったと思われます。特に湾岸地域は、日本でも同じく、その利権の構造を見抜く必要があり、それをまとめるノウハウがなければ、Googleといえ難しい側面があったのかもしれません。

既存の都市のあり方

地球全体で環境問題を考えていかなければならない場合、街をデジタルインフラでどうにかしようというのではなく、街全体を新しく考え直すことも必要です。一方で、もともとある古い街を壊さずに、いかに豊かな都市生活を実現していくかということも考えなければいけません。

今後、通信速度が劇的に変化し、8Kになれば、映像だと感じないリアルを認識できるようになります。そうなれば、さらにリモートワークなどにより、居住する場所を選ばない時代になるでしょう。そうなれば、人が集まり、賑やかな場所である都市と沖縄などの離島や沿岸部などで住むことを選ぶこともできますし、物理的な制約から解放された場所を選ぶ選択肢も増えるでしょう。

そういった中で、デジタルが生活や都市のあり方に及ぼす影響を考えながら、どこに住むのか、どのような仕事を選ぶのかなどの都市の変遷、街の変遷、生活の変遷を見つめていきたいと思います。

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