登山中に火山の噴火に遭遇。御嶽山(おんたけさん)の噴火。

大規模噴火

火山災害から命をまもるために大切なこと、は火山災害の脅威を「知る」ことです。

現在、日本には111の活火山があり、世界でも有数の火山国で、桜島等の複数の火山で噴火が発生しています。

2014年御嶽山の噴火を振り返り、火山災害から身を守る方法を考えましょう。

登山中に火山の噴火に遭遇。御嶽山(おんたけさん)の噴火。

2014年9月27日岐阜県と長野県の境にある御嶽山(おんたけさん)が噴火し、死者・行方不明者が63人に上る戦後最悪の火山災害となりました。

御嶽山(標高3,067m)は7合目付近まで車やロープウェーで行くことができるため、日帰り登山も可能で、初心者でも比較的登りやすく「日本百名山」の中でも人気の山でした。

この噴火は、気象庁の噴火警戒レベルで特別な対応を求めない「レベル1(平常)」で起きてしまいました。

これを受け、噴火警戒レベル「1」の「平常」という表現が「安全」という誤解を招くとして、2015年から、「平常」ではなく「活火山であることに留意」という表現に変更されています。

この噴火時の映像が公開されています。

御嶽山の噴火では死亡が確認された57人のほとんどが、噴石が直撃したことによる「損傷死」でした。

映像の中でも突然の噴火で、何をすればよいのか判断が出来ていないことが確認できます。

平成以降、国内で10人以上の死者・行方不明者が出た噴火は2つあります。

噴火年月日

火山名

犠牲者(人)

備考

2014(平成26)年9月27日

御嶽山

63
(不明を含む)

噴石等による

1991(平成3)年6月3日

雲仙岳

43
(不明を含む)

火砕流による
「平成3年(1991年)雲仙岳噴火」

御嶽山噴火で生還した女性が語る

火山灰が積もった山頂付近で、周囲の登山客が次々と息絶える中、生還した女性が取材に応じています。

周囲の登山客が次々と息絶える中、生還した女性
写真:産経ニュース「生還女性が初めて語る「あの時」 「焼け死ぬのか、溶けるのかな…」より

「生き残れたのは噴石が当たる、当たらないの運、どこに当たったのかの運もあると思う。でも、少しだけ準備していったことも大きい」。と言います。

産経ニュース「生還女性が初めて語る「あの時」 「焼け死ぬのか、溶けるのかな…」より引用

午前11時52分。御嶽山噴火。だが現実と受け止められなかった。「まさか、この山とは思わず、どこか他の山かなという感じで…」。においや揺れといった確たる変化もなかったため、直後は周囲の登山客と同様に噴煙を写真に収めていた。

現実を突きつけられたのは10秒ほど後。気付くと周囲は真っ暗に。「逃げる時間はなかった」。近くに身を隠せるような岩も見えたが「その場で立ち尽くすというか、動けなかった」。噴煙は、もう目前に迫っていた。

想像もできなかった御嶽山の噴火。女性は迫り来る噴煙に背を向けるしかなかった。「(噴煙は熱く)サウナに入ったような感じで『焼け死ぬのか、溶けるのかな』と思った」

無事だった登山客に下山しようと言われたが、貧血がひどく、腰にも違和感があった。「歩けない」。その場に残る決断をした。

100メートルほど離れた場所に、身を隠せそうな石造りの台座を見つけた。左腕を抱き、何度も気を失いながら、足とお尻を使い、尺取り虫のように進んだ。

途中にうずくまる登山客の男性がいた。「一緒に行きませんか」。声を掛けると、男性は時間をかけて台座近くまで来た。

長い時間を費やして移動し、台座を背にしたころには日が沈みかけていた。台座周辺には別の男性が一人いて、携帯電話で通話していた。相手は家族だろうか。「今噴火にあって、ちょっと無理かもしれないけど、俺は絶対に帰るから」。そう告げていた。

夜になるにつれ風が強くなり、標高3千メートルの過酷な環境が女性たちを襲った。女性は日が暮れる前、台座の前を歩いて通り過ぎようとした男性に頼み、ザックの中からダウンジャケットと簡易テントを出してもらい、防寒対策として体に巻きつけていた。

ふと携帯電話をみると、一緒に登っていた友人から何度も着信があった形跡があった。友人は無事だったんだ。少しだけほっとして折り返し電話を掛けた。

周りが暗くなる中、ただ寒さに耐えた。長野地方気象台によると、標高1千メートル付近にある御嶽山麓の開田高原で噴火翌朝の最低気温は6・6度。女性が一夜を過ごした標高3千メートル付近は氷点下だったことが想像される。

過酷な環境に耐えられたのは、携帯電話から聞こえた友人の励ましの声だった。「私がここで死んだら友人はきっと自責の念にかられる。だから生き抜こう」。勇気を振り絞った。

救助されたのは噴火から丸1日が経過した28日午後0時半。台座の周囲にいた2人の男性は息を引き取っていた。山にゴミを残してはいけないと、テントやダウンジャケットはザックにしまった。

生死を分けたのは何だったのだろうか。「御嶽山は初心者でも気軽に登ることができるだけに、十分な準備をしている方は少なかった。生き残れたのは運もあるが最低限の準備をしていったからだ」と言う。

女性は登山の際、日帰りでも簡易テントは必ず携行し、3千メートル級の山にはダウンジャケットも持っていった。

夜になるまで生存していながら周囲で亡くなった登山客は、ダウンジャケットや簡易テントは持っていなかったようだった。生死を分けたのは「その差」と思っている。

火山噴火ではどのような被害が起こるのか

特に危険な火山災害は、大きな噴石・火砕流・融雪型火山泥流です。これらは、事前に避難しておかなければ、避難が間に合わないからです。

大きな噴石

爆発的な噴火がおきると、火口から岩石などがふき飛ばされ、直径約20~30cm以上の大きな岩石などは、風の影響を受けないで火口から弾道を描いて飛びます。

大きな噴石は、建物の屋根をつき破るほどの破壊力を持っています。火口のまわり2~4kmぐらいまでしか飛びませんが登山者が命を落とす場合があります。

大きな噴石
写真:気象庁「主な火山災害」より

火砕流

高温の火山灰や岩のかたまり、空気や水蒸気が混じりあい、猛スピードで山の斜面を駆け下りてくる現象です。

大きな噴煙が発生したあとや、溶岩ドームがくずれるなどして発生します。火砕流は、通り過ぎるところをすべて焼きつくしてしまいます。

スピードは時速数十kmから百数十km、温度は数百°Cにもなります。巻き込まれたらひとたまりもありません。

火砕流
写真:気象庁「主な火山災害」より

融雪型火山泥流

雪がつもった火山で、噴火による熱で雪がとけて大量の水になり、まわりの土砂や岩石をまきこみながら高速で流れ落ちてくる現象です。

谷ぞいからずっと遠くまで一気に流れ落ちて、広い範囲の建物や道路を壊して、うめつくしてしまいます。

スピードは時速60kmをこえることもあり、火山から遠く離れている所にも流れてくることがあります。

写真:1926年の十勝岳噴火による融雪型火山泥
写真:1926年の十勝岳噴火による融雪型火山泥

その他にも溶岩流、火山ガス、火山灰などがあります。

突然の火山災害から命を守るためには、以下の必要な備えをしましょう。

事前に火山サイトをチェック

ルートの避難場所を確認しておく

登山計画を立てる際には、逃げ込める山小屋などを把握しておくことも、身を守るために必要です。

ヘルメットやマスクで身を守る

生還した人の証言の中には、マスクやヘルメット背負っていたザックをとっさに頭に乗せて噴石から身を守り、中にあった食器が命を守ってくれたという人もいました。

身を守るには、防塵対策が施されたマスクやゴーグル、それにヘルメットも有効です。

日帰り登山でも最低限の準備

御嶽山噴火から生還した女性は登山の際、日帰りでも簡易テントは必ず携行し、3千メートル級の山にはダウンジャケットも持っていっています。

噴火だけでなく万が一のことを考えて準備を怠らないことです。

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